なりすましやサイバー攻撃による被害をカバーするビジネス向けの保険とは?

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保険

Q

最近、関連会社でなりすましメールによる被害に遭いそうになり、際どいところで難を逃れ事なきを得ました。幸い実害はなかったですが、将来に備えてそういったケースをカバーする保険があれば詳しく教えてください。(30代男性=総務担当)

A

ビジネスを取り巻く環境は日に日に高度化し、より複雑化した犯罪被害に遭う企業の数も年々増加しています。強盗や窃盗などの従来からある犯罪行為による脅威が、高度化した犯罪行為に取って代わられているのです。更に近年ではソーシャル・エンジニアリングと呼ばれる、なりすまし行為による不正送金なども含め、サイバー関連の犯罪行為に焦点が当てられて、そういった犯罪リスクにはさまざまな要素が複雑に関連し合い、業種や事業規模に関わらず広く存在するものとして認知されるようになりました。

そうした犯罪行為によるリスクが高まり、保険業界では従来の保険で対応しきれないケースが増え、近年、より広範囲な補償を提供するクライム保険が普及してきています。典型的なクライム保険では、従業員による内部犯罪被害と外部犯罪被害の両方をカバーするように設計されているのが通常です。内部犯罪とは従業員の不正行為、横領、偽造などを指し、特に犯罪被害の原因となる行為を限定することなく広く定義付けられているのが一般的です。一方、外部犯罪被害は強盗、インターネットまたはサイバー詐欺、送金詐欺、なりすましなど、犯罪被害の原因となる事象が限定的に定義されているのが通常です。

クライム保険は引受保険会社の約款(やっかん)ごとによって補償対象に差異がありますが、その対象の主眼となるのは、前述の通り詐欺事件に起因する金銭、有価証券、在庫その他の財産の損失から会社を保護することにあります。以下に一般的なクライム保険の適用対象の一例を挙げます。

  • 承認されていない資金移動
  • 従業員が外部と共謀して資産を不正流用
  • 輸送中または施設内(倉庫)での在庫品の盗難
  • コンピューター・ハッキングとそれに関連するサイバー詐欺
  • 従業員による経費精算書詐欺
  • 小切手、銀行手形、電信送金、信用状などの金融文書の偽造

また、上記のような犯罪行為以降に発生する以下のような費用についても対象として扱うように保険手配することも可能です。

  • 損失額を確定するための費用
  • 一時的な代替設備や施設のレンタル費用、スタッフの残業などの業務中断コスト
  • データ再構成のコスト
  • 盗まれた資金から得られたであろう利子の損失
  • 保険金請求のための損失証明の調査と提出を支援する専門家の費用
  • 偽造小切手の支払いを強制する行為を防御するための費用

ただし、事案の発覚後に発生した更なる損害や、犯罪行為により直接的・間接的に発生する機会損失に伴う逸失利益損害などは保険対象とならないのが一般的です。なお、クライム保険の適用範囲となるリスクは、場合によってはサイバー保険や役員賠償責任保険でも一部カバーされる場合もありますので、目的に適した効率的な保険アレンジをすることが重要と言えます。

*オーストラリアで生活していて、不思議に思ったこと、日本と勝手が違って分からないこと、困っていることなどがありましたら、当コーナーで専門家に相談してみましょう。質問は、相談者の性別・年齢・職業を明記した上で、Eメール(npeditor@nichigo.com.au)、ファクス(02-9211-1722)、または郵送で「日豪プレス編集部・何でも相談係」までお送りください。お寄せ頂いたご相談は、紙面に掲載させて頂く場合があります。個別にご返答はいたしませんので、ご了承ください。


斉藤 大(さいとう だい)
エーオン・リスク・サービス・オーストラリア
ジャパン保険サービス部

世界最大手のリスク・コンサルタント会社豪州法人の日系専門部署で日々日系企業顧客の法人・個人保険アレンジ、事故処理などを担当

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