2016年4月 ニュース/総合

早期選挙の可能性を排除していないマルコム・ターンブル首相
早期選挙の可能性を排除していないマルコム・ターンブル首相

選挙時期めぐり駆け引き活発に

上下両院同時解散の観測もくすぶる

今年年末までの実施が予想される次期連邦選挙に向け、駆け引きが活発化している。3月初めには、次期選挙が7月に前倒しされるとの観測も浮上した。主な地元メディアによると、早期選挙については、複数の閣僚が前向きな意向を示していて、マルコム・ターンブル首相も否定していない。

有力視されたのは、下院だけではなく上院の全議席も改選する「上下両院同時解散選挙」(ダブル・ディソリューション・イレクション)を7月2日に実施する、というシナリオだ。

通常の連邦選挙は、下院議員(任期3年)の全員と上院議員(任期6年)の約半数を改選する。規定上、一番遅い投票日(土曜日)は2017年1月14日だが、休暇の最中のクリスマスから新年にかけての時期はあり得ない。最も遅くて11月から12月初めまでに実施される公算が高い。

しかし、公共放送ABCは3月8日、ある閣僚の話として「ターンブル政権が7月2日の上下両院同時解散選挙を視野に、予算案発表を1週間早めることを考えている」と伝えた。5月10日の2016/17年度予算案発表を5月3日に前倒しすることで、規定や審議日程などから、首相が5月11日に選挙実施を発表し、7月2日に投票というスケジュールが想定されるという。7日付の全国紙「オーストラリアン」も「ターンブル首相は7月2日の選挙実施に傾いている」と報じた。

予算案発表の時期について聞かれたターンブル首相は「予算案は5月に発表する」と述べるにとどめ、前倒しの可能性を排除しなかった。

上院で法案2度否決が引き金に

浮上した早期選挙説はこうだ。ターンブル政権は、まず上院でキャスティング・ボートを握る少数勢力の影響力を削ぐ上院選挙制度の改正法案を成立させる。その上で、上院の全議席も改選する上下両院同時解散選挙に持ち込む。うまくいけば、与党が過半数に満たない上院で議会運営のネックとなっていた少数勢力を一掃できるかもしれない――。

オーストラリア憲法第57条には、上院で法案が一度否決され、3カ月後に再上程した際にもう一度否決されれば、首相は上下両院を同時解散できるという規定がある。下院と上院の決定が異なる場合、審議の行き詰まりを解消する狙いがある。上院では現在、労組を監視する「オーストラリア建築・建設委員会」(ABCC)の設置法案の成立のめどが立っていない。ターンブル首相は、予算案発表直後に同法案が再度否決されれば、上下両院同時解散選挙を実施して国民に信を問うことができる。

ABCによると、規定上、上下両院同時解散選挙を実施できるのは7月2日、9日、16日しかないという。このうち、選挙戦のスケジュールや休暇などの要因から、2日となる可能性が最も高いとしている。

ただ、予算案の審議日程がタイトになるため、7月実施は現実的ではないとの見方もある。大幅な選挙前倒しには与党側にもリスクがある。盛んにリークされた両院同時解散説は、政局の主導権を握りたい与党側の「ブラフ」である可能性も否定できない。

選挙実施の決定はオーストラリアでも首相の専権事項であり、自分に一番有利なタイミングを図るために発表まではほとんど何も語らない。ターンブル首相の胸中は計り知れないが、5月の予算案発表を軸に、世論調査などを分析しながら、あらゆる選択肢を慎重に検討しているものと見られる。


55%が保守連合の再選を予想
支持率は43%で横ばい-世論調査

最新の世論調査によると、次期連邦選挙での与党保守連合の勝利はほぼ順当だが、マルコム・ターンブル首相への満足度は低下傾向にある。3月21日付の全国紙「オーストラリアン」が掲載したニューズポールの世論調査(17〜20日実施)で明らかになった。

