痔・痔瘻(じろう)の予防改善

ドクター印藤の「ここがツボ」

第45回 痔・痔瘻(じろう)の予防改善

「痔」は私たち人間にとって身近な病ですが、犬猫などの動物が痔になったという話はあまり聞きません。

人間を始め哺乳(ほにゅう)類など背骨を持った動物は「脊椎動物」と呼ばれます。これらの祖先は原始的な魚類の形態をしており、水中では浮力によって内臓が背骨から吊り下がるような形で浮いていました。この体性は、地上に上陸して両性類~爬虫(はちゅう)類~哺乳類へ進化を続ける中でもほぼ維持されてきました。しかし、直立二足歩行になると、内臓がそのままでは腹壁を飛び出し外へ垂れ下がることになるので、内臓は体壁に固定され、腸や泌尿生殖器を骨盤へ収めざるを得なくなりました。そして、腸などの骨盤内臓器は、常に上からの圧迫を受ける状態となったのです。

また、文化的要因も肛門病の悪化を促すようになりました。運動不足、長時間の座業、香辛料の乱用、そして多量の飲酒は発症の有力原因であり、それらの要因による下痢や便秘も更なる悪化を招きます。

一般に痔疾は、①肛門周辺のうっ血性膨隆(ぼうりゅう)による痔核(いぼ痔)、②便秘による無理な排便行為からの裂肛(切れ痔)、③直腸と肛門の境界付近で大腸菌感染を起こし化膿(かのう)してうみが出る痔瘻(穴痔)に分類されます。しかし、臨床的には症状進行により複合する例も珍しくありません。

東洋医学的に痔の発症は、風気が体内の陰陽精気のバランスを乱し、肝臓にとどまることで失調を成し、飲食の乱れも加わり腸内の水分代謝の異常を起こすためと考えられます。

セルフ・ケアによる指圧を行う場合は、骨盤内のリンパと血液の循環促進と慢性痛の緩和を目指します。比較的反応の強い穴には、強刺激を施しても良いです。治療は長期になることもあるので、節制による健康管理は必須です。指圧により強い反応を感じた時、わずかな変調と思うかもしれませんが、腸免疫系と関係することもあるので細部から全体を推測するのも必要です。

目に映る物だけが事実とは限らず、流布する情報のみが世を動かす力となるわけでもありません。心を澄まし、日々の変化を感じることで分かることも多いのです。

百会:頭頂部、左右の耳介先端を結ぶ線と正中線の交点よりやや後方に陥凹する所。
大腸兪:うつ伏せ位で腸骨(骨盤)上端を定め、その線と腰椎の交点より外側2横指。
下髎:尾骨先端より押し上げ、仙骨陥凹部から外方約1横指の陥凹。
長強:うつ伏せ位で尾骨の先端。
天枢:臍の左右外方約3横指。
曲骨:下腹部正中、恥骨軟骨結合部の上際。押せば良く響く。
三陰交:内踝(うちくるぶし)の上際から3横指上方。脛骨の後ろ際。
孔最:前腕前面、肘窩横紋の橈骨側より約3横指腕関節寄り。押せばよく響く。


印藤裕雄(いんどうひろお)
1991年北里研究所付属東洋医学総合研究所および間中病院東洋医学科を経て開業。2004-08年メルボルンの国立モナシュ大学日本研究センター客員研究員(伝統医療の研究および技術指導)。森ノ宮医療大学講師(東洋医学)。09年茨城県土浦市に、新しい時代ニーズに合った総合的東洋医療を目指し、東洋医療センターを開業。11年から東京での診療活動も開始。日本統合医療学会評議員、全日本鍼灸学会会員など。著書『癒しの芸術と科学‐身体・心・魂の調和』三恵社、『潜在能力の科学』など。コラム・診療についての質問は、facebook:hiroo.indo@facebook.comまたはwww.facebook.com/CentreForEasternMedicineJapanまで。

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