事実婚(ディファクト)に対する相続遺産はどうなるの?

何でも相談

Q 日本人同士のディファクトについて質問があります。私たちはオーストラリアに住んで長いのですが、彼には日本に前妻と子どもがいます。こうした状況で、彼がこちらで遺産を遺した場合、国籍が日本である私たちの場合は誰が遺産を相続するのでしょうか。
(40歳主婦=女性)

A 「ディファクト(de facto)」とは「事実上の」という意味のラテン語で、これに「marriage(結婚)」や「couple(夫婦)」などの語が続き、一般に「事実婚」と訳されています。正式な婚姻手続きをしないながらも、夫婦として共に生活する成人の関係を表します。

オーストラリアの家族法では、婚姻関係にない2人の成人が2年以上同居していればその関係は事実婚であると見なされ、婚姻と同様の権利と義務が与えられます。このことはつまり、事実婚解消に際しては離婚と同様のルールが適用され、財産分与に関しても同等の規定が当てはめられるということです。当事者が別の成人(異性)と婚姻関係にある場合でも事実婚は同時に存在し得ます。

ちなみに、子どもの身分については婚姻にかかわらず同等で、嫡出・非嫡出の別はありません。1999年からは同性間での関係も事実婚の定義に含まれるようになっているのは、既に周知の事実であるかと思います。

事実婚の配偶者に与えられる法的権利と義務が同等であるのは、家族法の分野だけではありません。事実婚において配偶者が死亡した場合、他方の配偶者には、以下の権利が発生することが考えられます。

● 遺言に自分の権利が記載されていない場合における遺留分
● 事故や労災などで死亡した場合における賠償金の受け取り
● スーパーアニュエーションに付帯されている死亡保険金の受け取り
● 社会保障金額の受け取り

ご質問者の状況にこうした権利が発生した場合、故人の日本にいる子どもとご質問者のどちらが優先されるでしょうか。

オーストラリアの関連法上では、相続権は配偶者、子ども、孫、親、兄弟姉妹、祖父母、伯父、伯母の順番に発生します。子どもが配偶者の子どもである時には配偶者が100パーセント受け取りますが、ご質問者の場合は故人の前妻の子どもであるため、ご質問者は35万ドル(並びに利息など)と、その残りの50パーセントを取得出来ます。残りは子どもに均等分配されることとなります。

ちなみに国籍の別は無関係です。「配偶者」には当然事実婚における配偶者も含まれますので、ご質問者が優先されます。更に、遺言不存在であった場合には、上述だけではなく故人の遺産に対してもご質問者が優先されることになります。ただし、遺産の中に日本の不動産が含まれる場合には日本の法律が適用されることが考えられますので、当該不動産に対しては上述の限りではない可能性があります。

これらから、事実婚における自らの権利を主張するには、まず事実婚の存在を明らかにすることが必要であることがお分かり頂けるでしょう。現在NSW州では、事実婚の任意登録制度を設けています。同登録証書は事実婚の存在とその関係の期間を客観視させるために有効な資料の1つです。また、通称「prenuptial agreement」と言われる婚前合意書と同種の合意書を作成しておくことも方法の1つでしょう。こうした合意書は、事実婚の開始前あるいは継続中に作成可能で、法的文書を作成しておくことは事実婚の存在を明らかにする上で大変意義深いことです。

なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。


日豪プレス何でも相談

 

山本 智子(やまもと ともこ)
Yamamoto Attorneys

 

1998年NSW大学卒業(法学士・教養学士)。同年弁護士資格取得。1998年より数々の法律事務所での経験を重ねた後、「Yamamoto Attorneys」を設立、現在に至る

*オーストラリアで生活していて、不思議に思ったこと、日本と勝手が違って分からないこと、困っていることなどがありましたら、当コーナーで専門家に相談してみましょう。質問は、相談者の性別・年齢・職業を明記した上で、Eメール(npeditor@nichigo.com.au)、ファクス(02-9211-1722)、または郵送で「日豪プレス編集部・何でも相談係」までお送りください。お寄せいただいたご相談は、紙面に掲載させていただく場合があります。個別にご返答はいたしませんので、ご了承ください。

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る