これによると、「次期連邦選挙でどの党が勝利すると思うか」との質問に、全体の55%が与党保守連合、25%が労働党と答えた。保守連合支持者の82%が保守連合、7%が労働党と回答。労働党支持者の44%が労働党、38%が保守連合と答えた。

また、各政党別の支持率は、保守連合43%(前回掲載日の3月7日と変わらず)、労働党34%(前回比1ポイント下落)、環境保護政党グリーンズ12%(緑の党=前回と変わらず)、その他11%(1ポイント上昇)だった。選好票を振り分けた後の実際の得票率に近い2大政党別の支持率は、保守連合51%(1ポイント上昇)、労働党49%(1ポイント下落)となった。

保守連合の支持率は、トニー・アボット前首相の下で低迷していたが、昨年9月の党首選でターンブル首相に交代した後、11月には各党別支持率で46%、2大政党別支持率で53%と急回復していた。

一方、「ターンブル首相に満足しているか」の質問では、「満足」が39%と前回から4ポイント低下した一方、「不満足」が44%と3ポイント上昇し、首相交代後初めて「不満足」が「満足」を上回った。「満足」が60%、「不満足」が22%だった昨年11月と比較すると、首相交代直後のハネムーン(蜜月)効果がはげ落ちていることが分かる。

もっとも、「どちらの党のリーダーが首相にふさわしいか」の質問では、ターンブル首相が52%(3ポイント下落)と、ビル・ショーテン労働党党首(21%=前回と変わらず)を依然として大きく引き離している。ショーテン氏は満足度に関する質問でも、「満足」が28%(2ポイント下落)と「不満足」(52%=3ポイント下落)を大きく下回っており、精彩を欠いている。


所得税減税の可能性排除
法人税引き下げと同時は不可能-予算案

5月に発表される2016/17年度予算案に向けて、税制改正をめぐる閣僚の発言が相次いでいる。スコット・モリソン財務相は3月15日、メルボルンでの講演で、法人税と所得税の減税を「1回の予算案で同時に行うことはできない」と述べ、財源のめどが立たない中で所得税減税はできないとの考えを示した。ターンブル政権は先に、消費税に相当する財・サービス税(GST=現在10%)の引き上げを断念している。

また、アーサー・シノディノス内閣官房長官は20日、公共放送ABCのインタビューで法人税減税について「投資の拡大と生産性の向上を促進する。経済成長と賃金の上昇につながる」と積極的な姿勢を示した。オーストラリアの法人税率は現在30%。年商200万ドル以下の会社については昨年、28.5%に引き下げた。


3月16日、クイックシルバー・プロの表彰台でトロフィーを掲げるマット・ウィルキンソン(左)とタイラー・ライト(Photo: WSL)
3月16日、クイックシルバー・プロの表彰台でトロフィーを掲げるマット・ウィルキンソン(左)とタイラー・ライト(Photo: WSL)

豪州勢が男女そろって優勝

サーフィンの世界ツアー、ゴールドコーストで開幕

プロ・サーフィンの「ワールド・サーフ・リーグ」(WSL)は3月16日、ゴールドコースト(GC)南部スナッパー・ロックスで2016年の男女ツアー開幕戦の決勝を行った。男子の「クイックシルバー・プロ」は、マット・ウィルキンソン(豪)がコロヒ・アンディーノ(米)を破り、ツアー初優勝を飾った。NSW州東部セントラル・コースト出身の27歳は、準々決勝で昨年の世界王者アドリアーノ・デ・ソウザ(ブラジル)、準決勝で昨年のクイックシルバー・プロの覇者フィリペ・トレドをそれぞれ退けて勝ち上がった。

女子の「ロキシー・プロ」は同日、スナッパー・ロックスで決勝を行い、タイラー・ライト(豪)が長年のライバルであるコートニー・コンローグ(米)を倒し、ツアー通算7勝目、ロキシー・プロ2勝目を勝ち取った。

クイックシルバー・プロとロキシー・プロはともに豪3連戦の初戦。3月24日〜4月5日にはVIC州ベルズ・ビーチで第2戦、4月8〜19日にはWA州マーガレット・リバーで第3戦をそれぞれ行う。


