【新年恒例企画】回顧と展望2016/桝谷亨(為替)

新年恒例企画 回顧と展望2016
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三菱東京UFJ銀行オセアニア総支配人兼シドニー支店長 桝谷亨

三菱東京UFJ銀行
オセアニア総支配人兼シドニー支店長

桝谷亨

プロフィル◎1987年4月東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。米州投資銀行部(ニューヨーク)、ストラクチャード・ファイナンス部、国際企画部情報戦略室などを経て、2014年7月より現職。豪州在住は2度目(前回はシドニー、メルボルンに5年在)。早稲田大学商学部、シカゴ大学経営大学院(MBA)卒業。

豪ドル下落余地残るも底入れを探る局面へ

2015年、為替市場で注目された主要な材料は以下の3つ。1つ目は「米国金融政策の正常化」である。注目されて2年以上が経過したが、ようやく年内にも利上げが開始される可能性が高まり、その期待感から米ドル高地合いが継続している。そして2つ目は「中国経済」。一時の2桁成長も現在は7%割れと、実体経済の減速が浮き彫りとなり、更なる悪化懸念が台頭した。これを受け、上海株式総合指数はピークをつけた6月以降、8月までに40%以上の下落となり金融市場全体の混乱要因となった。そして最後は「資源価格」の下落である。14年末に始まった資源価格の下落は15年になっても反発の兆しはなく、資源国を中心に金融緩和が相次ぎ、結果として通貨安競争といえる状況となった。なお、日本ではアベノミクス効果から株高、円安の地合いが継続するも、ここにきて息切れ感が台頭、金融市場は次の一手待ちという状況と言えるだろう。

当地、豪州経済に対しては、特に中国経済の減速と資源価格の下落が大きな影響を及ぼしている。豪州経済は、しばらく続いた資源関連の設備投資主導から資源の生産~輸出主導のステージに移行した。資源生産高は増加している一方で、中国経済減速による資源需要減少、価格下落の当地企業に与える影響が非常に大きくなっている。そして成長率が長期トレンドを下回る中、豪中銀は再び利下げに舵を切った。以下、15年の豪ドル相場を簡単に振り返りつつ、16年の相場動向を展望する。

15年初、豪ドルの対米ドル相場は0.81ドル台後半で寄り付いた。14年来の資源価格下落に歯止めはかからず、他の資源国が相次いで金融緩和を実施し、通貨安競争につながった。豪中銀も2月には利下げに踏み切り、対米ドル相場は09年以来の80セント割れを示現、4月上旬には0.75ドル台前半をつけた。その後、5月には豪中銀が再度利下げを実施し政策金利を2%としたものの、雇用指標の改善、コアインフレ率の上昇に伴い、追加緩和を示唆しなかったことから、豪ドルは反発し対ドル相場は0.81ドル台後半まで上昇した。しかし、根強い米国の利上げ観測に加え、7月以降はギリシャ問題や中国上海株式指数の乱高下、豪州輸出の主要品目である鉄鉱石価格の下落などにより、対ドル相場は節目となる0.75ドルを割り込んだ。中国経済の悪化懸念が金融市場の主要材料となると、経済的に対中依存度の高い豪ドルは一段安となり、9月には一時0.70ドルを割りこんだ。そして、本稿執筆時点まで一度も0.75ドルに戻すことなく0.70ドル近辺で推移している。

対円相場は年初97円台で寄り付き、豪ドル主導の下落に90円割れをうかがう展開に。その後は膠着状態となるも、8月後半の中国株式急落からリスク回避の動きが強まると、一気に82円台前半を示現した。本稿執筆時点にかけても、引き続き豪ドルの上値は重く、対円相場は90円割れでの推移が続いている。

さて、16年の豪ドル相場だが、まだ下げ余地を残すものの、底入れを探る局面になると考えている。為替の主要変動要因である「金利差」の観点から言えば、米国の金融政策正常化に向けた利上げにより、豪米金利差は縮小傾向、つまり豪ドル下落余地があると解釈できる。ただ、米ドルは2014年以降、すでに主要通貨に対し25%超の上昇となっており、米ドル主導の豪ドル下落トレンドは終わりが近づいているとみている。他方、豪州景気について楽観的な見方はできない。中国経済が今後急速に悪化することがあれば、資源価格の更なる下落などを通じた豪州景気悪化のリスクがある。これに加え直近のコアインフレが、豪中銀のインフレ目標レンジの下限に近づいたこともあって、豪中銀による追加利下げ観測は根強く残りそうだ。ただし、市場は常に先読みするものであり、現在の豪ドル相場は既にある程度の利下げ期待を織り込んだ状況とも言える。よってもう一段の豪ドル下落があっても、その後はいよいよ底入れを探る展開となるだろう。対ドル相場は当面、0.65~0.78ドルのレンジに収まると予想する。対円相場については、日豪両国の金融政策及び金利水準を比較すれば、引き続き豪ドル優位は覆らない。15年は調整局面となったが、中長期的にはやはり100円方向を目指すと考えたい。(15年11月30日時点)

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