日豪サッカー新時代(QLD)第99回「達成感」

第99回 達成感
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

シーズンの締めくくりでBPL選抜として臨んだブリスベン・ロアとの試合前にチームメイトと(本人提供)
シーズンの締めくくりでBPL選抜として臨んだブリスベン・ロアとの試合前にチームメイトと(本人提供)

本稿のほぼ100回の歴史(というほどではないが)を振り返ると、複数回取り上げた選手は少なからず存在する。しかし、ここまで短期間の内に取り上げた例は他にない。第95回「充実」で取り上げた藤本安之(29、アルバニー・クリーク)に異例の再登場を願った。

10月号で書いた州2部(豪州3部相当)の竹本佳を始めとして、今年のQLD州ローカル・サッカー・リーグは、日本人が存在感を発揮したシーズンだった。そんな中で、一番の達成感を持ってシーズンを終えたのは、州3部(豪州4部相当)のブリスベン・プレミア・リーグ(BPL)で、5年目にしてキャリアハイの活躍を見せた“ヤス”こと藤本に相違ない。その成果をトリビュートするのが今回の再登場の意図だ。

藤本とチームの好調はシーズンを通して衰えず、順当にレギュラー・シーズンを制した。満を持して臨んだ年間王者を決めるファイナルでは、グランド・ファイナル(GF)で惜敗も充実のシーズンだった。

もしや豪州で最後となるやもしれぬシーズンを藤本はこう振り返る。

「昨季からいろいろなことが変わった新しいものづくめのシーズンに、楽しみ半分、不安半分で臨んだ。結果的に来豪以来最高の成績で、公式戦の全てにフル・タイム出場と非常に有意義なシーズンになった。この歳になって、シーズン中ずっと、毎週末の試合を楽しみに過ごせたのは大きい」

更に、足掛け5年の豪州でのプレーを総括するかのように「5年間で多くの監督の下でプレーし、毎年、違う戦術に対応して試合に出続けた経験は、僕の考え方を柔軟にした。自己犠牲と自己主張の双方を追い求める良い経験を積めた。そんことを含めて、今後は自分を育ててくれたサッカーに『恩返し』をしていきたい」と語る。

自身が「第2の故郷」と言ってはばからないブリスベンを離れ、キャリアをどう進めるのかは、現時点ではまっさら。本人も「もしかしたら、まだブリスベンにいるかもしれませんし(笑)」と煙に巻く。

「(豪州は)日本しか知らない自分に新しい経験を与えてくれた。働き方、生き方を改めて考えさせられ、今まで出会ったことのないタイプの人とも知り合えた。ここでの生活を通じて人としての器が今までより少し大きくなった」

そう語る声に深い達成感が込められているのを長い付き合いの筆者は聞き逃さない。サッカーは人を育てる――。そんなことを、ヤスの5年からは感じるのだった


【うえまつのひとり言】
とうとう当連載が“白寿”を迎えた。長いようで短い8年と少しの日々。100回というのはベンチマークに過ぎないものの、今回のタイトルではないが、少なからず達成感はある。今後もニッチなフットボール情報をお届けしていきたいとの思いを新たに、次の頂(連載200回 !?)を目指そう。

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