法律相談室/不当な低賃金支払い

知ってると知らないでは大違い!
日豪プレス 法律相談室

第39回 不当な低賃金支払い

2017年11月オーストラリア連邦裁判所において、日本食系ファストフード店で働くスタッフへの不当な低賃金支払いに関わった会計事務所に、罰金刑が言い渡されました。これは、労使関係を取り締まる国の監視機関にとって意味のある勝訴であると同時に、ワーキング・ホリデーを含めたオーストラリアの労働者搾取に加担した会計士にも法的責任が及ぶことを世間に示した判決でもありました。

連邦裁判所は、会計事務所「Ezy Accounting 123」のクライアントで日本食系ファストフード店を経営する「Blue Impression」社によるスタッフへの不当な低賃金支払いに関わったとして、同会計事務所に5万3,880豪ドルの罰金刑を科しました。それ以前に、メルボルン店で働いていたワーキング・ホリデー・スタッフ2人への不当な低賃金の支払いを認めた同ファストフード店経営会社には、罰金11万5,706豪ドルが言い渡されています。

不当な低賃金で雇われていたのは会計事務所のスタッフではなく、会計事務所のクライアントである日本食系ファストフード店のスタッフであったことから、判決は、会計士を一種の“従犯(共犯)”としました。理由として会計士は給与計算サービスを同ファストフード店経営会社に提供しており、法定賃金以下の時給であることを知りながら、給与支払いを実行していたためです。

オーストラリア連邦政府の直轄機関であるフェア・ワーク・オンブズマンは、雇用条件、特に最低給与の順守や各種休暇の付与が適切であるか、厳しく取り締まっています。同機関が扱っているのは、おおむね雇用主と被雇用者間の問題ですが、今回の判決で労働者の権利が直接の雇用主を超えたところにまで及んだことで、今後への影響力は大きいでしょう。

問題の会計士は裁判の中で、不当な低賃金を受け取っていたのは会計事務所のスタッフではないと反論しました。労使関係の法律は通常、雇用主(ボス)と被雇用者(スタッフ)の関係を定めています。しかし今回の画期的判決において、判事は「クライアントから給与計算サービスを任されていた同会計事務所は、自所の事業利益よりも法の順守を優先すべきである」と述べました。更に判事は、弱い立場に置かれていた2人のスタッフが“搾取の被害者”になってしまったと指摘しました。

直接の雇用主を超えて、スタッフへの不当な低賃金支払いを助けた外部のアドバイザー(会計士)にまで労働者搾取に関する責任が及んだ今回の判決は“補助的責任法”として知られています。もしあなたが、搾取の現状を知りながらそれに関わった場合、多額の罰金刑が科せられる可能性があることが、今回の判決によって明確になりました。会計士は、自身が違法行為を犯してしまうことのないよう、クライアントに法規をきちんと説明し、理解してもらう義務があります。


ミッチェル・クラーク
MBA法律事務所共同経営者。QUT法学部1989年卒。豪州弁護士として25年以上の経験を持つ。QLD州法律協会認定の賠償請求関連法スペシャリスト。

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る