2015年9月 ニュース/総合

カウラのビル・ウエスト市長(左)に岸田文雄外相からの感謝状を手渡す草賀純男駐オーストラリア大使
カウラのビル・ウエスト市長(左)に岸田文雄外相からの感謝状を手渡す草賀純男駐オーストラリア大使

カウラ脱走事件から71年、日豪友好への貢献称える

岸田外相から感謝状

戦時中の日本兵補両集団脱走事件「カウラ・ブレイクアウト」の舞台となったNSW州中部カウラ市では事件から71年を迎えた8月5日、戦没者慰霊式が行われた。草賀純男駐オーストラリア大使は同日、カウラ市を訪れ、慰霊式で献花した後、昨年の70周年記念事業に対する岸田文雄外相からの感謝状をカウラのビル・ウエスト市長に贈った。

カウラでは昨年、「カウラ・ブレイクアウト70周年記念式典実行委員会」が作られ、日豪友好のイベントを開催した。岸田外相は感謝状で「カウラ市の歴史的重要性を記念する事業の成功に尽力され日本と豪州の友好関係の強化に多大なる貢献をされました」と同委員会の功績を称えた。これに対して、ウエスト市長は「日本の外相に評価されることはたいへん光栄だ」と謝意を示した。

在オーストラリア日本国大使館は「カウラにおけるエピソードを次の世代に伝えるため、日本政府は引き続きカウラ市と協力していきたい」としている。

カウラ・ブレイクアウト
 日本がオーストラリアと戦火を交えた第2次世界大戦中の1944年8月5日午前2時、シドニー西方約300キロのカウラ市にあった連合軍の捕虜収容所から1,000人以上の日本兵が脱走した事件。日本兵231人、オーストラリア兵4人が死亡した。日本兵は戦陣訓「生きて虜囚の辱を受けず」に従って蜂起したとされ、銃弾に倒れたり自ら命を断ったりした。
 カウラは戦後、悲惨な事件を乗り越えて、両国の和解と友好を象徴する場所となった。収容所跡地は整備され、日本人墓地や日本庭園が作られ、毎年8月5日には日豪の戦没者を追悼する慰霊式が開かれている。1973年には当時の皇太子ご夫妻(現在の天皇皇后両陛下)が桜の木を植樹された。満開となる毎年9月には桜祭りも開かれ、友好のシンボルとなっている。


安倍談話「歓迎する」−アボット首相
戦後の日豪の和解と友好強調

トニー・アボット首相は8月14日、日本の安倍晋三首相が同日明らかにした「戦後70年談話」について声明を発表した。アボット首相は談話を「歓迎する」と述べ、「オーストラリアと日本が力強い友好を発展させてきたのは、両国の国民と指導者が過去の暗い影が未来に影響を与えないよう務めたからだ」との認識を示した。

また、アボット首相は、日本が世界の平和と安定に貢献してきたとした上で「安倍首相の言葉は、より良い将来のための日本の取り組みを他国が受け入れ、対日関係を発展させることをより容易にするだろう」として、日本と中韓両国の関係改善に期待をにじませた。

なお、アボット首相は翌15日、「太平洋戦争勝利70周年」に関する声明を発表した。アボット首相は第2次世界大戦を戦った豪州兵に敬意を表し、「彼らが自由で民主的なオーストラリアを守り、現在の繁栄を導いてくれた」と謝意を示した。

オーストラリアは連合軍の一員として第2次世界大戦に参戦、太平洋戦線で日本と激しい戦闘を繰り広げた。豪戦争記念館によると、太平洋戦線と欧州戦線の合計で3万9,000人が戦死。3万人以上が戦争捕虜になった。その約3分の2は開戦直後の1942年に日本軍が進軍した東南アジアで捕虜になったという。日本軍に捕らえられた豪州兵の「36%が収容中に死亡した」(同記念館)とされる。


