法律相談室/ブッシュ・ファイアなどの自然災害と法的義務①

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日豪プレス 法律相談室

第29回 ブッシュ・ファイアなどの自然災害と法的義務①

日本が厳冬の最中、記録的な暑さの今夏のオーストラリアは、常にブッシュ・ファイア(山火事)の脅威にさらされています。オーストラリアは世界で最も山火事が起きやすい国の1つと言われ、2013年のNASA衛星データによると、週平均4,595件ものブッシュ・ファイアが発生したそうです。草が少し燃えた程度から大規模なものまで、そのタイプはさまざまです。落雷などによる自然発火もあれば、残念なことに放火が原因のブッシュ・ファイアもあります。

ブッシュ・ファイア、洪水、地震などの自然災害は、住宅を破壊したり、最悪の場合、人命まで奪うこともあり、人びとの心に深い傷を残します。例え人命への影響は無かったとしても、やっとの思いで手に入れたマイ・ホームを失った人の心のダメージは計り知れません。

では、土地の所有者や管理機関に、ブッシュ・ファイアの防止策や取り締まりに関する法的責任はあるのでしょうか?予測・統制が難しい自然災害防止のため、法律ではどんなことを規定しているのでしょう。

火災を広めてしまった人の責任問題には昨今、通常の過失責任の考え方が当てはめられます。そのため、火災で経済的被害を負った原告(被害者)は、火災を起こした、あるいは延焼させてしまった相手(被告)が法的義務である防災や火の管理としての適正な措置を講じなかった結果、原告がダメージを被ったことを証明する必要があります。問題の核心となるのは「措置が適正であったかどうか」。状況によっても異なりますが、実行のための労力、行為の難度、対応軽減の不都合度合い、被告が抱える相反義務などが考慮されます。土地所有者による放火が原因の火災でなければ、消火設備の設置について(例:農地に消防車を準備しておく)まで土地の所有者に期待しないのは相応であることから、裁判所は、所有者に火災の責任は無いと判断する可能性が高いでしょう。

そうしたことから、オーストラリアでは過去20年間、土地所有者に対する火災の訴訟はありません。しかし電力供給や火災・土地管理を行う機関に対する訴訟は何件も起こっており、こうした機関には火災を防ぎ抑制する法的義務があるということになります。農地所有者と違い、電力供給機関などは特に防火・消火設備を整えることになっていますので、防火・消火のための対策を講じる法的義務があると言えます。

実際のところ、十分な防災設備の設置は簡単ではありません。ブッシュ・ファイア発生後の調査レポートでは、火災時の地上通信はかなり混乱し、火災、天候、地形の影響による設備の損傷が大きかったことが繰り返し述べられています。自然の力は計り知れず、そのコントロールは非常に難しいため、防災の難度(ある状況ではとてつもなく困難)と現実(実際にできること)とのバランスが重要でしょう。


ミッチェル・クラーク
MBA法律事務所共同経営者。QUT法学部1989年卒。豪州弁護士として24年以上の経験を持つ。QLD州法律協会認定の賠償請求関連法スペシャリスト。

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