【今さら聞けない経済学】相場とは何か、それはどのようにして決まるのか

日本や世界の経済ニュースに登場する「?」な話題やキーワードを、丁寧に分かりやすく解説。
ずっと疑問だった出来事も、誰にも聞けなかった用語の意味も、スッキリ分かれば経済学がグンと身近に。
解説・文=岡地勝二(龍谷大学名誉教授)

第31回:相場とは何か、それはどのようにして決まるのか

この連載も、お陰様でちょうど30回が過ぎました。今から4年ほど前、シドニーの日本商工会議所で講演をさせて頂き、その会場に日豪プレスの社主の方がみえ、熱心に私の講義に耳を傾けてくださいました。

その翌日、会食する機会があり、席をご一緒した時、その社主の方が「何だか経済や経済学には難しい言葉がいっぱいあって、分かるようでよく分からん、難しい言葉をあまり使わない経済理論を執筆してください」という依頼を受けました。

私は大学の教師を長年しており、日頃、小難しい経済の理論を講義室で学生たちに講義したり、また執筆したりしてきました。時として、こんな難しいこと一体何の目的で先人の経済学者は考えたのだろうと自分でも「不理解」のまま、講義をすることもありました。そこで、とにかく老いも若きもたくさんの人びとが理解できるような経済の話を執筆する、というそれこそ途方もない仕事を引き受けました。それからもう30回書き終えたことになります。そこで日豪プレスの社主の方に、ここで一区切りしましょうか、とご相談しました。すると、「もっと続けてください」という「指導」を受けました。そこでまた、勇気と努力を振り絞ってこの連載を続けていこうと思います。皆さんと一緒に経済のあれこれを考えていければ幸いだと心から願っております。

相場とは何か

さて、今回は「相場」という言葉(用語)から考えていきましよう。日頃の生活において人びとは相場という言葉を頻繁に使います。相場とは、世間一般でよく言われている評価、また物の値打ちという意味で使います。

例えば今、世間の相場では幾らぐらいという言葉があります。しかし、経済学の分野では、相場とは市場において取引されるさまざまな財とサービスの値段(価格)を指します。

この世では、大半の物には「相場=値段=価格」が付いています。そこで相場では、安値とか高値という言葉が使われます。当然値段が安いのは安値ですし、高いのは高値です。

更に、世の中には「相場師」という言葉があります。相場師とは、現物の売買によって利益を得るのではなく、相場の変動によって利益を得ようとする人のことを言います。これは、また「投機家」とも呼ばれています。従って、この場合の相場とはあまり良い響きがありません。しかし、経済内ではとても大切な役割を持っています。

為替相場とは何か

「為替」とは、離れた場所で支払いをする時、直接現金を送るのではなく、証書などで送ることを意味します。例えばあなたが遠方の店から品物を買い、その代金を支払う時、あなたは銀行へ行って送金をお願いします。その時、為替の用紙にどこへ、幾ら送ると記入し、その金額を銀行へ渡します。すると銀行は手数料を徴収し送ってくれます。

このように為替とは、あなたの「為」に、銀行があなたに「替」わって送る、ということを意味します。国内でしたら「内国為替」と言い、外国への送金でしたら「外国為替」と言うのです。国内だけの送金でしたら手数料だけ支払えばきちんと送金してくれます。しかし、もしあなたが外国へ送金するとなると事情は変わるのです。日本国内の場合は、円で受け取り·支払いができますが、それが日本と外国になると円で国際通貨を買ってそれを送ることになります。その時、「外国為替相場」が立つのです。

現在、世界では外国との受け取り·支払いは主としてアメリカのドルで行います。そこで外国へ送金する時にドルを円で買うことになります。その時、「1ドル=何円」というドル相場が立ちます。これを「為替相場」と言い、外国に送る際は、外国為替相場となるのです。

ドルの売買を行っているのは、主として銀行になります。そこで銀行へ行くと、そこに本日のドルは何円という表記があります。それがドルの値段です。つまり、ドル相場ということになります。

外国為替市場とは何か、その役割について

今、あなたの会社が外国へ財を売ったとしましょう。つまり輸出をしたのです。すると必ずその代金をもらうのですが、その代金はまず、あなたの会社の取引銀行に入ります。その銀行に入ったドルが円と交換されて皆さんの会社に輸出代金として入金されます。銀行のとても大切な仕事は、このように自国通貨と外国通貨とを交換することです。

