ドメスティック・バイオレンス(DV)どうすれば?

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法律

Q

一緒に暮らしているパートナーとけんかをしました。その際、ひどい暴言を吐かれ顔を殴られたあげく、壁に突き飛ばされけがをしました。恥ずかしながら、こうした経験は今回が初めてではありません。しかし彼が逮捕されると私には他に行く所がなく、どうしたら良いか分かりません。何かアドバイスを頂けないでしょうか。(38歳女性=会社員)

A

ドメスティック・バイオレンス(以下、DV)は、家族関係にある人との間の暴力行為のことで、対象となるのはパートナー、親、兄弟姉妹、親戚や子どもとなります。また、オーストラリアではDVは広範囲に定義されており、身体的暴力のみならず、言葉の暴力、精神的暴力、経済的暴力、性的暴力などもその中に含まれます。被害者となるのは、女性や子どもが圧倒的多数ですが、男性が被害者となる場合も多くみられます。

近年、DVは深刻な社会問題の1つとなっており、NSW州では2013年以降に起きた州内の殺人事件のうち、実に41%がDVに関連しているという統計が出ています(18年7月SMH新聞)。そのため近年DVを取り締まる法律が急増し、それに伴い刑罰も厳しくなっています。

相談者のように、他に行く所がない、パートナー・ビザ申請のためなどさまざまな理由で暴力を我慢する人が多いのは残念ながら事実です。しかし、暴力に関しては警察に即時通報することより他アドバイスはありません。警察には通報されたDVについて取り調べをする義務があり、当該者(以下、加害者)が逮捕されることもあります。更に、警察が被保護者(以下、被害者)に代わって裁判所に保護命令(以下参照)の申請もできます。証拠次第では、この保護命令申請と同時にDV加害者を傷害罪で起訴することもあります。

その他のDV被害対策としては、①受けた暴力行為の記録を付ける、②病院で手当てを受けDVの記録を残す、③弁護士に依頼し裁判所に自ら保護命令を申し立てる、などが考えられます。

保護命令とは、裁判所が発行する「Apprehended Domestic Violence Orders/ADVOs」のことで、加害者が被害者に対する行為の規制が記載されている趣旨の命令文です。規制行為の例は、被害者への接近禁止、電話やSNSを使った連絡の禁止、加害者の現住所からの退去などです。家庭状況に応じて、加害者と被害者が一緒に住みながらでもお互いの距離や連絡頻度など制限が設けられることもあります。保護命令が発行されること自体は加害者の犯罪歴とはなりませんが、もし加害者がその規制行為を行った場合には命令違反として起訴され、その行為に応じて刑罰の対象となります。ADVOsの有効期間は現在NSW州では通常12カ月ですが、最長で無期限になることもあり得ます。なぜなら、裁判所は被害者の保護が必要である限りADVOsは有効、というスタンスを取っているからです。

オーストラリアでは、DVについての相談を24時間体制で受け付ける非営利団体が各州にあり、こうした団体は被害者のシェルターへの紹介も取り扱っています。また昨年末から、全ての労働者に対して、DVが関連した場合には最長年間5日間の無給休暇を取得する権利が与えられるようになりました。更にDV被害者には賃貸物件の優遇措置が与えられたり、ビザ申請の際に特別措置が認められる場合もあります。ご自身と家族を守るために、早急に適切なアドバイスを受けることをお勧めします。

なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。

*オーストラリアで生活していて、不思議に思ったこと、日本と勝手が違って分からないこと、困っていることなどがありましたら、当コーナーで専門家に相談してみましょう。質問は、相談者の性別・年齢・職業を明記した上で、Eメール(npeditor@nichigo.com.au)、ファクス(02-9211-1722)、または郵送で「日豪プレス編集部・何でも相談係」までお送りください。お寄せいただいたご相談は、紙面に掲載させていただく場合があります。個別にご返答はいたしませんので、ご了承ください。


山本 智子(やまもと ともこ)
Yamamoto Attorneys

1998年NSW大学卒業(法学士・教養学士)。同年弁護士資格取得。1998年より数々の法律事務所での経験を重ねた後、「Yamamoto Attorneys」を設立、現在に至る

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