インタビュー それぞれのリタイアメント・ライフ(QLD)

インタビュー それぞれのリタイアメント・ライフ

オーストラリアですてきに年を重ねながら、リタイアメント生活を送っている2組のご夫婦それぞれに、これまでの経緯や実際にどのような毎日を過ごしているのか話を伺った。(インタビュー=堀千佐子)

斎数吉昭さん(68歳)・知代さん(54歳)ご夫妻

大好きなゴルフやボートを思い切り楽しめる理想の環境を探していた吉昭さんが、リタイアメント生活の場所としてたどり着いたのは、ゴールドコーストだった。ゴルフ好きの吉昭さんに比べ、ゴルフはしないというすてきな笑顔の知代さんの生活はとても対照的だ。

ゴルフができる理想の場所を探して

横浜で会社を経営していた吉昭さんは、日本で幾つかのゴルフ・クラブのメンバーとしてプレーをしていた大のゴルフ好き。しかし、日本でゴルフをする場合、早朝に出発して車で約1時間掛けてゴルフ場に行くのが当たり前。むしろ、1時間程度の移動であれば恵まれている状況だという。そんなある時、ゴルフ仲間と一緒に沖縄に出掛けた吉昭さん。そこは、ゴルフ・コースが目の前に広がるバギー付きコンドミニアムで、いわゆる「滞在型ゴルフ・リゾート」と呼ばれるものだった。「この先、こんな環境でゴルフができれば理想的だ」と、その時感じたという。

それ以降、余暇でゴルフを楽しめる理想的な場所が海外を含めどこかにないか、度々ゴルフ仲間と話し合い、自分でも調べてみたそうだ。そして、ゴルフ・コースに隣接しバギーでゴルフ場へ直行できる物件がゴールドコーストで売りに出されているのを見つけ、現在の自宅を約15年前に購入した。

自宅購入後は年間30日程余暇をオーストラリアで過ごしてきたが、8年前に会社のビジネスを売却することで本格的なリタイアメント生活をスタートさせた。特に綿密なプランなどはなかったそうだが、リタイアメントの日をイメージして一生懸命仕事に打ち込んできたという。

日々の生活

いつも一緒にラウンドする仲間たち
いつも一緒にラウンドする仲間たち

吉昭さんは、いつもオーストラリア人の仲間と一緒に週3回ゴルフのラウンドをしている。知代さんがゴルフをしないこともあり、夫婦でゴルフをするケースが多い日本人ゴルファーたちとは、あまりラウンドする機会がないそうだ。また、ゴルフ友達のファミリーと食事へ出掛けたり、ゴールドコースト在住の日本人と持ち寄りで家に集まるなど、楽しい時間も共有しているという。

知代さんも週3回、ホット・ヨガで汗を流して爽快な気分で帰宅する生活を送っている。自宅で日本のテレビを見ながら、気に入ったワインと共にゆっくりと晩酌をするのが、何よりもリラックスできる夫婦の至福の時間だそうだ。

現在、1年を通して日本とオーストラリアを行き来しているが、吉昭さんが実家の長男ということもあり、祭事があるお盆の時期は日本で過ごし、日本の冬の時期と知代さんの花粉症が悪化する初春の間はオーストラリアで過ごすようにしているという。今後もその時々の状況に応じて、両国を行き来するそうだ。

リタイアメント生活の良し悪し

ゴルフ仲間のファミリーとの会食会
ゴルフ仲間のファミリーとの会食会

斎数さんご夫妻が感じる、生活面におけるゴールドコーストの良いところ、悪いところの両面について話を伺った。

良さは、日本との時差が1時間と短いこと、気候が温暖であること、日本とオーストラリアを行き来すれば季節を2回楽しめること、のびのびとした環境と身近な自然があることを挙げた。

一方で、家を購入した15年前と現在を比べると、暮らしにくくなった面も多いという。金利が大幅に下がったにもかかわらず、物価は上昇を続け、電気や水道、通信費などの激しい値上がりは、生活に影響を与えている。特にデフレから抜け出せない日本と比較した時、物価の高さを感じるという。

このような状況下で、周辺のエリアに住んでいた10組程の日本人リタイアメントの方たちは、どんどん日本へ帰国していったようだ。その他にも、一般開業医(General Practitioner/GP)を通してから専門医の診察へと進む日本と異なる医療システムに不便を感じたり、ビザの関係上、必須でありながらも掛け捨てとなるプライベート医療保険の保険料の高騰も同地の生活でのマイナス部分だと指摘する。

吉昭さんは、「日本でもオーストラリアでも、生活をしていく上で、たとえ資金が豊富にあったとしても、生活(内容)の質を見極めることがとても大切」だと語ってくれた。知代さんは、リタイアメント生活がより楽しく豊かになるヒントとして、「一生懸命に英語の勉強をしておくと、頑張った分だけ友人の輪や自分の世界が広がる」と貴重なアドバイスをしてくれた。

