オーストラリアの養育費に関して – 身近な法律問題

もっと知りたい!身近な法律問題

法律は何となく難しいもの――そう思ってはいませんか?しかし法律は私たちの日常生活と切っても切り離せないもの。このコラムでは毎月、身の回りで起こるさまざまな出来事を取り上げ、弁護士が分かりやすく解説を行います。

第22回:オーストラリアの養育費に関して

結婚は人生最大の取り決めの1つですから、かなりの時間と労力を掛けて慎重に対応される方が普通であり、一般的です。

その一方、離婚に関しては感情的になりやすく、また辛い問題ですから、なかなか真正面から向き合って対処出来る方は少ないものです。

日本の協議離婚では、比較的簡単に時間を掛けることなく離婚が成立するわけですが、オーストラリアでは「養育費(Child Maintenance)」や「扶養者に対する援助請求(Spouse Maintenance)」など、日本の感覚とは考え方や実務面の取り扱いが抜本的に異なりますので注意が必要です。

特に養育費の請求については、仮に1カ月間に1,000ドルの養育費であれば、年に約1万2,000ドル、子どもが成人するまで15年間と仮定すると、18万ドル前後を受け取る権利(または支払う義務)がありますので、オーストラリアでは専門家に相談してから判断するのが一般的です。

私の経験上、ごくまれに“子どもと一緒に暮らすことが出来れば、他には何も望みません”という方もいます。そして、それは確かに立派な考え方です。とは言え、一般的には子どもが成人するまでに掛かる費用は最低20万ドルとも30万ドルとも言われており、塾や習い事、私立の学校や大学に入れる場合には、相当の支出が予想されるのも現実です。

養育費は子どもの権利(であるという認識を持ちましょう)

日本人の方で、慰謝料や財産分与と、養育費を混同されている方が多く散見されます。

しかし、養育費とは「子どもの権利」ですから、離婚に際しては親の責任として養育費は必ず請求するようにしましょう。

養育費の相場が分からなかったり、どのようにして請求していいのか判断がつかなければ、政府機関の「チャイルド・サポート・エージェンシー(Child Support Agency)」や弁護士など専門家に相談した上で判断されるのが良いでしょう。

オーストラリアの法律では、養育費の支払い不履行に対して、“子どもの人生を不当に奪う行為”として厳しい刑事処罰が設けられています。ですから、あなたが我慢したり、泣き寝入りする必要は無いのです。積極的に法律を利用するべきしょう。

また、養育費の請求権については、一定の条件が整えば、子どもと一緒に日本に帰国した上で日本国内で生活する場合であっても、オーストラリアの法律を適用して離婚相手の給与から天引きするということも可能です。

離婚は結婚と違って億劫(おっくう)になりがちなものですが、子どものためにしかるべき権利を主張することは非常に大切なことですから、養育費は必ず請求してください。


弁護士:神林佳吾(神林佳吾法律事務所代表)
1980年東京生まれ。95年渡豪、2004年クイーンズランド大学経営学部・法学部、同大学大学院司法修習課程修了後、弁護士登録。以後12年以上にわたって訴訟を中心に応対

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る