2016年3月 ニュース/コミュニティー(2)

在オーストラリア日系企業活動の概要

営業利益、景況感共に改善した
2015年の日系企業


JETROシドニー事務所
調査部長 平木忠義

日本貿易振興機構(JETRO)は2015年10~11月にかけて「在アジア・オセアニア日系企業実態調査」を実施致しました。オーストラリア経済をみると、鉱業部門は引き続き価格下落の影響を受けている一方で、経済成長の基盤は鉱業から非鉱業分野に移行しつつあると言われる中で経済は底堅く推移しています。内需は低金利政策による効果が消費部門に表れていると言われていますが、住宅価格の緩和による資産効果の剥落や緩慢な賃金上昇により短期的に消費の先行き不透明感が高まりつつあります。こういったオーストラリアの経済状況の中での在豪日系企業の活動状況を本調査結果からご紹介致します。今回の調査実施に際しましてご協力頂きました企業の皆様にはこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。

2015年の営業利益見通し、景況感は改善

在豪日系企業の状況をみると15年の営業利益見込みが「黒字」となると回答した企業の割合は14年の71.5%から0.6ポイント拡大して72.1%となった一方で、「赤字」となると回答した企業の割合は14年の17.1%から5.2ポイント縮小して11.9%と大幅に改善しました。また、14年10月時点で34.7%の企業が15年の営業利益見込みは14年に比べて改善すると回答しましたが、15年10月時点では36.0%の企業が14年に比べて改善すると回答しており、過去1年間で日系企業の景況感は改善したと言えます。これまでの調査では景況感は下方に修正されることが多いのですが、15年は販売会社を中心に14年時点調査では「横ばい」「悪化」と回答した企業が15年調査時点では「改善」と上方修正したことが景況感の改善につながっています。(表1、表2参照)

表1 営業利益見込みの推移

営業利益見込みの推移

表2 調査時点ごとの営業利益見込み

調査時点ごとの営業利益見込み

なお、営業利益見込みの改善理由については69.0%の企業が「現地市場での売り上げ増加」を理由としてあげており、「人件費」が営業利益見込みの改善、悪化の理由となったと回答する企業の割合は縮小しています。

16年の営業利益見込みについては35.2%の企業が15年に比べて改善すると回答していますが、近年では先行きを不透明視する企業が増加したことから、1年先の状況に対して楽観的な見通しを示す企業の割合は縮小傾向にあります。

現地化に向けて現地人材の登用や育成と人材難

今後の事業展開の方向性については、非製造業を中心に42.7%(85社)の企業が「拡大」、47.7%(95社)が「現状維持」と回答しています。一方、今後「事業の縮小、第三国(地域)への移転・撤退」を選択した企業は輸送用機械器具関連を中心に全体の8.0%(16社)となりました。

今後の事業展開の1つとして現地化に向けた動きを見てみます。非製造業のうち卸売・小売業では現地従業員を増加させる一方で、日本人駐在員を減少させる方向にあります。製造業をみると輸送機械器具業が現地従業員、日本人駐在員を減少させて規模を縮小する動きが顕著となっています。

なお、企業の現地化への取り組みについては製造業では52.5%、非製造業では55.8%の企業が「現地化を意識した現地人材の研修・育成の強化」を選択しており、多くの企業が現地における人材育成に力を入れていることが分かります。また、「現地人材の登用(部長・課長級、店長)」を製造業が40.7%、非製造業45.7%の企業が選択していることからも、マネージメント・レベルでも現地化を進める傾向を見て取ることができます。一方で現地化にあたっての問題点では「特に問題はない」とする企業が全体の24.9%となったものの、製造業で38.0%、非製造業で31.8%の企業が「現地人材の能力や意識」を問題視しています。このように、現地化を進めたいという思いとは裏腹に候補人材の採用難といった課題も浮き彫りとなっています。(表3参照)

表3 現地従業員及び日本人駐在員の変化

現地従業員及び日本人駐在員の変化

炭鉱、鉱山権益投資は価格下落にあっても現状維持

権益を有する在豪日系企業の割合は18.8%となりこのうち、42.9%が炭鉱、25.7%が天然ガス等その他、28.6%が鉱山の権益を保持し、40.0%が住宅投資を実施しているという結果となりました。

それぞれについてみると、住宅については住宅向け投資の減速に伴い価格が緩やかになってきたことから半数以上が住宅価格は下落したと回答し、今後の事業の方向性についても現状維持、縮小が半数以上となりました。資源分野については、資源価格の下落によって権益価格が低下するも、今後1~2年の事業展開の方向性については現状維持とする企業が多く、短期的な視点よりも中長期的な視点に基づいてビジネスが行われていると考えられます。(表4参照)

表4 資源などの権益に関する現状や今後の見通し

資源などの権益に関する現状や今後の見通し(注)Xは回答企業数3未満のため秘匿。調査の対象には権益管理のために設立された駐在員事務所を含まない。

日豪EPA利用率は製造業で47.8%

15年1月に日豪EPAが発効し、日豪間での更なる貿易、投資の活性化が期待されます。在豪日系企業の対日貿易のEPA利用についてみると、日本からの輸入にEPA制度を利用していると回答した企業は全体で42.0%、業種別では製造業で47.8%、非製造業で39.1%となりました。また、利用を検討中とする企業は製造業で17.4%、非製造業で23.9%となったことからも約半数以上の企業がEPAによるメリットを受ける、もしくは今後受けることになります。(表5参照)

表5 FTA利用状況

FTA利用状況

さて、オーストラリア連邦政府は2国間や多国間の貿易協定の締結に積極的な姿勢を示しており、中国とのFTAも15年12月に発効しました。また、インドとのFTAも締結に向けて積極的に取り組んでいます。人口が10億人を超えるアジアの巨大市場とのFTAの締結は在豪日系企業に対しても多くのメリットをもたらすことが考えられます。そこで、日系企業が中国、インドのどういった市場分野に期待しているかをみると、対中国とのFTAではニュー・サウス・ウェールズ州に立地する企業は牛肉、肉製品に期待が高まる一方で、ビクトリア州に立地する企業は乳製品に期待が高まるなど地域特性が顕著に現れています。次に、インドとのFTAで期待される市場分野をみると多くの企業が穀物市場を有望視していることが分かります。(表6、表7参照)

表6 豪中FTA

豪中FTA

表7 豪印FTA

豪印FTA

オーストラリアの人口は2,300万人と少ないながらも1人当たりの可処分所得が高いため購買力の高い富裕者層が多く存在しており、国内市場はハイエンド・マーケットとして大きな魅力を放っています。また、拡大するアジア市場に対してはClean & Greenな農産品や金融、教育といったサービスの提供という新たなビジネス・チャンスも広がっています。

15年10月に大筋合意したTPPや現在交渉中のRCEP(東アジア地域包括的経済連携)は日本、オーストラリアに対して新たなビジネスの機会を提供するとともに、両国のビジネス連携を契機となることが期待されます。

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