第50回 NAT 希望の星

 

第50回 希望の星

文・植松久隆 Text: Taka Uematsu


ジョーイズをキャプテンマークとして引っ張る、加藤カレッティ丈(前列左から2番目)(FFA提供)

タイで開催されていたAFC・U−16選手権。決勝での南北朝鮮対決に北朝鮮が勝利、大会の全日程を終えた。この大会の上位4チームが、来年10月のU−17W杯に駒を進めるのだが、あいにく日本は準々決勝で韓国に敗れ、涙を飲んだ。対照的に、豪州U−16代表のジョーイズ(筆者注:同チームの愛称。ジョーイは仔カンガルーを意味する)は、歓喜の“W杯出場”を決めた。

ジョーイズはグループリーグで難敵日本を4‐2で下し、3戦全勝で決勝トーナメント進出。W杯決定を懸けて臨んだ準々決勝のマレーシア戦で快勝、W杯出場を確定。勢いに乗って、準決勝に臨んだはずが、この大会で優勝した北朝鮮相手に自慢の攻撃陣が不発、もつれこんだPK戦で敗退。タイトルは逃したものの、最大の宿願であるW杯出場権を獲得したことで選手の顔には安堵感が見て取れた。

そのジョーイズで、試合前のチーム・フォトに収まる背番号6の選手がどこかアジア的な顔立ちなのに気付いた読者がいるかもしれない。その選手とは、ジョー・カレッティ。一見すれば、普通のオージー・ネームも表記を変えれば「加藤カレッティ丈」。そう、彼は日本人の母を持つ日系オーストラリア人。ジョーイズではキャプテンを務め、不動のボランチとしてチームのW杯出場という大目標達成に大きく貢献した有望株だ。

来年10月、チリで行われるU−17W杯は、世界中のクラブからスカウトが駆けつけ、未来のスター選手を吟味する″ショーケース“。そこで、カレッティがアピールに成功すれば、彼の身に何が起きるのかは自明の理。早い段階で、彼は海を渡ることになる。

彼のような才能が収まりきれないのが、残念ながら、今のAリーグの現実。Aリーグにたどり着く前に、かなりの若年層の選手が欧州に流出するケースも多く見られる。すぐに欧州移籍が実現せずとも、Aリーグで1、2年経験を積むと有望株は次々と海を渡る。この現象は、国内リーグの成長には必ずしもプラスではないが、国全体、そして選手個々のキャリアを考えると、それが最善の手段であることは間違いない。要は、Aリーグのレベル・アップが急務なのだが、なかなか選手をつなぎとめられない。

カレッティは、日本にルーツを持つ選手でもあるし、「豪州から日本経由、欧州行」というキャリア・プランも考えられる。どんなキャリアが待ち構えていようとも、我らが日系の“希望の星”の今後をこれからも注視していきたい。


【うえまつの独り言】
今回で50回を迎えた当連載。日豪在籍時に鍛えられたGMのK女史、歴代のM元編集長、H前編集長ら先輩諸兄も日豪を去った。そして、先日、日豪プレスの創業者の前社主が引退。それでも、日豪プレスは進化を続ける。その流れに乗って、当連載も100回、そしてその先を目指したい。
 

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る