生前贈与と離婚時の財産分与で気を付ける点 – 身近な法律問題

もっと知りたい!身近な法律問題

法律は何となく難しいもの――そう思ってはいませんか?しかし法律は私たちの日常生活と切っても切り離せないもの。このコラムでは毎月、身の回りで起こるさまざまな出来事を取り上げ、弁護士が分かりやすく解説を行います。

第24回:生前贈与と離婚時の財産分与で気を付ける点

日本は長い間低金利が続いており、昨年1月には日本銀行の金融政策決定会合で、日本初となるマイナス金利の導入が決定されました。その一方で、オーストラリアは政策金利を高く保っているので、オーストラリアで生活する子どもが家を購入する際などにローンを組んで高い利子を支払っていくよりも、日本に置いてある貯金を資金に当てて欲しいと思うご両親は多いのではないでしょうか。

ここで気を付けて頂きたいのは、日本のご家族から生活費や不動産の購入資金の提供を受ける場合、日本の贈与税の対象になる可能性があることはもちろん、オーストラリアにおける離婚時の財産分与請求の際に融資なのか贈与なのかという点で揉めることがよくあるということです。

離婚時の財産分与

社会通念上の考え方として、離婚することになった場合は、親に出資して貰った分は親に返金したいと考えるのが普通かもしれませんが、「これは貰ったもの」ということで離婚相手が返金に応じない場合があります。その理由として、離婚しなければ夫婦が引き続き恩恵を受けることのできる共有財産であること、また購入資金の援助を受けていなかったのであれば、身の丈に合った生活をしてきた、などという主張が散見されます。

法的な見解としては、一般的な融資の場合には担保(抵当権の設定)や月々の返済が存在するわけですが、催促なしでその時々に応じた支払いが続いていたとすると(離婚しない場合には親に返済しないわけですから)、貰ったものと判断される可能性が高いと思います。

たとえ金銭貸借契約書を作っておいても、契約の実態がない場合には、その有効性が認められる可能性は低いと言えますので留意が必要です。

また、結婚前に貯めた預貯金は離婚時における財産分与の対象にならないと認識されている方も日本人の方には多く見受けられます。しかし、夫婦生活が長く続くほど、元々持っていた資産と結婚後の収入の区分があいまいになってきます。ですから、元々持っていた資産は自分の物、結婚後の生活費は相手の収入から賄うということはできません。それが認められるのは、結婚前や婚姻関係中にオーストラリアの家族法90条の規定に基づいて、財産分与の取り決めを事前に行っておいた場合に限られます。

誰しも離婚裁判は避けたいと思うのは普通のことですから、オーストラリアでは資産をお持ちの方、ご両親が資産家の方、再婚される方などは、結婚前や婚姻中に財産分与の取り決めをしておくのが一般的です。


弁護士:神林佳吾(神林佳吾法律事務所代表)
1980年東京生まれ。95年渡豪、2004年クイーンズランド大学経営学部・法学部、同大学大学院司法修習課程修了後、弁護士登録。以後13年以上にわたって訴訟を中心に応対

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