法律相談室/“ギグ・ワーカー”が労災に遭ってしまったら?

知ってると知らないでは大違い!
日豪プレス 法律相談室

第41回 “ギグ・ワーカー”が労災に遭ってしまったら?

欧米諸国ではウーバー、デリバルーなど、オンライン・サービスの人気が高まっておりますが、オーストラリアも例外ではありません。そして、それに伴った雇用状況の変化も起きています。今、人気のオンライン・サービスを見る限り、オーストラリア人は“ギグ・コノミー(非正規雇用が多い労働市場)”を歓迎しているようですが、こうしたサービスは消費者・働き手に恩恵をもたらす一方で、リスクもあります。

アーンスト・アンド・ヤング会計事務所が行った調査によると、“ギグ・ワーカー(オンライン上で仕事を受注するフリーランサーなど)”の数はこの10年で66%も増え、2020年までには労働者の5人に1人が、非正規雇用に関わることも予測されています。

ギグ・ワークの目に見えないコスト

ギグ・ワーカーとして働くことは自由度や柔軟性の点で優れており、副業にすれば、お小遣い稼ぎにもなるので良い面もありますが、標準に満たない労働条件で働いていることが懸念されています。オーストラリアの正規労働者は最低基本時給、休暇手当や永年勤続手当など最低限の雇用環境で守られていますが、ギグ・ワーカーにはありません。加えて、病気休暇、有給休暇、解雇に関する事前通告、スーパー・アニュエーション(以下:スーパー)もありません。なぜならギグ・ワーカーは、個人事業主として仕事を請け負うからです。

その結果、オンライン・サービスの運営会社は、スーパー、労災補償、休暇手当、特定の税金などの支払いをしなくても良い場合があります。働き手は、何かの問題や労災に遭って初めてこうした状況について考えることが少なくありません。また、ギグ・ワーカーの雇用契約は、運営者の都合で終了してしまうこともあるでしょう。スーパーに頼ることができないギガ・ワーカーがリタイアした時、誰がその面倒を見るのでしょうか?

その他の懸念点

より大きな懸念点は、ヘルスケアです。オーストラリアの正規労働者が職場でけがをした場合、労災補償を受ける権利があります。具体的には、手術費や理学療法治療費、再就職のためのトレーニング費用などが、雇用主が加入している労災保険制度でカバーされます。一方、ギグ・ワーカーが仕事中にけがをしても、労災補償を受けることができません。個人が民間の健康保険に加入していなければ、公的健康保険制度の下で治療を受けるか治療費を自己負担することになります。

MBA法律事務所パートナー弁護士のミッチェル・クラークは25年以上にわたって、労災の被害に遭われた方をサポートしています。労働者を取り巻く労災制度や健康保険制度の問題には引き続き注目し、定期的にこちらで共有させて頂きます。


ミッチェル・クラーク
MBA法律事務所共同経営者。QUT法学部1989年卒。豪州弁護士として25年以上の経験を持つ。QLD州法律協会認定の賠償請求関連法スペシャリスト。

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