さて、もしあなたの会社が石油などを輸入しているとします。石油の代金はとても大きく、取引銀行がその時点で手持ちのドルでは足りないとなった場合、その銀行は、今ドルをたくさん持っている銀行はないかと声を掛けます。そして、ちょうど外国から大量のドルが入金されたという銀行があれば、あなたの会社の取引銀行はそのドルを買うのです。そして、石油の代金を支払うということになります。このように銀行間でドルの売買をすることが大切です。

たくさんの銀行が集まって多額のドルを売買している所を「外国為替市場」と言います。もちろん、ドルを中心として外国通貨の売買は、物の取引に基づいてなされるだけでなく、通貨自体を売買することも大いに実行されます。実は、通貨そのものを売買することによって外国為替が取引される方が、はるかに大きな額になるのです。

一例を考えると、アメリカのトランプ大統領が何か政策的な失敗をしたとすると、アメリカの信用とドルに対する信頼も低下します。そこで、外国為替市場でドルを売って日本の円を買おうとします。つまり、円に対する需要が増大し、円に対する価値が上昇します。「円高=ドル安」という状態が出現するのです。

また、最近アメリカの中央銀行に当たる連邦準備理事会(The Federal Reserve Board、以下FRB)が金利を段階的に引き上げるという政策が実行されるというニュースが世界を飛び交っています。マイナス金利などで幾ら日本の銀行にお金を預けても1円も金利が付かない、いっそFRBが金利を上げるようだから、アメリカの銀行に預金しようと円を売ってドルを買い、アメリカの銀行に貯金をします。すると「円安=ドル高」という現象が外国為替市場に起こります。

このように外国為替市場で「円安=ドル高」や「円高=ドル安」は発生し、世界経済の急激な変動とドルと円との売買の変化によって生じるケースが多いことを、皆さんは記憶にとどめておくと良いと思います。

世界中でとてつもない額のドルが毎日取引されています。外国為替市場の規模の大きさを以下の表で見ていきましょう。

世界の金融センターのランキング(2016年総合力ランキング)
1位 ロンドン
2位 ニューヨーク
3位 シンガポール
4位 香港
5位 東京

資料:英調査会社「Z/Yenグループ」2016年3月
日経:2017年3月15日

上記の表で見ると、日本の金融センターの役割がとても低くなっていることが分かります。日本のGDPが世界で2位という位置を占めている時には、東京の金融センターの地位は世界で3位でした。

しかし、いわゆる「大デフレ」の状態が、30年近く続くと日本の経済力も低下の一途をたどり、それにつれて日本の経済力が世界経済に占める地位も低下してしまい、世界の金融センターのランキングで占める地位も今や5位に沈むという在り様です。残念ながらこの地位も恐らく、中国の上海にも抜かれるのはそう遠くないことだとも言われています。

日本の金融センターの役割が低下しているのは、日本の経済力が低下しているという現状だけではありません。世界の金融市場での取引は、瞬時にして考えられないほどの金額が動いているのです。それを操っているのは、高度の金融知識を身に着けた人びとがお金の取引をしているのです。その時、「えーと、この英語の意味は」と言いながら一語一句辞書を引いているようではお話になりません。

つまり、シンガポールや香港は経済の規模だけを考えると、日本に比してはるかに小さな規模でしかありませんが、それらの国(地域)で育っている語学的センスを身に着けた人材は日本に比べるとはるかに多いのです。

私は、ここ何年かにわたって長期で韓国の大学で講義する機会に恵まれました。韓国の大学では、一様に英語だけで講義しています。難しい経済学の理論を英語だけで講義し、学生たちは勉強しているのです。日本の大学の現状と比べると、本当に驚くばかりでした。

日本は、これから長期にわたって人口減少時代に突入します。そんな時代を目前にして、日本ももっと人材の育成を計画的に行っていかないと、日本の経済の世界経済に占める位置は低下するばかりだと心配になります。

最後は、ドルと円の話から少しテーマが反れましたが、大切なことと思い執筆しました。



岡地勝二 プロフィル
関西大学経済学部卒業。在学中、ロータリークラブ奨学生としてジョージア大学に留学、ジョージア大学大学院にてM.A.修得。名古屋市立大学大学院博士課程単位終了後退学。フロリダ州立大学院博士課程卒業Ph.D.修得。京都大学経済学博士、龍谷大学経済学教授を経て現在、龍谷大学名誉教授。経済産業分析研究所主宰

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