旦那はオージー「ゴールドコースト編」

第43回
ゴールドコースト編

【前回までのあらすじ】極寒の北海道から、オーストラリアへ家族4人で移住。オージーの夫との一風変わった日常生活を綴っている。

ゴールドコーストに初めて遊びに行ったのは、15年前のこと。サーファーズ・パラダイスはその名の通り、海にはいつも大きな波があり、サーファーにとっては天国のビーチである。しかし、北海道出身の私は泳ぎが下手だ。クロールは息が続く程度の10メートルくらいしか泳げない。平泳ぎをしていると、だんだん沈んでいく始末。唯一できる背泳ぎでは、海ではあまり役に立たないので、私は水際で全身浸かるように遊んでいた。

しかし、大きな波がやって来たと思った瞬間にさらわれた。ゴボゴボ息を吐きながら、何とか水の上に浮かんだ時には沖にいた。周りには誰もおらず、私は1人ぼっちだった。「まずい! 絶対に自力では戻れない」と感じたので、すぐに大声で手を振り、助けを求めた。幸いなことに、助けがやって来た。ホッとしたせいか「ありがとう」とばかりに彼の肩に軽くしがみついたら、2人とも水の中に沈んでしまった。

ゴボゴボ水を飲みながら、「なぜだろう」と考えた。そこで思い出したのは、かつて一世を風靡した漫画『シティー・ハンター』の冴羽獠のセリフだった。

「溺れた奴に正面から近付くな。子どもでも必死だから、水中に引きずり込まれるぞ」

私も彼に対して同じことをしているに違いないと思い、勇気を出して彼にしがみつくのをやめて、唯一できる背泳ぎをすることにした。すると、「That’s it. I’ll help you out.(それで良いんだ。僕が助けるからね)」と声を掛けてくれたのは、サーフ・ライフセイバー(水難救助員)だった。

つまり最初に来てくれた人はただの素人だったのだ。

イラスト=たこり
イラスト=たこり (Web: takori.go-jin.com)

少し水を飲んだくらいで、無事に助かった私に対して、夫は「君がいなくなったらどうやって生きていけば良いのか、途方にくれるところだったよ」と言った。私は励まそうとして「大丈夫。私が死んでも生命保険を掛けてあるから」。

夫「幾らぐらい?」
私「4,000万円」
夫「今すぐに海へ戻れ!」
私「あなたにも生命保険を掛けてあることを忘れないでね」とひどい言い争いに……。

ちなみに、助けてくれたサーフ・ライフセイバーの男性は、逆三角形の体で大変格好良く、「同じオージーでもここまで違うのだな」と思ったことは、夫には内緒である。


ポップ登美子
北海道札幌市出身。オージーの夫と2人の子どもと共にノーザン・テリトリーに在住中。本紙コラムの他にも、「地球の歩き方」海外特派員などでのフリーランス・ライターや日本語ガイド、日本語教師としても活躍中。
Web: ameblo.jp/kangaroo777
www.facebook.com/miffy777/
ameblo.jp/darwin-japanese

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