共同訓練のため4月にシドニー周辺海域に派遣されるそうりゅう型潜水艦3番艦「はくりゅう」(Photo: 海上自衛隊)
共同訓練のため4月にシドニー周辺海域に派遣されるそうりゅう型潜水艦3番艦「はくりゅう」(Photo: 海上自衛隊)

海自と豪海空軍が共同訓練-4月にシドニー周辺海域で

日本の海上自衛隊は3月9日、オーストラリアの海軍と空軍との共同訓練をシドニー周辺海域で4月に実施すると発表した。人員約430人、護衛艦「あさゆき」、護衛艦「うみぎり」、搭載航空機2機、潜水艦「はくりゅう」を派遣し、対潜訓練や戦術運動、通信訓練などを行う。

派遣期間は3月15日〜5月28日。護衛艦部隊と潜水艦部隊はともに4月15日にシドニーに到着し、26日にシドニーを離れる。海自は「豪海軍および空軍と共同で戦術訓練を実施することにより、海上自衛隊の戦術技量の向上を図るとともに、豪海空軍との連携強化を図る」としている。

訓練に参加する「はくりゅう」は、海自のそうりゅう型潜水艦の3番艦。オーストラリア海軍の次期潜水艦配備計画で、日本はそうりゅう型潜水艦の採用を目指している。同計画をめぐっては、フランスとドイツもそれぞれ売り込みをかけており、3つどもえの受注合戦となっている。


タバコは増税で1箱40ドルに!?
予算案で医療費の財源に

シドニーのタブロイド紙「デイリー・テレグラフ」は3月15日までに、ターンブル政権は予算案で医療費支出の財源に充てるためタバコ税引き上げを検討していると伝えた。現在20ドル台で販売されている標準的なタバコ1箱(25本入り)の価格は、40ドル程度まで値上がりする可能性があるという。

連邦保健省によると、オーストラリアの喫煙率は12. 8%(2013年)。タバコの害によって、年間1万5,000人が病気で死亡し、社会的・経済的な損害は315億ドルに達している。


資源ブーム後の経済構造の転換がうまく進んでいると指摘するスコット・モリソン連邦財務相
資源ブーム後の経済構造の転換がうまく進んでいると指摘するスコット・モリソン連邦財務相

GDP、前年比3. 0%増に加速

財務相、非資源への構造転換強調

オーストラリア統計局(ABS)が2月2日発表した2015年10〜12月期の実質国内総生産(GDP)成長率(季節調整済み)は、前期比0.6%増、前年同期比3.0%増と好調だった。7〜9月期の前年同期比2.7%増(改定値)に続いて2期連続で加速した。ブルームバーグが集計した市場予想の平均である前期比0.4%増、前年同期比2.5%増を上回った。

個人消費(家計最終支出)が前期比0.8%増、前年同期比2.9%増と好調で、GDPの成長に対する貢献度は前期比0.4ポイントと最も高かった。一方、資源部門の低迷を背景に「住宅以外の建設投資」が前期比7.0%減、前年同期比14.2%減と大幅に落ち込み、前期比の貢献度はマイナス0.5ポイントとなった。

スコット・モリソン連邦財務相は2日、好調な成長率は資源ブーム後の経済構造の転換を反映したものだとの認識を示した上で、「(現在の)力強い消費と雇用の拡大の次の段階で、非資源企業が投資を拡大していくだろう」と指摘した。

連邦政府によると、一定の移民受け入れなどで人口が増え続けているオーストラリアでは、雇用を安定的に維持するには3.0%台の長期トレンドを維持する必要がある。12月期の成長率は、適切な成長速度とされるこの水準にほぼ近付いた。このところ足踏みを続けてきた景気が、回復基調に転じたのかどうかが注目される。

ただ、中国の景気減速や資源価格の下落などオーストラリア経済の足を引っ張るマイナス要因は払拭されていない。今後の景気回復が順調に進むかどうかは外的要因に左右される部分が大きく、依然として予断を許さない。

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