2015年10月 ニュース/総合

9月9日、オーストラリア軍の空爆拡大について会見するマーク・ビンスキン空軍大将(左)、ケビン・アンドリューズ国防相(中央左)、トニー・アボット首相(中央右)、ジュリー・ビショップ外相(Photo: Australian Defence Force)
9月9日、オーストラリア軍の空爆拡大について会見するマーク・ビンスキン空軍大将(左)、ケビン・アンドリューズ国防相(中央左)、トニー・アボット首相(中央右)、ジュリー・ビショップ外相(Photo: Australian Defence Force)

難民1万2,000人、新たに受け入れへ

豪軍の空爆、シリア領内にも拡大

内戦が続くシリアやイラクから欧州に大量の難民が流入している問題で、トニー・アボット首相は9月9日、シリア難民を新たに1万2,000人受け入れるとともに、「イスラム国」(IS)を名乗るイスラム過激組織へのオーストラリア軍の空爆をシリア領内にも拡大すると発表した。戦争に参加している当事国として負担を各国と共有しながら、長引く対IS戦への関与を深める。

首相は年間の難民受け入れ枠は変えない方針を示していた。しかし、野党をはじめ与党内からも受け入れを増やすべきだとの声が相次ぎ、現在の年間1万3,750人の難民受け入れ枠に追加することにした。政府内には当初、受け入れる難民をISの迫害を受けている少数派キリスト教徒に限定するべきだとの主張も出ていたが、宗教を限定せず「迫害されている少数派の子どもや女性、家族」を中心に支援する方針を明確にした。

難民受け入れに加え、祖国を追われて周辺国に滞在している難民の人道支援に4,400万ドルを追加支出する。食糧や飲料水、医療サービス、教育、緊急支援物資などの提供にあてる。

近く政府高官をジュネーブの国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に派遣し、受け入れ前の難民認定などの詳細を詰める。首相は難民受け入れについて「中東の人道的危機の解決に大きく貢献する」と指摘した。

一方、空爆のシリアへの拡大について首相は、「デーシュ(ISの別称)のイラク領内への攻撃からイラク国民を守る」とした上で「オーストラリア国内にも死のカルト集団であるデーシュの手が伸びていることは、これまでのテロ事件や未遂事件で明らかだ」と述べ、軍事行動の拡大はオーストラリアの国益を守るものであることを強調した。米国のオバマ政権からの正式な要請を受けて決断したとしている。

オーストラリアは昨年10月、米軍主導の「有志連合」によるISへの空爆に参加した。現在、戦闘攻撃機「F/A-18」6機、空中給油機1機、早期警戒管制機1機を中東に派遣し、アラブ首長国連邦の基地を拠点にイラク領内に限定した空爆を行っている。これまではシリア領内への越境には慎重だったが、空爆開始から11カ月を経て方針を転換した。


安倍談話「歓迎する」−アボット首相
戦後の日豪の和解と友好強調

トニー・アボット首相は8月14日、日本の安倍晋三首相が同日明らかにした「戦後70年談話」について声明を発表した。アボット首相は談話を「歓迎する」と述べ、「オーストラリアと日本が力強い友好を発展させてきたのは、両国の国民と指導者が過去の暗い影が未来に影響を与えないよう務めたからだ」との認識を示した。

また、アボット首相は、日本が世界の平和と安定に貢献してきたとした上で「安倍首相の言葉は、より良い将来のための日本の取り組みを他国が受け入れ、対日関係を発展させることをより容易にするだろう」として、日本と中韓両国の関係改善に期待をにじませた。

なお、アボット首相は翌15日、「太平洋戦争勝利70周年」に関する声明を発表した。アボット首相は第2次世界大戦を戦った豪州兵に敬意を表し、「彼らが自由で民主的なオーストラリアを守り、現在の繁栄を導いてくれた」と謝意を示した。

オーストラリアは連合軍の一員として第2次世界大戦に参戦、太平洋戦線で日本と激しい戦闘を繰り広げた。豪戦争記念館によると、太平洋戦線と欧州戦線の合計で3万9,000人が戦死。3万人以上が戦争捕虜になった。その約3分の2は開戦直後の1942年に日本軍が進軍した東南アジアで捕虜になったという。日本軍に捕らえられた豪州兵の「36%が収容中に死亡した」(同記念館)とされる。


WA州ピルバラ地区にある豪英系資源大手リオ・ティントの鉄鉱石鉱山。資源大手各社の決算は軒並み大幅な減益となった(Photo: Rio Tinto)
WA州ピルバラ地区にある豪英系資源大手リオ・ティントの鉄鉱石鉱山。資源大手各社の決算は軒並み大幅な減益となった(Photo: Rio Tinto)

中国ショック、豪株価も乱高下

豪ドルは対米ドルで6年ぶりの安値

上海株式市場を震源とする「チャイナ・ショック」が、オーストラリアにも波及している。中国の株価が急落した8月24日、オーストラリア証券取引所(ASX)の主要株価指数「S&P/ASX200」の終値は5001.28と年初来最安値を更新。前日比で4.1%下落し、4年ぶりの下げ幅を記録した。落ち込み幅は、年初比で8.0%、年初来最高値を付けた4月27日比で16.4%に達した。

特に中国依存度が高い豪鉄鉱石大手フォーテスキュー・メタルズは14.9%急落。資源世界最大手の豪英系BHPビリトンも5.0%、同業の豪英系リオ・ティントも5.2%、それぞれ大幅に下落した。

同指数は週末までに急落前の水準を回復したものの、8月31日の週に入ると再び急落した。チャイナ・ショックから10営業日目の9月4日には一時5,000の大台を割り込むなど、株価の乱高下が収まる気配はない。

 

1米ドル=50豪セントの可能性も指摘

豪ドル相場も落ち込んでいる。中国経済の失速で資源需要がさらに縮小し、オーストラリア最大の輸出商品である鉄鉱石など商品価格のさらなる下落が予想されるからだ。豪ドルの対米ドル・レートは9月4日、1米ドル=70豪セントを割り込んで69豪セント台前半まで売られ、2009年以来6年ぶりの安値を記録した。

豪ドルはこのところ資源価格に連動する形で値を下げており、早かれ遅かれ70豪セント割れは想定内だったが、今回の世界株安連鎖で豪ドル安が予想以上のペースで進行した格好だ。一部メディアは、来年末までに1米ドル=50豪セントまで豪ドル安が進むとの観測も伝えている。

 

24年連続の経済成長もついに息切れか!?

今回の株価急落前から既に主なオーストラリアの資源企業の業績は悪化している。中国経済の減速と商品価格の下落を受けて、8月末までに出そろった6月期決算の純利益は、BHPビリトンが86%減(中間期)、リオが82%減(同)、フォーテスキューが88%減(通期)と軒並み大幅な減益となった。原油安を背景に、天然ガス・石油大手サントスも82%の減益(中間期)と不振だった。

オーストラリアは1991年から現在まで24年間、96四半期連続で景気後退(2期連続のマイナス成長)を経験していない。しかし、今回のチャイナ・ショックの影響次第では、息の長い経済成長をけん引してきた資源部門がいよいよ苦境に陥りかねない。シドニーをはじめ大都市圏の住宅価格を吊り上げてきた中国人の投資熱が冷え込む可能性もある。市場関係者の中には、四半世紀ぶりの景気後退入りは避けられないとの見方も浮上してきている。

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