編集部イチ押し! 7月の新作映画をチェック

cinema check シネマ・チェック

辛口コメントで映画を斬る、映画通の日豪プレス・シネマ隊長と編集部員たちが、レビューやあらすじと共に注目の新作を紹介!レーティング=オーストラリア政府が定めた年齢制限。G、PG、M、MA15+、R18+、X18+があり、「X18+」に向かうほど過激な内容となる。作品の評価は5つ星で採点結果を紹介。

アップグレード
Upgrade隊長が観た!

SFスリラー 公開中 満足度★★★★

自分の好きな映画のジャンルの1つは、ホラー・フィルム。中でも、『スクリーム』と『ファイナル・デスティネーション』は、既存のホラーの流れを変えた傑作と思っている。更にそれらに加えるとしたら『ソウ』になるだろう。シリーズが長々と続いているが、どんどんグロテスク方向に向かって、ここ最近はコアなファンのための映画になっているのは残念だ。しかし、同作が登場した時は、斬新なストーリー展開に、低予算をアイデアでカバーしようとする心意気みたいなものを感じて、結構楽しめた覚えがある。その『ソウ』、当時メルボルンの大学生だったマレーシア出身のジェームズ・ワンと同級生のリー・ワネルのアイデアから誕生し、世界中で大ヒット。

監督のジェームズ・ワンは、この一作で大注目を集め、『死霊館 エンフィールド事件』など監督や脚本にも携わって活躍中。俳優志向だったリー・ワネルは、第1作に出演して、更に3作目までの脚本も手掛けている。その後は自分が脚本した作品に俳優として出演していたが、15年の『インシディアス 序章』でついに映画監督デビュー。

今回紹介するのが、そのリー・ワネルの2回目の監督作品『アップグレード』。ずっとホラー・フィルムに携わってきたので、今作もホラーかと思ったら、なんと近未来の世界を描いたSFスリラー。

妻と車の事故に遭ったグレイは、強盗たちに妻を殺され、自分もその時の暴行によって四肢麻痺になってしまう。そして、テクノロジーを駆使したAIチップを体に埋め込む生体実験の提案を受け、体の機能を制御するOSの“STEM”によって再び歩けるようになる。更に、“STEM”に体の機能を任せることにより、驚異的な力を発揮することができるようになった。妻の復讐に燃えるグレイは、“STEM”と共に妻を殺した犯人を突き止めようとする。

なんとなくB級臭が漂って、しかも突っ込みどころ満載。自動制御の車や、音声で室温や明かりなどを調整できるスマート・ハウスなど、確かに近未来なんだけど、ちょっと洗練さに欠けるところがある。最大の謎は、四肢麻痺になって車いすに乗るグレイがどうやって階段を上り下りするのか? どう見てもバリアフリーではない家や、地中に降りていくような長い階段は、グレイが歩ける状態ではそこを上り下りするシーンを見せているのに、車いすに乗っていると、瞬間移動したように建物の中にいたりする。他にも、もう少しツメたら? って思うところはいっぱいあるのだが、それら全てが逆にこの映画の魅力になっている。

このようなB級臭やツメの甘さは低予算で作られているため。しかし、ここでも『ソウ』マジックは健在で、そんな細かなところまで気にすることがバカらしく思えるほど疾走感があり、見ていてワクワクする。特に、体を全て“STEM”に預けてしまうアクション・シーンでは、新感覚の映像となっている。まあ、ただカメラが固定されているだけだが、この辺りも予算を掛けずにいかに見せるかが計算されている。更に、最初の殺人が結構エグくて、このまま『ソウ』のグロテスク路線になるかと心配したけど、そこもちゃんと節度を守っていて、一安心。

主演は、線を細くしたトム・ハーディみたいな、ローガン・マーシャル=グリーン。刑事役で、昨年大好きだった『ゲット・アウト』のブッキーなお手伝いさんを演じたベティー・ガブリエル。他にもオージー俳優も出演していて、このところ、ちょっと重いテーマで暗いものが多かったオーストラリア映画だけど、今作は誰でも楽しんで見られる、お薦めの1本! 製作は、ブラムハウスで、先の『ゲット・アウト』など、低予算のホラー映画を連続ヒットさせていて、今話題のプロダクションってところもポイント。

アントマン&ワスプ
ANT-MAN AND THE WASP

アクション・アドベンチャー 7月5日公開予定 満足度★★★★

小さくなるほど強くなる、身長わずか1.5センチの頼りなさすぎるヒーロー「アントマン」と、完璧すぎるヒロイン「ワスプ」の最強コンビによる痛快アクション・ムービー。ある日、2人の前に全てをすり抜けることができる神出鬼没の謎の美女「ゴースト」が現れる。「ゴースト」はアントマン誕生の鍵を握る研究所を狙う。その秘密が敵の手にわたれば世界のサイズが自在に操られてしまう。人だけではなく車やビルを始めあらゆるもののサイズが変幻自在に変わる大騒動の中、アントマンとワスプはユニークなパワーとチームワークで、世界を脅かす秘密を守りきることができるのか。2015年にマーベル・コミックのアメリカン・コミック・ヒーロー・シリーズの実写映画化で話題をさらった『アントマン』の2作目。

