2015年4月 ニュース/総合


1982年に米国を訪問したマルコム・フレーザー首相(当時)

フレーザー元首相死去

70〜80年代に長期政権—アジア重視

第22代連邦首相を務めたマルコム・フレーザー氏が3月20日、死去した。84歳だった。昨年他界したゴフ・ウィットラム元首相に続き、多文化主義やアジアとの関係強化など現代オーストラリア社会の基礎を作った有力政治家が世を去った。

1930年メルボルン生まれ。父親は元上院議員。英オックスフォード大で政治学と経済学を学んだ後、VIC州にあった実家の放牧場で働いていた時代に自由党に入党した。55年の連邦選挙に25歳で初当選し、当時最年少の連邦議員となった。66年から陸軍相、教育・科学相、国防相などを歴任した。

75年8月に野党自由党党首に就任した。同年11月、労働党のウィットラム首相(当時)が連邦総督に解任されるという歴史的事件を受け、暫定首相に任命された。以来、首相として3回の連邦選挙に勝利し、83年の選挙で敗北して議員を辞職するまで8年間、保守政権を率いた。

首相在任中は、保守的な経済合理主義の下で歳出削減を進める一方、社会・外交ではリベラル路線を鮮明にした。先住民アボリジニの土地所有権を容認し、南アフリカのアパルトヘイト政策に反対した。急増していたベトナム難民を大量に受け入れるなど、アジアからの移民を大幅に拡大した。当時最大の脅威だった共産圏の勢力拡大を阻止するため東南アジア諸国連合(ASEAN)を支援した。76年に日豪友好協力基本条約を締結するなど東アジアとの関係も強化した。

政界引退後も途上国への人道支援に力を注いだ。同じ自由党のハワード首相(当時)に対しても、難民船を押し返したり先住民への謝罪を拒むなどした保守的な傾向を批判した。トニー・アボット氏が自由党党首に就任した2009年に自由党を離党していた。


対「イスラム国」戦、豪人義勇兵
クルド人武装勢力に参加

オーストラリア人の民間人男性が2月24日、シリア北部で「イスラム国」(IS)を名乗る過激派勢力との戦闘中に死亡した。男性は義勇兵としてクルド人民兵組織に参加し、要衝テル・ハミスをISから奪回する作戦中に「戦死」したもようだ。ISに参加したオーストラリア人が戦闘で死んだ例は報じられているが、反IS勢力側の死亡は初めてと見られる。メディア大手フェアファクス系各紙が伝えた。

死亡したのはQLD州出身の元陸軍予備役アシュリー・ケント・ジョンストンさん(28)。昨年10月に欧州に渡航した後、母親に携帯電話でメッセージを送り、クルド人勢力の人道支援活動にボランティアで参加すると伝えていた。しかし、クルド人勢力がフェアファクスに述べたところによると、ジョンストンさんは武器を持って最前線でISとの戦闘に加わっていた模様だ。

3月初めにシドニーで開かれたジョンストンさんの追悼式典にはオーストラリア在住のクルド人約500人が参列した。シリアのクルド人支配地域では3月15日までに、クルド人勢力がジョンストンさんの遺体を入れた棺を抱えて街路を行進し「戦友」の死を偲んだ。棺はその後、トルコ領内に運ばれ、ジョンストンさんの家族の代理人に引き渡された。

クルド人勢力はオーストラリア軍など有志連合から武器の支援を受けているものの、オーストラリアの法律は私的な戦闘参加を禁じている。報道によると、有罪になれば最長20年の禁錮刑が科せられるという。オーストラリア外務省は対IS戦に参加しているオーストラリア国籍の民間人がほかにもいると見ていて、即刻民兵を離脱して戦闘地域から退去するよう勧告している。



シドニー市内中心部西部ダーリン・ハーバーの再開発エリア、バランガルーの完成予想図。写真左の最も高いビルがクラウン・シドニー

ペントハウスは1億ドル超

シドニーのVIP向け新カジノ

オーストラリアのカジノ大手クラウン・リゾーツがシドニー湾岸で開発を進めているカジノ複合施設「クラウン・シドニー」の詳細が、3月14日までに明らかになった。富裕層や外国人の重要人物(VIP)専用のカジノをはじめ、超高級マンションやホテル、商業施設などが入る超高層ビルを市内中心部西側バランガルー地区に建設する。地元紙シドニー・モーニング・ヘラルドが伝えた。

