知っておきたいフリンジ・ベネフィット税(後編)-スムーズな申告のために

BUSINESS REVIEW

会計監査や税務だけでなくコンサルティングなどのプロフェッショナル・サービスを世界で提供する4大会計事務所の1つ、EYから気になるトピックをご紹介します。

知っておきたいフリンジ・ベネフィット税(後編)-スムーズな申告のために

先月号に続き、2020年度のフリンジ・ベネフィット税(FBT)申告をスムーズかつ期限通りに進めるために留意すべき点についてご紹介します。

FBTの計算方法

FBT算出に当たり、まずは課税対象となるベネフィット額に対しグロス・アップ率を適用します。

20年FBT課税年度(2019年4月1日から2020年3月31日)のグロス・アップ率及び税率は下表の通りです。

対象額
タイプ1グロス·アップ率
GSTの仕入税額控除が可の場合
2.0802 課税対象ベネフィット
額(GST込み)
タイプ2グロス·アップ率
GSTの仕入税額控除が不可の場合
1.8868 課税対象
ベネフィット額
FBT税率 47% グロス·アップした課税対象額

フリンジ・ベネフィットには多くの種類があり、さまざまな免除規定や優遇措置、評価法・計算方法が設定されています。そのため、FBT申告を正確に行うには、FBTの課税規定を正確に理解する必要があります。理解が不十分であると、法令違反やFBTの過少払いや過剰払いといった問題につながりかねません。

FBT申告における課題

FBT規定は非常に細かく複雑で、適切なコンプライアンス対応を行うに当たりかなりの労力を要します。一般的によくみられるFBT申告の課題を以下に説明します。

少額ベネフィット免除の適用

少額ベネフィット免除(Minor Benefits Exemption)は、一度につき支給されるベネフィットが300豪ドル未満、かつ支給がまれで不規則な場合に適用することができます。この免除適用について留意すべき点は例えば、従業員が取引先と1人当たり300豪ドル未満の会食に参加したとしても(注1)、免除を適用するには会食が「まれで不規則(infrequency and irregularity)」であるという条件も満たす必要であるということです。そのため、FBT年度内に同従業員がその他の会食に何回参加したかを確認する必要があります。また、この「まれで不規則」であるかという判断には、明確なルールはありませんので各納税者による適切な判断が求められます。

(注1)少額ベネフィット免除は、事業主が実費用方式で会食費を評価している場合のみ適用可能で、50/50分割方式が使用された場合は適用されないので留意してください。

記録の保管

他の税務申告と違い、FBT申告書の作成にはさまざまなソースからデータを収集する必要があります。給与関連情報以外にも買掛金勘定やその他のデータ(例:従業員の社用車使用記録、出向契約書、請求書の詳細など)を精査し、従業員の宣誓書、雇用主の計算方法選択書が必要な場合もあります。必要書類がそろわなければ、FBT課税額が大幅に増えることもあります。またデータは、課税対象となる行為または取引の日から起算して5年間の保管義務があります。

申告期限

申告期限の短さも大きな負担となります。雇用主は、FBT年度末である3月末から2カ月未満という極めて短期間でFBT申告を完了する必要があります。20年度のFBTに関しては、20年5月21日が申告及び納付の期限です。EYのようなタックス・エージェントを利用する場合は、納付期日を20年5月28日、そして申告期日を20年6月25日まで延長することが可能となります。

データの重要性

FBT申告において、すべての基本となるのが「データ」です。申告課題のほとんどは関連のデータが効率よく管理できていれば解決できるものです。

FBTの削減

FBTの削減が可能となる分かりやすい例として従業員に支給した会食費が挙げられます。しっかりとしたデータ(場所や参加人数、従業員毎の年間の会食参加頻度など)管理を行うことで、会食費を実費用方式を使って評価することが可能となり、一般的に使われている50/50分割方式よりFBTを大幅に削減できる場合があります。

ATOによる監視強化

近年、ATOはシングル・タッチ・ペイロールを始めとしたITシステムの改善及びプロセスのデジタル化を推進しており、これによりFBT申告書内容をATOが保有する各種データと比較したり、同業他社のデータとのベンチ・マーキングを行うことで、簡単に異常値を特定することが可能となっています。この分析次第では税務調査につながることもありますので、可能な限りFBT申告書作成の基となる情報を適切に会社の記録としてまとめておく必要があります。

FBTの税務データ管理について

FBTの税務手続きを的確に管理するためのポイントをご紹介します。

◆チェック・リストの作成・レビュー

FBT申告書作成に必要な情報源のチェック・リストを作成し、全ての情報がそろっていることを確認しましょう。前年度のFBT申告データは、チェック・リストを作成する際にとても参考になります。ただし、新しいフリンジ・ベネフィットの支給や新たなFBT規定の導入などにより年度ごとに状況は変わるので、前年度の申告データだけを参照するのは避けましょう。例えば、昨年「Car Parking Benefit」が申告されていなかったからといって、適切な確認なしに今年度も申告が必要ないと結論付けることは避けましょう。

◆関連書類の保管

FBT申告書作成時に使用したデータの情報源についての詳細な記録や、FBT申告に関して重要な判断(例:少額ベネフィット免除を適用したかどうかなど)がなされた際の経緯の記録、計算方法選択書や宣誓書を保管しましょう。これにより、税務調査の際ATOへの対応を迅速に行うことが可能となり、また仮にFBT申告の担当者が退職した場合も来年度以降の申告に向けた準備を円滑に行うことが可能となります。

◆データ管理と整理のスパンを短縮

FBT関連データの収集・レビューは年度末にまとめて行うのではなく、年間を通してより短いスパンで(例:四半期ごとなど)行うことを推奨します。これにより、年度末の業務量が軽減され、また問題点の早期発見ができるため、FBTの削減につながる可能性があります。

◆タックス・エージェントの利用

FBT申告書の作成またはレビューをタックス・エージェントに委託することで、対処すべき問題や、FBT削減につながる免除措置や優遇措置が特定される可能性があります。また、FBT申告期限の延長が可能となります。

FBTロボティックスの活用によるプロセスの簡略化

EYを始めとするプロフェッショナル・サービスの提供者は、FBT申告に必要な大量の情報を瞬時に処理できるAIを駆使したロボティックスなど、次世代のテクノロジーへの投資・開発を行っています。これらのテクノロジーは、FBT申告の準備にかかる時間を大幅に短縮し、プロセスの簡略化を可能にします。例えば、記帳や買掛金勘定などのファイルから自動的にFBT申告の対象項目を選出し、即座にレポートを作成することもこれらのテクノロジーを駆使すれば可能となります。また大量のデータの中から、FBTの免除規定対象項目や優遇措置対象項目などを洗い出すことも可能となります。


EYジャパン・ビジネス・サービス 雇用関連税務・個人所得税申告 新井泰弘
EYシドニーのピープル・アドバイザリー・チームでシニア・コンサルタントを務め、日系企業の窓口を担当。豪州の税務全般と法人会計管理業務の経験があり、特に個人所得税申告や雇用関連税務の知識、経験が豊富
Tel: (02)9694-5882
Email: hiro.arai@au.ey.com

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