日豪サッカー新時代(QLD)第86回「感慨」

日豪サッカー新時代

第86回 感慨
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

試合後に、いつにもなく渋い表情で茫然自失の態のアンジ・ポスタコグルー豪代表監督(筆者撮影)
試合後に、いつにもなく渋い表情で茫然自失の態のアンジ・ポスタコグルー豪代表監督(筆者撮影)

8月31日、W杯最終予選の大一番・日豪戦が開催された埼玉スタジアム。そのメディア席から満員の場内を見まわし、ある種の感慨に浸った。

ドイツW杯以降の日豪戦を第三国で行われるもの以外は、全て現地取材することを自らに課してきた。今回もその例外ではない。日豪戦は、豪州がアジアのサッカーに“黒船”よろしく転籍してきたことで幕を開けた「日豪サッカー新時代」の進展を確認する大事な「定点観測」の場であり、何があっても外せない。

今回ほどガチンコ勝負の日豪戦も最後かもしれない――と、いつになく真剣に見守った90分。この試合のスタジアムの内外では、日本と豪州が、あの“カイザースラウテルンの惨劇”を乗り越えて11年の年月を掛け積み上げてきたライバル関係の成熟度合いが見て取れた。

W杯最終予選で3回連続同組に入ったことで、都合、最終予選の真剣勝負で6回相まみえた両国。その最終予選での通算成績は、1勝4分1敗と完全に五分の星。ということは、今回の勝利(2-0)が日本にとってW杯最終予選での対豪州の初勝利ということになる。

解任危機も囁かれた日本代表のヴァヒド・ハリルホジッチ監督は、アジア王者の豪州をホームで破って獲得したW杯切符に歓喜の涙を流した。逆に、このW杯最終予選で初めて土が付き、しかも、それがなすすべのない完敗だった豪州代表のアンジ・ポスタコグルー監督は、試合後は茫然自失。選手のミックス・ゾーンでの対応も好対照。サッカルーズの面々には笑顔はなく、口を衝いて出るのはため息交じりの反省の弁ばかり。英語が堪能な吉田麻也は豪メディアに「今夜はシャンパンで乾杯」と口も滑らかだった。

この試合に、酷暑のアウェーで強敵相手に最終戦までもつれこむのを嫌い「負けられない」との思いで臨んだ日本。最終戦の相手が最下位のタイ、しかもホームで「負けなければ何とかなる」と割り切りがあった豪州。そんな両国のこの試合への思いの差がピッチ上の結果で現れたに違いない。この日豪戦の後、豪州はタイに辛勝するも、日本がサウジアラビアに敗れたことで「他力本願」は成就せずにプレー・オフに回った。

いずれにしても、今回の取材行、日豪のサッカーでの良好なライバル関係が高まっているのを身をもって感じる非常に有意義なものとなった。あとは、日豪両国が共にロシアに行ければ良いのだが……。


【うえまつの独り言】
最終予選グループBの3位となり、グループA3位のシリアとホーム&アウェーのプレー・オフを行うことになったサッカルーズ。10月5、10日の試合を勝ち抜けば、11月の北中米カリブ海予選の4位チームとのプレー・オフが待つ。楽ではない。しかし、勝つしかない。頑張れ、サッカルーズ。

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