新・豪リークス/「海を殺すな!豪でも進むプラスチック海洋汚染」

現在TBSのシドニー通信員を務める筆者が、オーストラリアの“ホット”な話題を独自の視点で分析する。あっと驚く“裏情報”や“暴露(リーク)情報”も!?

第22回 「海を殺すな!豪でも進むプラスチック海洋汚染」

使い終わったペットボトルやレジ袋などのいわゆる“プラスチックごみ”は、年間800万トンが海に流出し、それを魚や海鳥が食べている。世界最大のサンゴ礁グレート・バリア・リーフにも悪影響が出ているというが……。

◇世界に広がるプラスチック海洋汚染

ギリシャ語の“塑造(そぞう)すること”を意味する“プラスティコス(plastikos)”に由来し、一般に石油を原料に作られる人工の合成樹脂のことを指すプラスチック。20世紀初頭に工業化されたプラスチックは、今では容器や自動車などの部品、発泡スチロール、ペットボトル、レジ袋に至るまでさまざまな日用品に応用されていて、現代人の生活には欠かせないものとなっている。

QLD州のビーチで回収された「プラスチックごみ」などの山(写真提供:Tangaroa Blue Foundation)
QLD州のビーチで回収された「プラスチックごみ」などの山(写真提供:Tangaroa Blue Foundation)

しかし、プラスチック製品は長期間腐食しない上、山や川、海などに捨てられると、いつまでも見苦しいゴミとして残るだけでなく、生態系への影響も指摘されている。

特に海には、年間800万トンの「プラスチックごみ」が流出しているとされ、毎年100万羽にも及ぶ海鳥が、これらを餌と間違えて食べてしまっているという。また、太平洋上には、日本の国土の面積の4倍以上に当たる、約160万平方キロメートルにも及ぶ「ごみだまり」が海流や風などによりできていて、そこには、日本から流れ着いたと見られるプラスチック製の歯ブラシや傘などが漂っているという。

そして厄介なことに、海上に漂うこの「プラスチックごみ」は、やがて海の中で砕けて直径5ミリ以下の破片、いわゆる「マイクロプラスチックごみ」となる。これらは、重金属や残留性汚染物質などを含んでいることもあり、もしこの破片を魚や貝、鳥などが摂食すると、食物連鎖を通じて体内に蓄積してしまうという。その魚や貝を人間が食べていることを考えると、恐ろしい。

◇グレート・バリア・リーフのサンゴにも影響

サンゴ礁に漂うペットボトル(写真提供:Tane Sincair-Taylor @Tanetangaroa)
サンゴ礁に漂うペットボトル(写真提供:Tane Sincair-Taylor @Tanetangaroa)

美しい海岸線の広がるオーストラリア。ごみが溜まった海のイメージはあまりないが、海岸で見つかるごみの4分の3が「プラスチックごみ」であることが、最近のオーストラリア連邦科学産業組織(CSIRO)の調査で分かった。また、世界最大のサンゴ礁、グレート・バリア・リーフのサンゴが「プラスチックごみ」を“餌”にしているという調査結果も発表されている。地球温暖化などの気候変動により、サンゴの白色化が広範囲で発生しているグレート・バリア・リーフだが、汚染された「プラスチックごみ」をサンゴが食べ、体内に吸収することにより病原体が蓄積され組織を破壊しているというのだ。しかも、その汚染物質を海中に放出し、周りのサンゴにも悪影響を与えてしまっている可能性があるという。

オーストラリアを含む世界159のサンゴ礁で、12万を超えるサンゴを調査したジェームズクック大学ARCサンゴ礁研究センター(米・コーネル大学所属)のジョリア・ラム博士によれば、「プラスチックごみ」が付着したサンゴの89%に、病原菌が繁殖していたことが確認されたという。

「アジア太平洋地域の海上には、現在約110億個のプラスチックごみが漂っており、その数は今後7年間で40%増加し、2025年までに157億個に達する可能性があります」(ラム博士)

◇豪・大手スーパーがレジ袋廃止へ

今年7月までに豪・大手スーパーでレジ袋が廃止される(筆者撮影)
今年7月までに豪・大手スーパーでレジ袋が廃止される(筆者撮影)

この「プラスチックごみ」問題を解決しようという試みは、世界各地で始まっている。現在世界40カ国以上でポリエチレン製のレジ袋を禁止して、違反すると禁固刑や罰金刑に処せられる所もある。オーストラリアでも、タスマニア州などが既にレジ袋を禁止しているが、国内2大スーパーのウールワースとコールズが、店頭のレジ袋を今年7月までに全面廃止すると発表した。

また、QLD州北部ポートダグラスのビーチなどで、定期的なクリーンアップ・キャンペーンを行っているNPO(非営利団体)「タンガロア・ブルー・ファウンデーション」(Tangaroa Blue Foundation、Web: www.tangaroablue.org)は、04年からオーストラリア国内の2,460カ所でボランティアによる清掃活動を行い、これまでに878トン以上の“ごみ”を回収した。同ファウンデーションのハイジ・テイラー代表は、ごみによる海洋汚染は大きな環境問題だが、我々が次の3つのことを実践すれば「簡単に解決できる」と指摘する。

  1. ①既にあるごみを撤去する
  2. ②海にごみを流さない
  3. ③リサイクルをしてごみの量を減少させる

確かにこれら“3つのこと”はシンプルだが、もちろん1人で達成することはできない「政府や学校、地域の人びとが協力してこの問題に対処していくことが大切です」とハイジさんは話す。

◇“プラスチックを食べる微生物”登場

一方で、新技術で「プラスチックごみ」問題を解決しようという試みも続けられている。16年には、日本の研究グループが“プラスチックを食べる微生物”を発見した。大阪府堺市にあるリサイクル施設から見つかったことから「イデオネラ・サカイエンシス」と名付けられたこの微生物は、通常自然界で分解されるのに何百年も掛かるというペットボトルの原料、ポリエチレンテレフター(PET)を、わずか数日で分解し始めたという。現在欧米の大学でもこの微生物を改良する研究が進められている。

元はと言えば人間が作り出し、人間が海に垂れ流してしまっている「プラスチックごみ」。世界にはまだまだこの問題に対する意識が低い国も存在しており、人類共通の課題としてお互い啓発していくことが重要だ。


飯島浩樹(いいじま・ひろき)
日本の民放キー局でニュース番組のディレクターなどを経て来豪。ウーロンゴン大学院でジャーナリズム修士号を取得後、TBSのシドニー五輪支局現地代表となる。現在、TBSのシドニー通信員として多くのニュース・リポートを日本に送っている。2017年8月より、FCAオーストラリア・南太平洋海外特派員協会会長を務める。

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