2014年7月 ニュース/総合


緊迫するイラク情勢への関与を示唆したトニー・アボット首相

イラク情勢、見過ごせない

訪米中のアボット首相が表明

アボット首相は6月13日(オーストラリア時間)、イスラム教スンニ派の過激派勢力の進撃でにわかに緊迫するイラク情勢に、オーストラリアが再び関与する可能性があることを示唆した。ワシントンでオバマ米大統領との首脳会談後に明らかにした。

公共放送ABCによると、オバマ大統領は「イラクは米国と国際社会からのさらなる支援が必要になるだろう」と述べ、あらゆる選択肢を排除しない考えを示した。アボット首相も「フセイン元大統領からイラクを開放した我々は、イラクが(イスラム原理主義勢力の)タリバンのような連中やもっと悪い勢力の手に落ちるのを見過ごすわけにはいかない」と語り、この問題で米国に協力する用意があることを示唆した。

2011年に公約のイラク撤退を実現したオバマ政権は6月15日の時点で、地上軍の再投入を否定しているものの、空母などをペルシャ湾に派遣するなど緊迫の度合いは深まっている。米軍が軍事行動に踏み切れば、オーストラリアも再び兵を送るのか。今後の展開次第では、アボット政権は支持率が低下する中で難しい判断を迫られることにもなりそうだ。

オーストラリア国防軍は03年3月、米・英とともにイラクに侵攻した。09年の撤退までに延べ2万人以上(全豪退役軍人会)の兵力を投入した。ただ、イラクでの豪州兵の戦死者は2人(国防省)とアフガニスタンと比較して小規模にとどまっている。

なお、首脳会談ではこのほか豪米の国防協力強化で合意、ウクライナ問題などの国際情勢や環太平洋連携協定(TPP)、温室ガス削減策などについても話し合った。海洋進出を加速する中国に対しては、オバマ大統領が「国際法と規範の順守」を求めた。


与党支持率が急落、予算案の緊縮策が不評

アボット政権の支持率が急激に落ち込んでいる。主な世論調査で、5月13日の予算案発表直後に野党労働党の支持率が与党保守連合(自由党、国民党)を逆転した。予算案で実質的な増税策を含む緊縮策を打ち出したことが国民の反発を買った格好だ。


民間の調査会社ニューズポールが5月16〜18日に実施した最新の世論調査によると、各党支持率は保守連合が36%と前回調査(5月2〜4日実施)比で2ポイント下落、労働党は38%と同2ポイント上昇した。左派の環境保護政党グリーンズ(緑の党)は11%と3ポイント下落、「そのほか」は15%(1ポイント下落)だった。党首別の支持率に相当する「どちらの党首が首相としてふさわしいか」の設問では、アボット氏が34%(6ポイント下落)、労働党党首のショーテン氏44%(6ポイント上昇)となり、ショーテン氏が初めてアボット氏を上回った。

また、調査会社ニールセンなどが予算案発表直後に実施したほかの主な調査でも、各党支持率で労働党が保守連合を逆転するなどニューズポールとほぼ同じ結果が出ている。

一方、ニューズポールの調査で「予算案は豪州経済にとって良い、悪いか?」を聞いた設問では、39%の回答者が「良い」(「非常に良い」と「まあまあ良い」の合計)と答えた。これに対して、48%が「悪い」(「非常に悪い」と「まあまあ悪い」の合計)と回答し、同調査結果がある1998年以来最大となった。

アボット政権は、社会福祉や教育・医療の縮小、一般医(GP)の診療費有料化(1回7ドル)、富裕層への期間限定の所得増税(年収18万ドルを超える所得の2%を3年間徴収)、燃料税の実質引き上げといった緊縮策を発表した。しかし、アボット首相は労働党から政権を奪回した昨年9月の選挙前に「増税や新税導入はしない」と言明していた。このため、予算案の施策は「公約違反」との批判が強まっている。


冬作物、1割強減産の予想
エルニーニョ確率7割、渇水の恐れ

2014/15年度の小麦などの冬作物生産量が、落ち込む懸念が浮上してきた。オーストラリア東部に水不足をもたらすことが多いエルニーニョ現象が、発生する可能性が高まっているためだ。もし大規模な干ばつにつながれば、世界の食糧供給や価格にも影響を与えかねないだけに注視する必要がある。

政府系シンクタンクのオーストラリア農業資源経済局(ABARES)は6月11日、冬に作付けして夏に収穫する14/15年度産冬作物の作柄見通しを発表。冬作物全体の作付面積は2,260万ヘクタールと前年度比1%増となるものの、生産量は3,880万トンと12%減少すると予想した。冬作物のうち生産量が最大で輸出量の多い小麦は9%減の2,460万トン、大麦は22%減の750万トン、カノーラ(菜種)は8%減の350万トンなどとなっている。

減産予想の根拠は、太平洋東部赤道付近の海面水温が平年より高くなるエルニーニョ現象。同現象が起こると、オーストラリア東部一帯は少雨と高温で干ばつに見舞われる傾向が強い。豪気象局(BOM)がエルニーニョ現象が今年は70%の高い確率で発生すると予報していることから、今年3月時点の作柄見通しからさらに下方修正した。


ABARESは「エルニーニョが穀物生産に与える影響は一様ではなく、正確な予想は難しい」としている。ただ、ABARESの統計とBOMの観測データを重ね合わせると、エルニーニョ現象とオーストラリア産小麦の不作には一定の相関性があることが分かる。90/91年度以降にエルニーニョ現象が観測された7つの年度のうち、4つの年度で小麦生産量が大幅に落ち込んでいる(グラフ参照)。平年の小麦生産量はおおむね2,000万〜2,500万トンで推移しているが、これらの4シーズンはいずれも1,000万トン前後とほぼ半減した。

中でも06/07年度から07/08年度にかけては、2年連続で史上最大規模と言われた深刻な干ばつが発生し、オーストラリアの穀倉地帯は大打撃を受けた。有数の小麦輸出国であるオーストラリアの不作が引き金となり、08年の世界的な穀物高騰につながったとの説も有力だ。食糧危機に見舞われた途上国では当時、デモや暴動が多発した。

今年もエルニーニョで小麦生産が現時点の予想を大幅に下回るような事態になれば、影響が懸念される。特にオーストラリア産小麦は日本でうどんなどの麺の原料としてシェアが高いため、日本の食卓に影響が広がる可能性も否定できない。

 

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