全豪オープン2017全記録・新シーズンの幕開けを告げる「波乱」と「栄冠」

2017年全豪オープン全記録
新シーズンの幕開けを告げる「波乱」と「栄冠」

2017年グランド・スラム(GS)の第1戦、全豪オープンがメルボルン市内のメルボルン・パークで1月16~29日まで行われた。今大会決勝は男女とも予想外の対戦となった。男子はフェデラーがナダルを破って全豪7年ぶり5回目の優勝、女子はウィリアムズ姉妹の対決となり妹のセリーナが2年ぶり7回目の優勝を達成した。期待の錦織圭は4回戦でフェデラーに惨敗したが、存在感を世界にアピールした。今年の全豪を振り返ってみよう(世界ランクは1月16日付け)。(文・写真=板屋雅博)

波乱の大会を制したフェデラー

圧倒的な存在感を見せたロジャー・フェデラー
圧倒的な存在感を見せたロジャー・フェデラー
14年全仏以来のGS決勝を戦ったラファエル・ナダル
14年全仏以来のGS決勝を戦ったラファエル・ナダル

一体誰が男子決勝の2人を予想できたであろう。数年前の4強の2人ではあるがロジャー・フェデラー(スイス、35歳)が世界17位、ラファエル・ナダル(スペイン、30歳)が9位であり、2人とも一昨年と去年と一度もGS優勝が無い。筆者も日豪プレス本年1月号では2人の頑張っている姿が見たいと酷評している。筆者だけでなく世界のマスコミも2人を過去の人と評していた。フェデラーは昨年後半、左ひざの故障で休養しており、年齢も考えると引退も間近とささやかれていた。

ナダルも14年の全仏優勝以来のGS決勝進出で、この2年間は苦闘していた。昨年の全豪では1回戦敗退、全米で4回戦進出が限度であり、世界ナンバー・ワンから転落してランクも下降の一途であった。

今大会の波乱の幕開けは、ディフェンディング・チャンピオンのノバク・ジョコビッチ(セルビア、29歳、2位)から始まったのであった。2回戦で117位イストミン(ウズベキスタン)に敗退するという大番狂わせが起きてしまった。ジョコビッチは、昨年の全英(3回戦)、全米(決勝)と優勝を逃しているが、全豪では3連覇、通算でも7回目の優勝が懸かるため今大会の大本命と見られていた。

そして、波乱の前半戦に追い打ちをかけたのは、1位のアンディ・マレー(イギリス、29歳)だ。4回戦で50位M・ズベレフ(ドイツ)に3-1で完敗してしまった。マレーは、昨年ウィンブルドン(全英)とATPツアー・ファイナルで優勝、リオ五輪では史上初の連覇を達成して、絶好調であった。

断トツの優勝候補である1位、2位を失って後半戦は全く様相が変わり、誰が優勝してもおかしくない展開となった。その中でフェデラーの存在感は他を圧倒した。3回戦で10位のベルディハ、4回戦で5位の錦織、ベスト8ではマレーを破ったM・ズベレフ、準決勝で4位スタン・ワウリンカ(スイス)、決勝では9位ナダルである。まさに神懸かった快進撃であった。真の実力者というのは今回のフェデラーのようなプレーヤーを指すのだと、世界のスポーツ・ファンは思い知らされたのではないだろうか。

フェデラーは、特に今大会では胸のすくようなバックのリターンが冴え渡った。また、錦織戦、ワウリンカ戦、決勝戦はフル・セットでの勝利であり、技術だけでなく体力・気力面でもトップに返り咲いたことを世界に証明した。

17年の全豪優勝で、フェデラーのGS優勝は12年全英以来4年半ぶり通算18回目となり、前人未到の自己記録を更新した。

一方でGS優勝回数14回を誇る2位のナダルも、今大会の活躍ぶりは負けてはいない。3回戦では24位A・ズベレフ(ドイツ)をフル・セットで撃破。4回戦では9位モンフィス(フランス)、ベスト8では3位ラオニッチ(カナダ)、準決勝では15位ディミトロフ(ブルガリア)を破って決勝へ進出してきた。

この2人による全豪決勝戦での激突は09年以来のことであり、GS決勝での戦いも9回目、ナダルの6勝、フェデラーの3勝となった。これまで技巧派のフェデラーはナダルの爆発力に押し切られることが多かったが、今回はフェデラーの気力が勝った。