8月11日、ストラスフィールド市のタウンホール前で慰安婦像設置推進派のグループが掲げたプラカード。特別市議会後に路上に投げ捨てられていた(Photo: AJCN)
8月11日、ストラスフィールド市のタウンホール前で慰安婦像設置推進派のグループが掲げたプラカード。特別市議会後に路上に投げ捨てられていた(Photo: AJCN)

「慰安婦像」の設置案否決
ストラスフィールド市議会

シドニー西部郊外ストラスフィールド市は8月11日、特別市議会を開き、中韓系の反日団体が市内で計画していたいわゆる「従軍慰安婦」の銅像設置案を全会一致で否決した。計画の当事者で韓国系のオク市議を除く6人の市議が議決に参加した。多文化社会の調和になじまないとの認識から、全員が設置案に反対票を投じた。

議決に先立って公聴会が開かれ、地元市民らから選ばれた推進派4人と反対派4人が交互にそれぞれ5分ずつスピーチを行った。この後、6人の市議も意見を陳述した。市議からは「歴史的事実を判断する立場にはないが、地域社会の調和を乱す像の設置には反対だ」、「設置案は地域社会を分断している。(事前の意識調査で)設置に賛成した市民は33%しかおらず、大半が反対している」、「連邦レベルの問題であり、州政府や地方自治体が決める問題ではない」などの意見が出た。

像の設置案は「日本の戦争犯罪に対する豪・韓・中連合委員会」(Kaca)を名乗る反日団体が計画し、昨年3月に同市議会に提出した。これを受けて、市議会は同年4月、賛成派と反対派の双方から意見を聞いた上で、判断を連邦政府と州政府に委ねることを決定。いったん棚上げした形となっていたが、長引く問題の最終決着を図るため今回の特別市議会開催が決まった。

一方、設置に反対する在豪日本人の団体「オーストラリア・ジャパン・コミュニティー・ネットワーク」(AJCN)は昨年6月、3,200人以上の署名を集め、像を設置しないよう求める請願書を市議会に提出。像の設置計画が、直接関係のない記念碑設置を禁じた市の規定に違反しているほか、さまざまな民族グループが調和して暮らす多文化社会の精神に反すると主張してきた。推進派に対する感情的な攻撃を控え、現地の非日系住民とも連携して支持を広げた。

 

推進派の背景に反日工作も

11日夕に特別市議会が開かれたストラスフィールド市のタウンホール(公会堂)。「慰安婦像」設置に反対する日本人在住者100人以上を含む300人弱が会場を埋めた。設置案が否決されると、日本人在住者らは拍手とともに安堵の表情を浮かべた。反対派のスピーチに野次を飛ばした男性が警備員に注意を受ける場面はあったものの、目立った混乱はなくおおむね平穏だった。

ただ、開会に先立って会場前で設置推進派のグループが掲げたプラカードには、日本語で「安倍(首相)は日本の恥だ!」、英語で「日本の新軍国主義にNO」となどといった反日プロパガンダ(政治宣伝)のフレーズが踊っていた。

AJCNの山岡鉄秀代表は「(慰安婦像が市の規定に違反しているという)当たり前のことを一環して主張してきただけだが、1年4カ月もの長い時間がかかった。黙っていては踏みにじられるのが現実だが、民主主義には戦うためのツールがある」と活動を振り返った。また、同代表は推進派の狙いについて「プラカードを見れば分かる通り、(関係を強化する)日本とオーストラリアの分断を狙っているのは明らか」と指摘した。今後も幅広い民衆の声を集めていくとしている。


スミス氏、下院議長に就任

VIC州選出の48歳−辞任のビショップ氏後任

連邦下院は8月10日、自由党のトニー・スミス連邦下院議員(VIC州ケイシー選挙区)を下院議長に選出した。公費流用問題で2日に議長辞任を表明したブロンウィン・ビショップ氏(与党自由党)の後任。当初就任が取りざたされたベテラン議員のフィリップ・ラドック元移住相ではなく、バックベンチャー(内閣の職を持たない陣笠議員)で知名度は低いものの比較的若くフレッシュな印象のスミス氏を起用することで、アボット政権は問題の幕引きを図った格好だ。

