【今さら聞けない経済学】金利はあらゆる価格の「元」になる

日本や世界の経済ニュースに登場する「?」な話題やキーワードを、丁寧に分かりやすく解説。
ずっと疑問だった出来事も、誰にも聞けなかった用語の意味も、スッキリ分かれば経済学がグンと身近に。
解説・文=岡地勝二(龍谷大学名誉教授)

第20回:金利はあらゆる価格の「元」になる

保護貿易主義の中を理解することは得てして難しいものですが、この11月、世界は本当に分かりにくくなってきました。9~10月に私が滞在していた韓国・ソウルの町では、人びとはとても静かでしたが、それが今では朴(パク)大統領のスキャンダルで国中が驚いているようです。またアメリカでは、大統領選挙により「大波乱」が起こり、世界中からさまざまな反応が上がっています。

今年は、イギリスがEUを離脱するという大きな「事件」もあり、これにはヨーロッパ中がひっくり返りました。こうした出来事が次々に発生すると、世界はずっと昔の保護貿易主義に走り、孤立主義が全体に波及していくような気配すら感じられます。もしそれが事実だとしたら、世界経済は大変なことになるでしょう。ぜひ世界の指導者には、今こそグローバリズムにのっとった考えで世界経済を運営して欲しいものだ、と痛切に思います。

さて、今回は、「お金の取引」について考えてみましょう。何度も繰り返しますが、この世の中に「ただのものは何も無い」、つまりこの世に存在するあらゆるものには、ちゃんと「値段」が付いています。「もの」の中で、目に見えるものを「」(例:リンゴ、魚など)、目に見えないものを「サービス」と呼び、いずれにも値段が付いていますね。人に仕事を頼むと「ただ」というわけにはいかず何がしかのお礼をしますが、それがサービスに対する値段です。

世の中は、財とサービスの取引から成り立っており、それらが取引される場所を市場と呼びます。リンゴや魚、自動車など目に見えるものが取引される場所を財市場といい、目に見えないもの、つまりサービスが取引される場所をサービス市場といい、これら2つの市場から一国の経済は成り立っています。そして、過去にこのコラムで何度か述べてきたように、「財の取引」と「サービスの取引」の総合計が、ある国の国内総生産(GDP)ですね。

さて、市場にもさまざまな種類が存在します。人びとが「働きたい」と願う仕事が取引される労働市場や、お金が取引される金融市場、ドルや円が取引される外国為替市場など。それらの市場において、「価格」が決定されるのです。例えば労働市場では賃金が、外国為替市場ではドルの値段が決まります。ところで金融市場では何が決まるのでしょうか?それは利子金利です。

「金利」が決まる仕組み

お金の取引を「金融」といいます。これは、「お金を融通する」という言い回しから生まれた言葉で、信用を前提にしてお金を貸し借りすること、ともいえます。

仮に、私がすっからかんで明日の生活にも困っていて、友達から5万円を借り、2カ月後に返すと約束したとします。私は友人からお金を融通してもらった、つまり私と友人の間で「金融関係」が発生したことになります。借りた5万円を返す時、「ただ」というわけにはいきませんので、例え友人であっても恐らく3,000円くらい(少々ケチかな?)をお礼に差し上げるでしょう。この3,000円が、5万円を借りた時の「金利」ということになります。このようなお金の貸し借りの仕組みが「金融市場」です。

金融市場で取引に関係するのは、個人、企業、政府、地方公共団体などです。個人はお金が余るとそれを銀行に貯金します。すると銀行が、預金金利をくれます。また、銀行はたくさんの団体や個人から集めたお金を企業に貸し出し、この時、貸し出し金利が発生します。

更に銀行は、日本銀行ともお金のやり取りをします。民間の銀行は日本銀行に当座預金を持っていて、そこを中心にお金のやり取りをしますが、当然そこでも日本銀行と一般の銀行との間で金利が発生します。

一般に、日本銀行と民間の銀行との貸し借りの間で発生する金利がとても重要だとされています。私は人びとに経済学の講義をする時、日本銀行と民間の銀行とは「親分・子分」の関係だと説明しています。親分は子分の面倒をとことんみますし、子分は親分に忠誠を尽くします。こうした関係を保っている限り、いざとなったら親分の日本銀行が助けてくれるので、民間の銀行は潰れることはないのです。

しかし、民間企業と民間の銀行との間では「親分・子分」の関係が成り立ちにくいので、しばしば民間企業は資金繰りに窮して倒産というつらい目に遭いますね。ただ民間企業と銀行の間で「金融関係」が首尾良く構築されている限り、民間企業も倒産という悲劇から免れることができます。企業活動を円滑に営むためには「金融関係の構築」は非常に大事なことなのです。