モンスター・ホテル3
HOTEL TRANSYLVANIA 3: A MONSTER VACATION

アニメーション 6月28日公開予定 満足度★★★★

第1作で3億5,000万ドル、更に続編では1作目を超える3億7,3060万ドルの興行収入をたたき出した人気アニメーション「モンスター・ホテル」シリーズの第3弾。フランケンシュタインやオオカミ男、ミイラ男、透明人間など世界中のモンスターが集まるドラキュラがオーナーを務めるホテルを舞台に、ホテルに迷い込んだ人間の青年ジョナサンとドラキュラに過保護に育てられた娘メイビスの恋を描く。3作目となる本作では、一家は休暇のため「モンスター・クルーズ」へと繰り出す。ドラキュラはそこで出会ったミステリアスな女性船長エリカに魅了されるのだが……。物語はやがて、有名なモンスター・キラーであり、ドラキュラの先祖からの大敵、エイブラハム・ヴァン・ヘルシングとの戦いへと発展する。

ボーダーライン2
SICARIO: DAY OF THE SOLDADO

アクション、クライム、ドラマ
6月28日公開予定 満足度★★★★★

メキシコの麻薬カルテルとFBIの戦いをリアルに描き、カンヌ映画祭のコンペティション部門にも出品された2015年公開の話題作『ボーダーライン(原題:SICARIO)』の続編。米中央情報局(CIA)は、メキシコの麻薬カルテルがメキシコとアメリカの国境線でテロリストの売買をしているとの情報をつかむ。拡大していく麻薬戦争の戦場に赴いた米国防総省のマット・グレイヴァーは、家族をメキシコの麻薬王に殺害された過去を持つ傭兵コロンビア人のアレハンドロ・ギリックとチームを組むことになる。『メッセージ』『ブレードランナー2049』で多忙のヴィルヌーヴ監督に代わり、イタリア人監督ステファノ・ソッリマがメガホンを取り、更なる無常とスケールアップを目指した注目作だ。

ザ・ゴスペル・アコーディング・トゥ・アンドレ
The Gospel According to Andre

ドキュメンタリー 7月12日公開予定 満足度★★★

世界18カ国で展開、ハイファッションの最先端を紹介する雑誌「ヴォーグ」で編集長を務めたアンドレ・レオン・タリーの半生を描いたドキュメンタリー。ファッション・シーンには欠かせない存在として知られるタリーが、どのようにフロント・ローまで駆け上がったのかは実はあまり語られたことがない。そこで「ニューヨーク タイムズ」のドキュメンタリー映画『Page One: Inside the New York Times』を手掛けたケイト・ノバックが監督が名乗りを上げた。1970年代にタリーがアンディ・ウォーホルのスタジオであるファクトリーと築いた関係や米「WWD」で働いていた時代、そして現在“ブラック・スーパー・ヒーロー”と語られるようになるまでを、多くの著名人へのインタビューを通して描く。

★今月の気になるDVD★

モアナと伝説の海 MOANA
アニメーション 107分(2017年)

舞台は美しい青い海が広がり、緑が豊かに広がる南の島・モトゥヌイ。その島に住む16歳の少女、モアナは小さいころにおばあちゃんから「女神の“心”をマウイが盗み、闇の世界を誕生させるが、闇が全てを覆う前に選ばれし者が女神の“心”を返し、世界を救ってくれる」という伝説を聞く。

しかしモトゥヌイも闇に覆われ始めたことから、モアナは伝説ではなく、実際に起こっているのだと悟り、島の掟で出てはならないとされている島の周りを囲むサンゴ礁を越えて女神の“心”を返しに行く旅に出る――。

同作は『アナと雪の女王』『ズートピア』の大ヒットに続く、ゴールデン・グローブ賞にノミネートされ、監督は『リトル・マーメイド』『アラジン』の制作でも知られるジョン・マスカーとロン・クレメンツ。

また、主題歌である『How Far I’ll Go(エンド・ソング)』はグラミー賞・最優秀楽曲賞を受賞している。実は、日本版のエンド・ソングとしても歌手の加藤ミリヤが歌っている。力強くも軽快で、まるでモアナがそこにいるかのように感じさせてくれる同曲は、映画の中でも多用されているため、ぜひじっくりと聴いて欲しい。(編集=SK)

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