裏庭のポッサム

第56回
裏庭のポッサム

秋になり朝晩の気温が下がってきましたが、日中は暖かく外で過ごすのが気持ち良いですね。オーストラリアでの休日やイベントに欠かせないのが、バーベキューです。焼いたソーセージを食パンに乗せてソースを掛けるだけのシンプルなものが主流ですが、公園に設置されている器具を使うこともでき、たくさんの人が集まって楽しめます。

屋外で食べ物を扱っていると、野生動物たちはおいしそうな匂いにつられてその場所へやって来てしまいます。人がいる間は動物を追い払ってしまえば済みますが、人がいなくなった後に残飯を狙って来る動物もいます。

フクロギツネ(Common Brushtail Possum=ポッサム)は、木の洞(ほら)にすむ夜行性の有袋類で、オーストラリア全土に生息し、住宅街などでもよく見られる野生動物です。ポッサムの主食は、草木の葉や花、果実ですが、人間のごく近くで生活をするポッサムは、ごみ箱をあさって食べ物を探したりもします。

育児嚢で赤ちゃんを育てながら、四肢を治療中の母親ポッサム
育児嚢で赤ちゃんを育てながら、四肢を治療中の母親ポッサム

この3月に住宅の裏庭で保護されたポッサムは、四肢全ての足の裏にひどい火傷を負っていました。住人によると、自宅でバーベキュー・パーティーの後片付けをしていたら庭の木からポッサムが跳び降りて来て、まだ熱かった鉄板の上に着地してしまったとのことでした。足の裏はただれてしまって、立つこともままならないようでした。

麻酔を掛け、火傷の状態をチェックし、消毒し、マヌカ・ハニーという医療用ハチミツを塗って包帯を巻きました。このポッサムのお腹の袋(育児嚢(のう))にはまだ目も開いていない赤ちゃんがいて、お母さんの治療中も元気に動いていました。

入院して最初の1週間は毎日包帯を替える必要がありましたが、そのうち2日おきになり、後ろ足の包帯が取れ、今は右前足の治療のみとなりました。赤ちゃんもお母さんの袋の中ですくすくと育っています。あと1週間程で無事に退院することができそうです。


床次史江(とこなみ ふみえ)
クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る