企業と銀行の間ではこうした関係がとても大切。仮に、A社が自社製品B社に売り、その代金の受け取りを6カ月先とします。B社もその製品を売らないと会社にお金が入らないので、これは当然です。一方で、A社は6カ月間も代金の回収を待てないため「6カ月後に必ず支払う」という証明書(約束手形)をB社からもらい、それを銀行に持っていき担保にして別のお金を融通してもらいます。こうしてA社は運転資金を得て、企業活動ができるようになるのです。このようなお金のやり取りの仕組みが、金融です。従って、もし銀行が潰れるようなことがあると、その銀行と取引している企業は大変なことになってしまいます。そう考えてみると「健全な企業社会には健全な金融関係が宿る」とも言えそうですね。

金利の発生メカニズム

金利とは、お金の貸し手である銀行と、借り手の企業などの間で勝手に決められるものなのでしょうか?確かに、銀行と企業との間で「長年のお付き合い」という関係があれば「安くしておくよ」なんていうこともありそうに思えます。しかし金利は一般的に、「金融市場」で、お金に対する需要とお金を出す供給との関係によって決まるのです。更に具体的に言うと、日本銀行による「金融政策」によって金利は決定されます。

日本銀行は、民間銀行を通して金融市場への貨幣の供給を増大させたり、減少させたりして金利を調節しています。もし市中に貨幣が出回りすぎて金利が低下し、それがインフレを発生させる要因となっていると見込むと、日本銀行は金融を引き締めて貨幣の流通量を減少させ、金利を高めに誘導するという手段を取ります。また、市中が金づまりに陥り(つまり金融が逼迫して金利が上昇し)経済状態が下降気味だと判断すると、貨幣の流通量を増大して金利を低下させる、そしてお金を借りやすくして経済を活発化させる、という政策が取られます。このように市中に出回っている資金を調節する代表的な手段を「公開市場操作政策」といいます。これは英語で「Open Market Operation」といわれ、「買いオペ」や「売りオペ」という呼び名で世間では広く知られています。きっと読者の皆さんも一度や二度はこの呼び名を耳にされたことがあるのではないでしょうか。

また、日本銀行が用いる貨幣量の調節手段に「支払い準備率変更政策」という政策があります。民間の銀行は、人びとから預かったお金をできるだけ多くの企業に貸し出し、「利子を取ろう」そして「利益を上げよう」とします。しかし大口預金者が「預けたお金を引き出したい」と言った時、銀行の金庫の中が空っぽでは預金者が大迷惑を被ってしまうので、日銀は子分である民間の銀行に「預金者保護のためにいつでも支払いの準備をしておきなさい」と命令を出すのです。これが支払い準備率変更政策です。支払い準備率を高めれば市中に出回るお金が少なくなり、支払い準備率を低くすればお金が市中に流れやすくなる、という案配です。

次に、「基準割引率および基準貸し付け利率変更政策」という政策があります。これは、1990年代の中頃まで「公定歩合変更政策」と呼ばれていた大切な金融政策手段でしたが、その後の大幅な金融自由化によってその役割はだんだん小さくなり、今では公定歩合という名前は消えてしまいました。民間の銀行は日本銀行からお金をたくさん借りて民間の企業などに貸し付けるのですが、その際に発生する金利が、「基準割引率および基準貸し付け利率変更政策」と呼ばれているのです。

政策金利の変更政策

最後に、政策金利の変更政策について考えてみましょう。以前、日本の金融行政は「護送船団方式」といって、日本銀行の命令1つでいっせいに金融機関が動いていた時代がありました。しかし世界の流れは急速に変わり、もはや日銀の命令だけでは経済は動かなくなりました。つまり、世界的な「自由化の波」が金融市場にも押し寄せ、金融のやり取りは金融機関同士で自由に実行されるようになったのです。これを金融の自由化といい、とりわけ短期資金のやり取りは銀行間同士で活発に実行されるようになったのです。その際に適用される金利を「政策金利」と呼び、それを上げたり下げたりする政策を「政策金利の変更」といい、とても大切な金融政策手段だといわれています。

さて、今回もご愛読ありがとうございました。「金融」や「金利」の仕組みについてお話しましたが、お分かり頂けたでしょうか?

私は長く大学教師生活を送ってきましたが、文章を書くというのは難しくもやりがいのある仕事です。もし経済学についてのご質問がありましたら、下記までEメールでお寄せください。
Email: nichigopress@gmail.com(件名:経済学の質問)



岡地勝二 プロフィル
関西大学経済学部卒業。在学中、ロータリークラブ奨学生としてジョージア大学に留学、ジョージア大学大学院にてM.A.修得。名古屋市立大学大学院博士課程単位終了後退学。フロリダ州立大学院博士課程卒業Ph.D.修得。京都大学経済学博士、龍谷大学経済学教授を経て現在、龍谷大学名誉教授。経済産業分析研究所主宰

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