州政府に提出された計画書などによると、69階建てのビルはうねった曲線を基調とした斬新なデザインが特徴。地上から5階分は商業施設やカジノなどが入居し、その上に16階分323室のホテル、2階分の超高級カジノ、4階分25室の超高級宿泊施設などが続く。

ここから上の30階分は66戸の超高級住宅に充て、中でも最も豪華な2階建てペントハウスの価格は、集合住宅としてはシドニーで初めて1戸当たり1億ドルの大台を超える見通しだという。さらに住宅区画から最上階までには最上級の超VIP向け宿泊施設を設ける。

富豪ジェームズ・パッカー氏が率いるクラウンは、旗艦カジノ「クラウン・メルボルン」をはじめパースとロンドンにカジノを所有・運営しているほか、マカオのカジノ複合リゾートなどにも現地企業との合弁で参画している。NSW州政府は2013年、クラウンが15年間にわたり約10億ドルのライセンス料を支払うことなどを条件に新カジノ開発計画を承認した。営業開始は19年の予定。シドニーのカジノは同業エコー・エンターテイメントの「ザ・スター」に続いて2軒目となる。

バランガルーでは港湾施設跡地の再開発事業が進行中。クラウン・シドニーは同地区の中心的な建物で、パッカー氏はオペラ・ハウスに匹敵する街のアイコン(象徴)にしたいとしている。このほか、高級マンションやオフィスビル、商業施設、海辺の自然に触れられる公園などが建設され、シドニーの新名所となる。



テレビに映し出されたネットフリックスの選択画面

月9ドル動画見放題
米ネットフリックス上陸-テレビ放送に影響も

米動画配信サービス大手ネットフリックスは3月24日、オーストラリアとニュージーランドでの配信を開始した。オーストラリアでの利用料金は1カ月当たり定額8.99ドルからと比較的低水準。既存の地上波テレビ放送や料金がより高いケーブルテレビ(CATV)にとって脅威になるとの見方も出ている。成功すれば、大手数社が支配する豪放送界にとって「黒船」となる可能性もある。

インターネットでテレビ番組や映画、独自制作のドラマなどの映像作品を提供する。同時に接続できる機器の数や画質によって、最も安い8.99ドルの「ベーシック」(1機のみ、高精細画像=HD非対応)、11.99ドルの「スタンダード」(2機まで、HD対応)、14.99ドルの「プレミアム」(4機まで、4K相当の高画質に対応)の3プランがある。

価格設定は、基本料金だけで25ドル(スポーツや映画などの専用チャンネルは別料金)かかるCATV大手フォックステルのサービスよりも大幅に安い。既に同様の配信サービスを提供している現地系の「スタン」(メディア大手フェアファクスと同ナイン・エンターテイメントの合弁)や、「プレスト」(フォックステルとメディア大手セブン・ネットワークの合弁)よりも低料金となっている。

 

コンテンツ不足の可能性

ネットフリックスの上陸について、24日付の公共放送ABC(電子版)は「オーストラリアの地上波と有料テレビは攻撃にさらされる」と指摘した。インターネットの動画配信サービスは既存の通信インフラを利用できるため、専用回線のCATVと比較して低料金で提供できる。主力の米国市場と同じ英語圏であるため、コンテンツを現地化する手間やコストもかからない。通常1年の契約期間に縛られるCATVと違い、ネットフリックスは月額制のため利用者は気に入らなければすぐに解約できる。

ただ、映像コンテンツの放映権は国によって異なることから、オーストラリアではコンテンツが不足していると指摘する声もある。ネットフリックスはオーストラリアで提供している番組数を明らかにしていない。しかし、ABCはサービス開始時点の番組・映画数は「1,000以上」しかないとした上で、「米国より7,000少ない」との専門家の見方を紹介した。

また、プレミアムのプランが提供する4K相当の動画をスムーズに視聴できるかどうかも、検証の余地がある。オーストラリアのネット環境は既存の電話回線を使った「ADSL」が主流で、大半の地域ではまだ高速の光ケーブル回線が利用できない。4K対応テレビもほとんど普及していない。

ネットフリックスは1997年に米カリフォルニア州で創業。当初は宅配レンタルDVDが主力事業だったが、近年は動画配信に注力して急成長した。同社によると、現在、50カ国以上で5,700万人を超える会員を抱える。今年後半には日本市場進出も予定している。