スミス氏は1967年メルボルン生まれの48歳。メルボルン大卒業後、シンクタンクの調査員、ピーター・コステロ元財務相のアドバイザーを経て、2001年に連邦下院議員に初当選した。以来、当選5回を数える。プライベートでは、古いホールデン車のレストア(復元)の趣味を持つカー・マニアと報じられている。

ビショップ氏は、党務の資金集めパーティーに昨年11月に出席した際に使用したヘリコプターのチャーター費5,227ドルを公費として流用していた問題が7月に浮上。規定に沿って25%増しの金額を返納していたが、野党陣営は議員辞任を要求していた。8月1日には、さらに別の航空機のチャーター費約6,000ドルも公費で支出していた疑いも浮上し、辞任に追い込まれた。

10日付の全国紙「オーストラリアン」が掲載した調査会社ニューズポールの世論調査によると、各党別支持率で与党保守連合(自由党、国民党)は前回7月21日の調査と比べて1ポイント下落して39%となった。中小企業支援策などが好感された5月の新年度予算案発表後、初めて40%を割り込んだ。ビショップ氏の公費流用問題が、支持率低下に結びついた可能性も否定できない。最大野党で中道左派の労働党は前回と同じ39%、左派の環境保護政党グリーンズ(緑の党)は1ポイント上昇の13%、「そのほか」は前回と同じ9%だった。

ただ、労働党のビル・ショーテン党首も07年の連邦選挙で出身母体の労組から受け取っていた政治献金を申告していなかったことが7月に発覚した。党首別の満足度に関する同調査の設問では、この問題が尾を引く形でショーテン氏の人気も低迷しており、労働党は与党の失策を上手く得点に結び付けられていない状況だ。


「テディ」を名乗る男が出没しているシドニー市内中心部。特に1人でいるワーキング・ホリデー・メーカーや留学生に狙いを定めている
「テディ」を名乗る男が出没しているシドニー市内中心部。特に1人でいるワーキング・ホリデー・メーカーや留学生に狙いを定めている

詐欺師「テディ」に注意

日本人女性から金だまし取る

アジア系の中年男が日本人女性に声をかけて親しくなり、金を借りた後はプツリと音信が途絶える――。こうした手口で日本人女性が金をだまし取られる事例が最近、シドニーで再発している。在シドニー日本国総領事館は、NSW州警察と連携して再発防止に努めるとともに、「数回会っただけの素性の分からない男にお金を貸さないよう」注意を喚起している。男がターゲットにしているワーキング・ホリデーや留学で滞在中の若い日本人女性は特に警戒が必要だ。

同館によると、男はシドニー市内中心部のファストフード店やカフェ、ホテルのラウンジ、留学代理店事務所付近の路上などに出没。1人でいる日本人女性に「留学生のサポートをしている。仕事や学校を紹介できる」などと声をかけ、食事などに誘う。親しくなった後で「ひったくり被害に遭って手持ちの金がなくなった。1週間で返すから生活費を貸してほしい」などと金銭を要求。女性が金を貸してしまうと、突然、音信不通になるという。

男は「テディ」のほか「テリー」、「ジェフ」と名乗り、自称マレーシアまたはシンガポール出身。年齢40~50歳、身長160~165センチ、中肉、頭髪はやや薄めで、右手の力こぶに傷跡があり、前歯の一部が黒い。アジア人特有のなまりのある英語、片言の日本語を話し、地味な服装でベージュ色の帽子を被っている。

シドニーではこれまでも、同様の外見的特徴を持つ男が、同じ手口で日本人の若い女性から金銭をだまし取る事例が何度も発生している。プロの詐欺師と見られ、被害が明るみに出るとしばらく行方をくらますが、ほとぼりが冷めたころに再び出てきて詐欺を繰り返している。ブリスベンやゴールドコースト、アデレード、メルボルンでも同様の被害が報告されており、各地を転々とした後、最近になってシドニーに舞い戻ったとみられる。

