ADVO(暴力禁止令)が出された主人に子供を会わせるべきですか?

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Q オーストラリア人の夫と別居中です。夫には1カ月ほど前に ADVO が出されており、その関係で子ども(5歳・男の子)とはほとんど接触がない状態です。これから彼に対して離婚申請を始めるつもりでいますが、それをきっかけに子どもに会わせろと言ってくると思います。私は子どもには会わせたくないのですが、会わせる必要はあるのでしょうか。ちなみに子どもは父親と会えなくなってから少し元気がなくなっています。
(30歳会社員=女性)

A DVO(Apprehended Domestic Violence Orders)とは配偶者やパートナーの家庭内暴力を抑止するためNSW州のLocal Courts(地域裁判所)から出される暴力禁止令のことです。家族法(FamilyLaw Act 1975)に基づいてparenting orders(養育に関する取り決め)の申し立てを家庭裁判所で行う際、有効なADVOが既に存在する場合にはその事実を開示する必要があります。質問者のお話の内容から、質問者自身と併せて子どもも夫の暴力からの保護対象者としてADVO中に挙げられているものと推測します。家族法は「両方の親が子どもと有意義な時間を過ごすことは子どもに利益をもたらすこと」であることと規定していますが、同時に「暴力の対象となる状況から子どもを保護すること」も子どもの利益を追求する上での重要な要素の1つであることも規定しており、近年この要素が以前にも増して重要視されていることが裁判手続き上で明確化しています。従って質問者のご質問に一般的な観点からお答えするとすればparenting ordersはADVOと矛盾しないものが出されるものと思います。

しかし、連邦裁判所である家庭裁判所は州のLocal Courtsに対して上位権限を有しているので、ADVOの保護内容と矛盾するparenting ordersを出すことも許されています。家庭裁判所がそうした決定をする時には夫の過去の暴力の具体性、子どもが直接的な暴力の対象であったか否か、そして子どものそれまでの父親との関わり方や現在の精神状態などが審査されることになるでしょう。

ご質問者の場合はADVOが先に存在しているケースですが、これがparenting ordersが先に出されているケースであった場合には異なる展開があり得ます。家族法の第68R条は、既に存在するparenting ordersを変更したり停止したりする権限を州裁判所に与えています。したがって、既に存在するparenting ordersがADVOの保護内容と矛盾する場合には州裁判所がparenting ordersの内容を変更することができるわけです。ただし、州裁判所がこの権限を行使することは実際には非常にまれです。これは州裁判所に権限行使に対しての躊躇があることが大きな理由ですが、たとえADVOが仮命令の期間であっても十分に注意を払った対処が求められるべきことであると筆者は考えます。したがってparenting ordersが有効である中で(自分の身の危険も含め)子どもを相手の暴力から保護する必要性があると感じられる時には、第68R条の申し立ての妥当性と必要性を弁護士と必ず協議するようにしましょう。

なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。


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山本 智子(やまもと ともこ)
Yamamoto Attorneys

 

NSW大学法学部・教養学部卒。International Lawyers Co-operativeのメンバーであるYamamoto Attorneysの代表として各種法務を遂行している。

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