幸せワイン・ガイド@オーストラリア「マーガレット・リヴァー」

ワインの産地、ブドウ品種名などの表記は、オーストラリア連邦政府のワイン振興団体であるワインオーストラリアの基準に合わせています。

今月の銘醸地:マーガレット・リヴァー

世界で最も孤立したワイン産地

今月はオーストラリアの西側に足を伸ばしてみましょう。同国の西の銘醸地、マーガレット・リヴァーへご案内します。


西オーストラリア州マーガレット・リヴァー。オーストラリア国内のどの主要都市からも遠く離れ、州都パースから更に車で3時間ほど南西に下った場所にあるこの地は、「世界で最も孤立したワイン産地」とよく呼ばれています。現在は200以上のワイナリーがあります。

マーガレット・リヴァーの面白いところは、その生産量はオーストラリア全体のほんの3%に過ぎませんが、その中で、実はオーストラリアの高級ワインの20%以上が生産されているという点です。少ない生産量でありながらも高級ワインに集中したワイン造りが行われ、世界的にも有名なワイナリーが軒を並べているのです。

孤高の美食家天国

「世界で一番孤立したワイン産地」と最初に書きました。実際、決して行きやすいとは言い難いマーガレット・リヴァーですが、それでも遠路はるばる訪れる価値があると思わせてくれる、非常に美しいワイン産地でもあります。

鮮やかなターコイズ・ブルーのインド洋が広がり、鬱蒼と茂るユーカリの森林に囲まれるマーガレット・リヴァー。その美しい景観の中で、本格的なワインはもちろんのこと、新鮮なシーフードや鹿肉などの生鮮食品、チーズやチョコレート、クラフト・ビールなど、たくさんの「おいしい」が楽しめる、美食家や自然愛好家には天国のような場所です。少々不便な場所にあることが、むしろ非日常感をより引き立ててくれるプラスの要素となっているのかもしれませんね。

主力品種はカベルネとシャルドネ

マーガレット・リヴァーの主力品種は、赤は何といってもカベルネ・ソーヴィニョン、白はシャルドネです。他にセミヨンとソーヴィニョン・ブランのブレンド、シラーズなども上質なものがたくさん生産されていますが、カベルネ・ソーヴィニョンとシャルドネは、マーガレット・リヴァーの二本柱で、マーガレット・リヴァーの高級ワインのほとんどが、この2種と言って良いでしょう。

インド洋の恩恵を受ける気候条件

「世界で最も孤立したワイン産地」と呼ばれながらも、美しい景観を誇るマーガレット・リヴァー
「世界で最も孤立したワイン産地」と呼ばれながらも、美しい景観を誇るマーガレット・リヴァー

インド洋に三方を囲まれたマーガレット・リヴァーは、冷涼な海洋性気候に恵まれています。年中を通し気温差が少なく、安定した気候が望め、また、世界各地でブドウ農家を悩ませる、春霜のリスクが少ない、という利点もあります。

実はこの生育環境が、よくフランスの銘醸地であるボルドーと似ていると言われています。そして、ボルドーで生産される赤ワイン品種もカベルネ・ソーヴィニョンなのです。マーガレット・リヴァーは、ボルドー、カリフォルニアのナパ・ヴァレー、イタリアはトスカーナのボルゲリ、チリのマイポ・ヴァレーなどと並んで、最高級のカベルネ・ソーヴィニョンを生み出す産地として、世界的にもその地位を確立しているのです。

ワイン産地としての成り立ち

マーガレット・リヴァーは、元々は酪農が盛んな地域で、あとは波を目的に集まるサーファーでにぎわうものの、ごく静かな田舎町でした。

この静かな土地にワイン造りのポテンシャルを見出したのは、1950年代にカリフォルニア大学から西オーストラリアに調査へ訪れていた、ブドウ栽培学の権威ハリー・オルモ教授と、その後を受け継いだジョン・グラッドストーン博士という2人の科学者でした。オルモ教授は、当初はパースにより近い産地であるスワン・ヴァレーで、ブドウ栽培の気候の限界線の調査に来ていましたが、すぐ近辺によりブドウ栽培に適した地域があることに気付きます。オルモ教授がアメリカへ帰国した後にその研究を引き継いだのがグラッドストーン博士です。

そうしてこの地で本格的にワイン造りが始まったのは1967年、ちょうど50年前のことです。現在も世界的な名声を誇るヴァセ・フェリックス(Vasse Felix)、カレン(Cullen)、ケープ・メンテル(Cape Mentelle)、モスウッド(Moss Wood)、ルーウィン・エステート(Leeuwin Estate)、ヴォエイジャー・エステート(Voyager Estate)などが、マーガレット・リヴァーのパイオニア的なワイナリーとして知られている生産者たちです。

マーガレット・リヴァーのもう1つ面白い史実は、これら初期からの生産者たちの多くが、医者や実業家など、元々はワインやブドウ造りのプロではなかったという点です。ワイン造りのアマチュアであった彼らはいかにして世界に名を馳せるワイン・メーカーになったのか? その話は、また次の機会にお話ししましょう。

*今月のお薦めワイン*
西の銘醸地マーガレット・リヴァーより

好きな人を自宅に招いた時に

Vasse Felix Filius Chardonnay/$28
Web: www.vassefelix.com.au
豚や鶏、あっさりとした肉料理などと

贅沢なBYOディナーに

Cullen Cabernet Merlot 2016/$49
Web: www.cullenwines.com.au
上質なステーキ、和食のお肉などと

記念年の贈答に

Leeuwin Estate Art Series Cabernet
Sauvignon 2013/$67
Web: leeuwinestate.com.au
和牛、ラム・ローストなどと


<著者プロフィル>
フロスト結子
◎日本人としての合格者はまだ少ないワインの国際資格WSET® Diploma in Wine & Spirits及び日本酒のAdvanced Certificateを取得。日本でワイン関連商社の貿易業務に携わった後、2009年オーストラリア人の夫との結婚を機にシドニーへ移住。現在はオーストラリア国内大手オークション会社であるGraysOnlineのワイン部門でカテゴリー・スーパーバイザーとして勤務する傍ら、フリーランスとしてライティング、ワイン関連の翻訳、市場調査などで精力的に活動中。ワインのコメントは「とにかくおいしそうに書く」がモットー。Web: auswines.blog.jp

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