決勝戦は世界が注目する戦いとなり、予想通り試合の行方はファイナル・セットまでもつれこんだ。このまま戦いが終わらないで欲しい、2人に優勝杯を授与したいと望む世界のファンは多かったはずである。

錦織、4回戦で惜敗

錦織は4回戦でフェデラーに惜敗
錦織は4回戦でフェデラーに惜敗

期待の錦織だが、全豪前哨戦のブリスベン国際で準優勝を飾り好調を維持したままメルボルンに入った。ジャパン・オープンで臀部の痛みのために2回戦の試合途中に棄権している。ブリスベンでも臀部の痛みを覚えたというが、ほぼ完全に復調して全豪に挑んだ。

大会初日の1回戦は45位クズネツォフに苦戦してフル・セットになったが、なんとか振り切った。2回戦は72位シャーディを、3回戦は121位ラッコを共にストレートで完勝して4回戦に進出した。体力も温存し、万全の態勢でフェデラー戦に挑んだ。5位の錦織と17位のフェデラーでは普通は5位が優位だが、フェデラーは3回戦で10位ベルディハをストレートで破って調子が上がっていたため、誰もが両者の実力は五分と感じていた。第1セットは苦戦の末、タイ・ブレークで錦織が先取。第2、第3セットをフェデラーに取られて苦しい展開だったが、第4セットを気力で奪回してファイナル・セットへ持ち込んだ。

しかし、ここから明らかにフェデラーのギアが上がり、早いタイミングで仕掛けてきた。強烈なバック・ハンドも決まりだしたことで、あっけなく勝負の女神はフェデラーに微笑んだ。

錦織はフェデラーとは7回目の対戦。過去の対戦成績は錦織の2勝4敗で、GSでは初の対戦であった。錦織がフェデラーを破っていれば、ナダルはリオ五輪で破っており、錦織の優勝のチャンスは十分にあったと思われるだけに残念だが、やはりフェデラーのすばらしさが上回っていたと素直に認めざるを得ない。

完全復活を果たしたフェデラーだが、マレーやジョコビッチも必勝を期しており、全仏、全英と厳しい戦いが予想される。全豪の結果、フェデラーが10位、ナダルが6位とトップテンに入り、4強復活でまたテニスの上位陣の戦いがホットになってきた。

波乱の幕開けとなったジョコビッチの敗退
波乱の幕開けとなったジョコビッチの敗退
4回戦でまさかの敗北を喫した、アンディー・マレー
4回戦でまさかの敗北を喫した、アンディー・マレー

セリーナ、姉妹対決制し全豪7回目優勝

姉妹対決を制し優勝したセリーナ・ウィリアムズ
姉妹対決を制し優勝したセリーナ・ウィリアムズ

女子はセリーナ・ウィリアムズ(アメリカ、35歳)が、全試合1セットも落とさない完全勝利で全豪は2年ぶり7回目の優勝を勝ち取った。GSでは23回目の優勝となり、シュテフィ・グラフ(ドイツ)を抜いて単独トップに立ち、GS最年長優勝記録も更新した。

毎年、予想通りの結果とならない全豪女子だが、1位アンジェリーク・ケルバー(ドイツ、28歳)は4回戦で敗退した。3位アグニエシュカ・ラドワンスカ(ポーランド、27歳)は2回戦敗退、4位シモーナ・ハレプ(ルーマニア、25歳)は1回戦敗退と上位陣が前半で次々と敗退していった。6位カロリーナ・プリスコバ(チェコ、24歳)と7位ガルビン・ムグルサ(23歳、スペイン)はベスト8でそれぞれバンデウェイ(35位、アメリカ)、ルチッチ(79位、クロアチア)に敗れた。ビーナス(アメリカ、16位、36歳)は、くじ運良くというか、上位陣が次々に敗退したために、上位陣とは1度も対戦せずに決勝まで勝ち上がってきた。

セリーナもトップテンの選手ではベスト8でヨハンナ・コンタ(10位、イギリス)と対戦したのみで比較的楽な大会であった。GSで決勝での姉妹対決は9回でセリーナの7勝、ビーナス2勝、全豪ではセリーナの2勝である。