シドニーにあるオーストラリア準備銀行(RBA)本店。利下げ観測が好調な株価を下支えしている

株価、「リーマン前」超えへ

主要指数は節目の6,000まであと一歩

米国や日本と比較して出遅れ感のあったオーストラリアの株価が、ここにきて勢いを付けている。3月24日時点で、オーストラリア証券取引所(ASX)の代表的な株価指数「S&P/ASX200」と「オール・オーディナリーズ」はいずれも節目の6,000が目前に迫った。ASX200が6,000を超えれば、リーマンショック前の2008年2月以来約7年ぶりとなる。

24日の終値は、ASX200が前日比で12.9ポイント高い(0.2%高)5,969.1、オール・オーディナリーズが13.4ポイント高い(0.2%高)5934.5だった。米国株など好調な海外市場やこのところの豪ドル安に加えて、1年半ぶりとなった2月の政策金利引き下げの効果もあり、年初からの騰落率はASX200が10.31%の上昇、オール・オーディナリーズが10.13%の上昇といずれも2ケタ伸びた。

ASX200の予想株価収益率(PER)は17倍以上と歴史的水準を大幅に上回っていることから、「上げ過ぎ」を懸念する声もある。直近約3週間の株高では、6,000にあと一歩というところで2度、足踏みする局面もあった。

もっとも、好調な豪株価を力強く下支えしている好材料がある。オーストラリア準備銀(RBA)の追加利下げが近いとの観測だ。RBAは2月の利下げの後、3月3日の金融政策会合では金利を据え置いたものの、グレン・スティーブンス総裁は声明で遠くない時期にもう一段の利下げに踏み切る可能性を示唆した。

23日付の地元紙シドニー・モーニング・ヘラルドが報じた米金融大手シティ・グループの調査も、2カ月以内の追加利下げを織り込んでいる。これによると、RBAが「4月8日の会合で政策金利を0.25ポイント引き下げて2%にする確率」は40%だが、次の5月6日の会合では92%に達している。ギリシャや中東などで不測の事態がない限り、豪株価は年央に向け「リーマン前」の水準をようやく取り戻しそうだ。



着工認可件数が爆発的に伸びているゴールド・コースト(Photo: Tourism & Events Queensland)

QLD州南東部で建設ブームの兆し
ゴールドコーストで着工認可件数激増

オーストラリア統計局(ABS)が3月3日に発表した統計によると、1月の建築物の新規着工認可件数は全国平均で前月比7.9%増加した。このうちQLD州では同47.8%増となり、5,000件の大台を初めて超えた。中でも人口が集中している州南東部の都市圏で伸びが大きく、シドニーと比べて出遅れていた住宅ブームに火が付く可能性がありそうだ。

建設業者の団体「マスターズ・ビルダーズ」は「QLD州の住宅建設ブーム到来を強く示唆している」と指摘した。特にゴールドコースト(GC)は前月比568.5%増の1,464件と劇的に増加した。1月まで1年間の件数も前年同期比で56.3%増と好調だった。

GCでは英連邦のスポーツ大会「コモンウェルス・ゲームズ」が2018年に開催される。同大会の選手村の建設が本格化したことが、着工認可件数急増の背景にあると同団体は分析しているが、このところの低金利を背景に、特にGCの集合住宅では将来の不動産価格上昇を見越した投資意欲も高まっているという。州南東部ではブリスベンが前月比7.2%増、ブリスベン北方のサンシャイン・コーストも13%増と好調だった。一方、ケアンズを含む「州最北部」は15.1%減となるなど、南東部以外の地方の住宅建設はおおむね低調に推移している。


2028年五輪、ブリスベン誘致の動き
QLD州南東部の市長らが構想

オーストラリアで3度目のオリンピック開催を目指す動きが出てきた。ブリスベンのグライム・クァーク市長をはじめとするQLD州南東部の首長らが3月6日、2028年ブリスベン五輪の実現可能性調査を実施する方針を明らかにした。19年までに五輪開催予定都市として名乗り出るかどうかを決めるという。同日付の公共放送ABC(電子版)が伝えた。

ただ、実現可能性調査に関する正式な書類はまだ取り交わしていない。予算も全く付いておらず、構想は白紙の段階だ。クァーク市長は「長い道のりの最初の第一歩だ」と述べた。

オーストラリアでは1956年にメルボルンで、2000年にシドニーでそれぞれ五輪が開催された。ブリスベンは1992年五輪に名乗り出たことがあるが、86年の投票でバルセロナとパリに敗れて3位に終わった。


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