2015年3月 ニュース/コミュニティー(2)

在オーストラリア日系企業活動の概要

営業利益は改善するも景況感が悪化した2014年の日系企業

JETROシドニー事務所
調査部長 平木忠義

日本貿易振興機構(JETRO)は2014年10〜11月にかけて「在アジア・オセアニア日系企業実態調査」を実施いたしました。オーストラリア経済をみると、経済をけん引してきた資源部門は価格下落の影響を受け、最近の原油安が先行きにさらなる不透明感を与えています。
 また、内需は低金利政策による効果が消費部門に表れていると言われていますが、依然として弱く、過熱気味であった住宅ブームは落ち着きつつあることから、底堅く推移する経済に暗い影を落としつつあります。こういったオーストラリアの経済状況の中での在豪日系企業の活動状況を本調査結果からご紹介いたします。今回の調査実施に際しましてご協力いただきました企業の皆様にはこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。

2014年の営業利益見通しは改善するも景況感は悪化

在豪日系企業の状況をみると2014年の営業利益が「黒字」となると回答した企業の割合は2013年から7.8ポイント拡大して71.5%となり、「赤字」となると回答した企業の割合は4.5ポイント縮小して17.1%となりました。(表1参照)

これを見ると在豪日系企業の活動は改善していると見ることもできますが、2013年10月時点での14年の見通しでは45.8%の企業が13年に比べて改善すると回答したものの、14年10月時点では29.9%に縮小していることから景況感としては悪化しているとも考えられます。15年の見通しについては34.7%の企業が「改善」、47.2%が「横ばい」と回答していますが、18.1%の企業が「悪化」すると回答しています。(表2参照)

一般消費者を主な顧客とする企業の現地販売は改善

2014年の営業利益見通し改善、悪化の理由についてみると、67.2%の企業が「現地市場での売り上げ増加」を改善の理由としてあげる一方で、53%の企業が「現地市場での売上減少」を悪化の理由として挙げています。それぞれの回答別に企業の特性をみると、売上減少を悪化理由とした企業の約74%が企業向けの製品やサービスを提供している一方で、売り上げ増加を改善理由とした企業の約43%が一般消費者向けの製品やサービスを提供する企業であることが特徴としてあげられます。

オーストラリア統計局が発表した家計所得統計(11/12年度)によれば人口の約33.7%、746万人が週可処分所得1,000豪ドル(年間52,000豪ドル)を超え、特に人口の4.2%に該当する92万人が2,000豪ドル(年間104,000豪ドル)を超えています。購買力の高い富裕者層の存在は安定的なハイエンド・マーケットを提供することから、当地に進出している一般消費者向けの販売会社はこれらの富裕者層をターゲットとし、安定的な売り上げを確保しているものと考えられます。(表3・表4参照)

15年の見通しの理由についてみると、76.1%の企業が「現地市場での売り上げ増加」を営業利益見通し改善の理由として挙げています。特に14年では一般消費者向けの販売会社が中心であったものが、企業向けの販売会社も現地市場での売り上げ増加を見込んでいます。一方、「現地市場での売り上げ減少」については機械器具産業を中心に54.3%の企業が営業利益悪化の理由として回答しています。また、もうひとつの特徴として例年人件費に関する項目がこれまで営業利益改善・悪化の要因として大きく作用していましたが、15年では人件費に関する項目を選択する企業の割合が少なくなっています。(表5・表6参照)

非製造業で顕著な現地化の動き

今後の事業展開の方向性については、非製造業を中心に41.8%(81社)の企業が「拡大」、47.4%(92社)が「現状維持」と回答しています。特に今後事業を拡大すると回答した企業81社のうち40社が15年は営業利益が改善すると回答しており、その理由としてほとんどの企業が「現地市場での売り上げ増加」を理由としてあげています。一方、今後「事業の縮小、第三国(地域)への移転・撤退」を選択した企業は電気、輸送用機械器具関連を中心に全体の10.8%(21社)となりました。

今後の事業展開の1つとして現地化に向けた動きを見てみます。現地従業員、日本人駐在員の増減についてみると、非製造業では過去1年間で現地従業員を増加させた企業の割合は27.3%となりました。また、今後増加させるとする企業も31.9%と引き続き現地従業員を増加させる傾向にあります。一方、日本人駐在員については今後増加が5.8%、横ばいが81.8%、減少が12.4%となりました。製造業をみると、現地従業員、日本人駐在員ともに今後の変化として横ばいがそれぞれ65.4%、79.6%、減少もそれぞれ19.2%、14.3%となりました。このように非製造業では現地化が進展し、製造業では事業自体が縮小する傾向にあると考えられます。

炭鉱、鉱山権益投資は価格下落にあっても現状維持

権益ビジネスを実施している在豪日系企業の割合は17.2%となり、このうちの半数以上の56.3%が炭鉱、31.5%が天然ガスなどのその他、18.8%が鉱山、12.5%が住宅の権益ビジネスを実施しているという結果となりました。

それぞれについて価格の動向をみると、住宅はすべての企業で上昇しているとし、今後1~2年の事業展開の方向性についても75%が拡大するという回答を得ました。一方、炭鉱、鉱山をみると価格は炭鉱で87.5%、鉱山で60%の企業が下がっていると回答しており、資源価格の下落が権益価格に影響を及ぼしていると考えられます。また、生産供給は多くの企業で上がっているとの回答がなされており、価格が下落する中で生産量を増加させることによってコストを調整していることも考えられます。また、今後1~2年の事業展開の方向性については現状維持とする企業が多く、権益ビジネスは短期的な視点よりも中長期的な視点に基づいていると考えられます。(表7参照)

以上のように、2014年の営業利益見込みについては黒字と回答する企業が拡大し、15年も改善を見込む企業が増加していますが一方で、悪化すると回答する企業の割合も依然として高いことから、日系企業活動の先行きには不透明感が存在しています。こうした中、オーストラリアには購買力の高い富裕者層が存在しており、当該層をターゲットとして一般消費者向けの製品やサービスを提供する企業が今後も事業拡大や売り上げ改善を見込んでいることから、引き続きハイエンド・マーケットとしての魅力は大きいと考えられます。

また、オーストラリアは人件費をはじめとする高コスト国として知られます。本年の調査でも人件費の高騰が経営上の課題として引き続きあげられていますが、営業利益を変化させる要因としての影響度は小さくなってきていると考えられます。ちなみに、賃金のベースアップ率をアジア各国と比較してみるとオーストラリアは5%未満を安定的に推移している一方で、アジア各国では大きく変動していることから、水準の差はあるにせよ今後はアジア地域でも賃金の問題が大きくなってくると考えられます。

15年1月15日、日本・オーストラリア経済連携協定が発効し、今後、日豪間の貿易投資がさらに促進されることが予想されます。在豪日系企業にはオーストラリアの市場規模を人口だけで計らず、ボリュームや質を勘案した事業活動や中長期的な視点での事業運営などが求められるのではないでしょうか。


表1:営業利益見込みの推移

表2:調査時点毎の営業利益見込み見通し

2014年の営業利益改善・悪化理由

表3:①業利益改善理由

表4:②業利益悪化理由

2015年の営業利益改善・悪化理由

表5:①業利益改善理由

表6:②業利益悪化理由

表7:資源等の権益に関する現状や今後の見通し (単位:%)


(注)Xは同回答企業数3未満のため秘匿。調査の対象には権益管理のために設立された駐在員事務所を含まない。

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