日本人女子ダブルスで史上初の快挙

日本男子では西岡良仁(21歳、100位)が本戦出場して予選から勝ち上がったボルトを破って2回戦に進出したが、実力者の13位バウティスタに敗退した。添田豪(32歳、126位)は予選3戦を突破して本戦出場したが、1回戦敗退。杉田祐一(28歳、112位)、ダニエル太郎(23歳、127位)、伊藤竜馬(28歳、171位)、守屋宏紀(26歳、173位)、吉備雄也(30歳、229位)、サンティラン晶(19歳、211位)、内山靖崇(24歳、240位)は予選突破できなかった。

女子では土井美咲(25歳、40位)、奈良くるみ(24歳、78位)、日比野菜緒(22歳、9位)、尾﨑里紗(22歳、93位)が本戦出場したがいずれも初戦敗退した。穂積絵莉(22歳、217位)は予選3戦を勝ち上がって本戦へ出場したが、初戦で敗退した。

大坂なおみは持ち味出せず2回戦敗退
大坂なおみは持ち味出せず2回戦敗退

期待の大坂なおみ(19歳、47位)は、2回戦でトップ・テンのコンタと激突したが敗退した。大坂は手首の故障が回復せず、セリーナをしのぐといわれる高速サーブや強烈なストロークが全く出せず、持ち味を出すことができなかった。

予選では、澤柳璃子(22歳、203位)、森田あゆみ(26歳、)青山修子(29歳、221位)、加藤未唯(22歳、186位)、桑田寛子(26歳、195位)が奮闘したが本戦進出はできなかった。

女子ダブルスでは、加藤未唯・穂積絵莉組が快進撃を演じた。1回戦をタイ・ブレーク連続でしのいで波に乗ると、3回戦では第4シード組を撃破。ベスト8の対戦相手は、シングルス・ベスト4に残っているバローニとペトコビッチのシングルス世界上位選手だったが、なんとストレート勝ち。加藤、穂積はシングルス世界ランク200位前後である。準決勝では第2シード組に敗退したが、22歳ペアに拍手喝采である。日本人ペアの全豪のベスト4進出は史上初めての快挙であった。

オージー選手、結果振るわず

地元オーストラリアの選手は、男子ではニック・キリオス(21歳、13位)がオージーの期待を集めたが、2回戦でベテランのセッピ(イタリア)にあっさり敗退。バーナード・トミック(24歳、26位)も3回戦で敗退した。ジョーダン・トンプソン(22歳、79位)など9人が本戦に出場したが、トミック以外は2回戦までで全員姿を消した。

女子選手では、6選手が本戦に出場したが、3人が1回戦敗退した。11年全米で優勝したサマンサ・ストーサー(31歳、27位)は1回戦で敗退。ダリア・ガブリロワ(22歳、25位)に期待が集まったが、4回戦で6位プリスコバに敗退した。アシュレイ・バーティ(20歳、223位)が3回戦敗退、ジェイミー・フォーリスが2回戦敗退であった。

車いす部門、上地が全豪初優勝

上地結衣(22歳、車いす2位)が全豪初優勝を飾った。決勝では1位のイエスカ・グリフィユン(オランダ)を2-1で下した。第1セットをタイ・ブレークで惜しくも落としたが、第2セットには気持ちを切り替えて6-3で奪取。第3セットは先にブレークされたが、5ゲームを連取して待望の優勝杯を勝ち取った。14年の全仏、全米に続く3度目のGSシングルス優勝である。ダブルスでは上池はD・グルート(オランダ)と組んだが決勝で敗れて、全豪4連覇はならなかった。国枝慎吾はけがの回復が遅れて不参加となった。

日本人選手は、男女シングルス・ダブルス、車いすの予選本戦を通じて22人が参加。健闘した全選手に拍手を送りたい。

今後、全豪観戦がより身近に

また今回の全豪の結果以外では、カンタス航空が昨年12月より成田・メルボルン間の直行便を就航させたことは、日本のテニス・ファンにとってうれしいニュースとなった。近年、日本からオーストラリアへの渡航者や、オーストラリアから日本への渡航者が増加していることが背景にある。今後も成田・メルボルン間の就航が継続すれば、来年以降の全豪への日本人観客増加に結びついていくと見られる。


文・写真=イタさん(板屋雅博)
日豪プレスのジャーナリスト、フォトグラファー、駐日代表
東京の神田神保町で叶屋不動産(http://kano-ya.biz/)を経営

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る