離婚する際の資産分配における、裁判所の4つの審査

Q オーストラリアで離婚する際、夫婦の資産はどのようにして分配されるのでしょうか。よく50:50だと聞きますが、そんな単純なものではないように思います。
(48歳主婦=女性)

 

A 前号に続いてこのご質問にお答えしたいと思います。婚姻資産の分配について裁判所は、4つのステップに沿って審査します。ステップ①は、分配対象財産の見極め、②はその対象財産に対する夫婦それぞれの貢献の見極め、③は、対象資産の分配の際に考慮されるべきことの見極め、そして④は分配の結果が公正で衡平であるかどうかの確認です。今回は③と④のステップについてです。

ステップ③:ステップ①と②で確認されたことに調整を加えることがこのステップです。ステップ①と②はいわば、実際に存在する資産の確認とそれらに対する両当事者の過去の貢献を確認するという、ある意味その存在事実が客観視しやすい事項を用いての確認作業です。その作業の結果生じた財産分配率に対して、財産分配を左右する事項がほかにないかどうかを確認する作業がステップ③です。そうした事項の最もわかりやすい例としては、子どもやそのほか家族の世話や自らの健康状態ですが、そのほか当事者間に特有の要因も挙げることができます。そうした要因は一般に物的証拠で証明することが難しいものであり、軽視されたり見過ごされたりしやすいことであるため、法令で具体的に示されています。家族法令第75(2)条がそれにあたる条項で、

・当事者の年齢や健康状態、
・自分、そのほかの人物、未成年の子どもの扶養責任(婚外子も含む)、
・当事者が( 財産分与とは別に)近未来的に受けることが予想される収入(例えば遺産、年金、手当てなど)、
・別のパートナーからの資金的援助の有無

などが記載されています。これらの規定のほかに配偶者扶助の必要性が検討される場合に考慮される要素も含まれており、それらは、

・婚姻のために就労から遠ざかることを余儀なくされた特殊事情(文化的背景など)、
・扶助を受けることでその当事者が社会復帰・自活していくことが容易になるか否か

などです。この条項規定の興味深い点は、家族法令が、婚姻関係が単なる経済的な結びつきではなく精神的な結びつきと、共同生活中のさまざまな境遇においての相互間の結束で成り立つものであることを認めていることです。

ステップ④:ステップ③で加えられた調整の後の分配率が個々の状況を鑑みて適正で公正であるかどうかを全体的に考察する作業です。同じ分配率でも分配対象の絶対金額によって最終的な分配金額は大幅に変わってきます。最終金額が実際的に「生活不可能」である金額となる場合に分配率が調整されるのはこのステップでの作業のためです。

なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。


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山本 智子(やまもと ともこ)
Yamamoto Attorneys

 

NSW大学法学部・教養学部卒。International Lawyers Co-operativeのメンバーであるYamamoto Attorneysの代表として各種法務を遂行している。

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