「テディ」の巧みな言葉の例

「チャイルド・ケアのボランティアや留学生のサポートをしている」
「奨学金や宿泊施設も手配できる」
「君との出会いは運命的だ。きっと何かの縁だ。また会いたい」
「ホテルの支払が滞っている。今日精算しないとホームレスになるから助けてほしい」
「見ず知らずの男にお金を貸すことは心配だろうけど、毎日連絡するから大丈夫」
「現金がないならATMへ行こう。マスターカードがあれば引き出せる」

■情報提供先
在シドニー日本国総領事館
Tel: (02) 9250-1000
Email: japaneseconsulate@sy.mofa.go.jp


ウッドサイド・ペトロリアムがWA州北西部沖で手がける天然ガス採掘施設(Photo: Woodside Petroleum)
ウッドサイド・ペトロリアムがWA州北西部沖で手がける天然ガス採掘施設(Photo: Woodside Petroleum)

豪エネルギー産業に打撃

ガス・石油大手の収益悪化−原油安響く

オーストラリアの天然ガス・石油大手の収益が軒並み悪化している。各社が8月に発表した決算で明らかになった。最大の要因は、中国経済の減速、米シェール・オイルの増産、主要産油国の供給過剰を背景とした原油価格の下落だ。ガソリン価格の下落で個人消費を刺激する効果が見込める反面、エネルギー産業には打撃となっている。

豪天然ガス・石油大手ウッドサイド・ペトロリアムが8月19日に発表した2015年6月中間期決算によると、税引き後の純利益は6億7,900万米ドルと前年同期比で39%減少した。売上高は25億5,600万米ドルと同28%減少した。

天然ガス・石油の生産、発電、電力小売を手がける豪エネルギー複合企業のオリジン・エナジーが20日に発表した15年6月中間期決算は、純損益が6億5,800万豪ドルの赤字に転落した。前年同期は5億3,000万豪ドルの黒字だった。売上高は138億400万豪ドルと同5%減少した。

豪天然ガス・石油大手のサントスが21日に発表した15年6月中間期決算は、税引き後純利益が3,700万豪ドルと前年同期比で82%落ち込んだ。売上高は16億3,500万豪ドルと同15%減となった。

直近の原油価格は一段と下落基調を強めている。指標となる米国産「ウエスト・テキサス・インターミディエート」(WTI)の先物価格は8月21日、中国経済の減速で需要が落ち込むとの観測から、一時1バレル40米ドルを割り込みリーマン・ショック以来約6年半ぶりの安値を記録した。


元気寿司、オーストラリア進出
日本の回転寿司大手で初めて

日本の回転寿司チェーン大手、元気寿司(栃木県宇都宮市=東証1部)は8月21日、オーストラリアでフランチャイズ契約を締結したと発表した。オーストラリア市場で需要が伸びている回転寿司チェーンの運営に参入し、店舗網の拡大を図る。日本の大手回転寿司チェーンによるオーストラリア出店は初めて。

元気寿司は4つのブランドで日本国内136店舗(6月末時点)を展開する一方、海外進出を積極的に進めている。現地法人が17店舗を直営する米国、フランチャイズ方式で運営する香港と中国、クウェート、シンガポール、タイ、インドネシアで合計138店舗(7月末時点)を海外展開している。2015年3月期の売り上げ293億6,300万円(前年同期比9.2%増)のうち海外事業は51億2,600万円(同14.1%増)を占める。同社はオーストラリアのほか、欧州初となる英国、カンボジアへの進出も明らかにした。

オーストラリアでは、「スシ・ロール」と呼ばれる西洋風の巻き寿司が軽食として浸透しているほか、回転寿司店も人気を集めている。最大手はゴールドコースト発祥の日系の現地企業スシ・トレインで、東海岸を中心に国内45店舗、ニュージーランド2店舗を展開している。

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