2018年5月 ニュース/総合

高層マンションの建設ラッシュが続くシドニー南郊ウォーライ・クリーク
高層マンションの建設ラッシュが続くシドニー南郊ウォーライ・クリーク

住宅ブームに一服感も底堅さ

シドニーの下落幅は縮小傾向

豪大都市圏を中心とした不動産高騰が、ここにきて沈静化の兆しを見せている。不動産情報大手コアロジックによると、全国平均の住宅価格指数は2017年9月のピークを境に、下落に転じた。ただ、最大都市シドニーでは下落幅が縮小傾向にあり、底堅い需要を背景に市況は堅調に推移しそうだ。

コアロジックが4月3日に発表した3月のシドニーの住宅価格指数は前月比で0.3%下落した。1~3月の3カ月では前期比で1.7%、前年同月比では2.1%、それぞれ低下した。だが、前月比の下落幅は1月0.9%、2月0.6%、3月0.3%と縮小傾向が続いている。

2000年代から高騰してきたシドニーの住宅価格の中央値は、87万8,325ドル(3月)と依然として史上最高値圏内にある。住居のタイプ別では、戸建て(中央値103万3,892ドル)の指数が前月比0.5%下落したものの、集合住宅(マンション=同75万6,557ドル)の指数は前月比0.1%の上昇に転じた。

コアロジックによると、シドニーとメルボルンでは、マンション価格の上昇幅が戸建てを上回る傾向が17年中頃から際立っているという。3月のシドニーの戸建て価格は前年同月比3.8%下落した一方で、マンション価格は同1.9%上昇。同社は「シドニーとメルボルンでは、他都市と比較して、住宅購入が著しく困難になっている」と分析した。

遠のくマイホームの夢

若いうちにローンで小さなマンションを買い、収入と家族が増えるに従って広い家に買い替えていく――。そうした一般的な豪州人の資産形成のシナリオが、少なくとも大都市圏では崩壊しつつある。

シドニー中心部から南東へ車で約20分。東部郊外にある海沿いの町、マルーブラの一角にある住宅街ではこのほど、中古の戸建ての中央価格が220万ドル(地元不動産業者)を超えた。「そんなに高額の家を誰が購入できるのか?」――。高騰前に移住し、このエリアに戸建てを購入した香港人男性(56)も首をかしげる。先進国でも屈指の所得水準を誇る豪州でも、一般的な勤労者にとって、日本円で約2億円もするマイホームは現実的とは言えない。

住宅高騰の波は周辺部にも及ぶ。南部郊外の幹線道路沿いにある高層マンション建設予定地。航空機や車の騒音が大きく快適な環境とは言えないが、「2ベッドルーム:最低価格72万5,000ドルより」との看板が立つ。元々、工場や倉庫だった広い敷地が多く、高層マンションの建設ラッシュに沸いている。

周辺は中東系移民が多い庶民的な住宅街だが、新築マンション群に移り住む新しい住民は圧倒的に中国系が多い。不動産業者の看板には中国語の宣伝文句が踊り、中華料理のレストランや食料品店が次々とオープンしている。

規制強化は「両刃の剣」

一定の移民受け入れと先進国としては高水準の出生率を背景に、豪人口は3年で約100万人のペースで増え続けている。海外や地方からの移住者がシドニーとメルボルンへ集中し、住宅価格の高騰につながった。「ファースト・ホーム・バイヤー」(初めて家を買う人)と呼ばれる若い世代を中心に、家を買えないことへの不満が高まり、その解消は近年の重要な政治課題となった。高騰の背景には外国人の不動産投資熱もあり、「中国人のせいだ」という通説も浸透している。

このため、政府はここ数年、非居住者の不動産取得規制を強化し、ローン審査基準を厳しくするなどの対策に乗り出した。過去数カ月の市況の沈静化を見る限り、一定の効果を挙げた格好だ。低所得者の住宅ローンに対する国の債務保証や、安価な住宅建設の促進などの政策も与野党で議論になっている。

ただ、豪州では元々持ち家率が高いため、供給を増やすことで有権者の資産価値を下げるような施策は採用しづらいのが現状だ。小売など他産業への波及効果が大きい住宅産業が落ち込めば、景気や雇用への悪影響も心配される。政府は大胆な住宅価格政策に踏み込めないというジレンマに陥っている。

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