小倉明さん(53歳)・恵美子さん(50歳)ご夫妻

小倉明さん、恵美子さんご夫妻は、誰もが憧れる「早期リタイアメント」と呼ばれる50代前半の若いご夫婦。奇麗に日焼けしたその姿から、アクティブに生活されている様子がうかがえた。

日本ブームの時代の波と共に

明さんが始めてオーストラリア、シドニーへ降り立ったのは1984年。日本で調理の勉強中だった明さんは、パティシエを目指しフランス留学の準備をしていたが、交通事故に遭ってしまい行き先をシドニーに変更、語学留学で滞在した。

日本はそのころ、ちょうどバブル景気を迎える時期で、海外では円安の影響から日本製品が多く出回っていた時期だった。また当時、シドニーも含めオーストラリアは日本食ブームに沸き日本食レストランでの調理士の求人が多かったことから、明さんは一度日本へ帰国、調理師免許を取得してから1987年にゴールドコーストへ再来豪したという。シドニーで知り合った日本人経営の中華料理店での仕事を経て、ゴールドコーストの免税店のオープン当初から、同店の営業職を10年間勤めた。その後、明さん自身がゴルフを長年の趣味にしていたこともあり、スポーツ専門学校からの依頼で、しばらくの間、日本からのゴルフ留学生受け入れの手伝いをしていたなど多彩な職歴を持つ。明さんは今年でオーストラリア歴31年目を迎えるという。

幅広い趣味

仕事とは別に、余剰金の範囲で始めた株の売買は、現在も続けている「趣味」の1つだという。トレーダーの知り合いに話を聞いたり、日本へ帰国する度に、株取引に関する本や雑誌を買い込んでは独学で勉強していったそうだ。自宅の本棚にもずらりと関連書籍が並んでいた。インターネットの発達と共に、最新の経済ニュースから過去のデータまで、必要とするあらゆる情報へ瞬時にアクセスが可能になったため「ネット環境さえあれば、世界のどこにいても株取引ができるところが良い」と明さんは言う。

趣味の域はそれだけにとどまらない。愛犬の「クロ」という名前のラブラドールをトレーニング学校で訓練させながら「Obedience Training Dog」という人の指令で動く訓練犬として育て、競技会で「ユーティリティー」と呼ばれる訓練犬最高位のタイトルを取った経験も持っている。その経験から、現在、ゴールドコースト・インターナショナル・ドッグ・スクールで恵美子さんと一緒に訓練犬トレーニングのボランティアを行っている。

毎日の日課

毎朝欠かさないウォーキング。メイン・ビーチで
毎朝欠かさないウォーキング。メイン・ビーチで

雨の日以外は毎朝、サウスポートの家からメイン・ビーチまでの往復約5キロ、1時間半のウォーキングが日課だという。道中、言葉を交わす散歩仲間が何人もいて、毎朝のウォーキングは、元気に気持ち良い1日を始められる大切な日課の1つだと言う。また、ウォーキングの後プールで泳いで、ジムとサウナをこなすことも多いそうだ。プールやサウナでのオーストラリア人との井戸端会議は、明さんにとって役に立つ知識や貴重な情報を仕入れることができる社交場なのだそうだ。

いつも身軽な状態で

現在、1年間に約3カ月程、闘病中の明さんの妹や高齢になってきているご両親の様子を見に日本へ帰国しているそうだ。日本にいる家族の元へどんな時も駆けつけられるように、いつでも身軽に動ける状態にしているという。また、自宅に掛かる費用に関してもレントを選んでいるためメンテナンスをする必要がない。セキュリティーが万全なハイライズの新築物件へレント替えをしていく方が留守中も安心していられると、合理的に考えているそうだ。

これからのこと

来豪中の家族とファミリー・ディナー
来豪中の家族とファミリー・ディナー

自分たちの人生にとても満足しているという、小倉さんご夫婦。これからは今まで行ったことのない東南アジアの国々や10年後に完成が予定されているスペイン・バルセロナのサグラダ・ファミリアを訪れるという展望を描いている。行った先々では、海外旅行の醍醐味とも言える現地の人たちと交流することがとても楽しみだという。時期は未定だが、生活の場をオーストラリアだけではなく、物価の安い東南アジアの国や日本を往来するような生活も視野に入れているそうだ。

「オーストラリアは地震がなく資源に恵まれた自給自足が成り立つ国なので、経済には安定感があり、老後の社会保障や個人年金の引き出しにおいても、先のやりくりを先見することが容易だ」と明さんはオーストラリアでの生活の魅力を語る。また、「現地に溶け込み、毎日の生活を工夫しながら過ごすことで、リタイアメント生活は思いの外、お金が掛からない」とも話してくれた。


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