法律相談室/スキー・リゾートに関する賠償請求訴訟

知ってると知らないでは大違い!
日豪プレス 法律相談室

第58回 スキー・リゾートに関する賠償請求訴訟

“当て逃げ”と言えば、車の衝突事故を説明する際に使用されることが多いですが、アメリカ・ユタ州のスキー・リゾートで起きた、ハリウッド女優のグウィネス・パルトロウさんが関係したスキー事故でも“当て逃げ”という言葉が使用され、世間の注目を浴びました。

スキー場の緩やかな斜面を滑っていた元医師の男性が、背後からグウィネスさんと思われるスキーヤーに激突された結果、深刻なけがを負ったということで、元医師はグウィネスさんとスキー・リゾートを相手に訴訟を起こしました。

もし、オーストラリアでこの種の事故の賠償請求訴訟を成立させる(被害者が賠償金を得る)には、相手の法的過失を証明する必要があります。スキーヤー同士の衝突事故でけがをしたことが明らかでも、賠償請求手続きのスタート地点で相手の法的過失を証明できなければ、そこから先に進むことができません。

オーストラリアの法律下において、スキー・リゾートの経営者には、その施設を利用する人たちの安全を守るために合理的な措置を講じる義務があります。これは“法的注意義務”と呼ばれますが、“合理的な措置”の定義は状況ごとに異なるため、複雑な問題に発展することがあります。そこで、法的注意義務違反があったことを明らかにすることで、賠償請求手続きは本格始動となります。

弊社で実際に扱った案件をご紹介します。弊社の日本人クライアントがオーストラリアでも有数のスキー・リゾートで合宿を行った際、立ち入り禁止区域を囲うために張ってあったロープにスキーヤーが突進したことで、そのロープが跳ね上がり、ちょうどリフトに乗っていた弊社クライアントのスキー板に引っ掛かり、そのロープに引っ張られたクライアントはリフトから地面に転落し、大けがを負うという事故が起きました。このケースでは、ロープに突進したスキーヤーの法的責任が議論の対象となりました。そのスキーヤーが、事故を意識的に起こした訳ではないことや、転落した人物に直接接触していないことに焦点が当てられ、このような事故が起きてしまったのは、危険区域を示すために張られていたロープと支柱の形状のせいだということが調査の結果、分かりました。従って、どのような形状のロープや支柱を使用するかはリゾート側の責任の範疇(はんちゅう)で、スキーヤーではコントロールできないという結論に至りました。立ち入り禁止エリアの四隅に支柱が建てられ、ロープが張られていましたが、スキーヤーがそのロープに突進することが予見できた時点で、それに耐えうる素材を使用すべきでした。もしその支柱とロープが衝撃に耐えられないものなら、そこに設置する意味がなかったということになります。


ミッチェル・クラーク
MBA法律事務所共同経営者。QUT法学部1989年卒。豪州弁護士として25年以上の経験を持つ。QLD州法律協会認定の賠償請求関連法スペシャリスト。

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る