複雑化するサイバー・リスクに備えるサイバー保険とは

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Q 最近ではパナマ文書の情報漏洩(ろうえい)など、以前にも増してコンピューターへの不正なアクセスや情報改ざんなどのニュースを目にする機会が増えていると感じます。仕事の関係上システムのセキュリティー対策には人一倍気を使っているつもりですが、もし十分な対策にもかかわらず万が一のケースが発生した場合の保険があれば補償されるケースの詳細を教えてください。
(38歳ITエンジニア=男性)

A サイバー保険に関しては過去に一度触れていますが、今回の質問者のご指摘の通り、オーストラリアにおけるサイバー環境を取り巻くリスクは以前よりも深刻で、実際の事件件数や規模も、年々大きくなってきています。

2015年に実施した企業に対する意識調査の結果では、サイバー・リスクは懸案事項のトップテンに入ってきており、2年前の同様の調査での結果が18位だったことを受けると、企業がいかにサイバー・リスクを重要と考え認識を変えてきているかが分かります。そういった状況を背景に保険業界における同リスクへの取り組みも飛躍的に拡充され、サイバー保険は近年最も成長速度の速い保険種目であると言われています。

そこで、より複雑さを増したリスクが取り巻く環境を踏まえ、更に包括的な補償を受けることができるようになったサイバー保険の一般的な補償内容について、以下の通りご説明します。

当事者損失(First Party Loss)
 サイバー・アタックを受けたことに起因する以下のような自社損失をカバーします。

● 事業中断に伴う逸失利益および中断を最小限に抑えるために発生した追加費用
● 破壊・改ざんされたデータの復旧、再興に対する費用
● 告知費用
● 個人情報が盗まれたことにより発生するID詐欺への対策としてのクレジット・モニタリング費用
● 損害状況・原因の調査費用
● システムへのアクセス妨害などの脅迫に対する対処費用
● マスコミなどへの対応費用
● 弁護士への相談費用

賠償責任補償(Third Party Loss)
 自社からの情報漏洩などを理由に顧客などの第三者から損害賠償責任を求められた場合へのカバーです。

● 名誉棄損(きそん)などを理由に訴えられた場合の補償
● プライバシーと知的財産権の侵害を理由に訴えられた場合の補償
● ネットワーク・セキュリティー管理の不備を理由に訴えられた場合の補償
● 機密情報の漏えいを理由に訴えられた場合の補償
● 第三者のシステムへの二次感染被害を理由に訴えられた場合の補償
● 抗弁費用
● 罰則金

サイバー保険がまだそれほど普及していなかった頃には、それぞれのリスクを他の種目の保険で部分的かつ個別にカバーするのが一般的でしたが、昨今では、法案改定や事件の頻発化による世間的な注目の上昇を受け、より広い範囲を包括的にカバーする保険が広まってきたと言えます。

しかし、保険商品の補償範囲はさまざまで、しかも状況に合わせて日々変化していますので、実際に検討をする際には、専門家のアドバイスを受けられることをお勧めします。


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斉藤 大(さいとう だい)
エーオン・リスク・サービス・オーストラリア
ジャパン保険サービス部

 

世界最大手のリスク・コンサルタント会社豪州法人の日系専門部署で日々日系企業顧客の法人・個人保険アレンジ、事故処理などを担当

*オーストラリアで生活していて、不思議に思ったこと、日本と勝手が違って分からないこと、困っていることなどがありましたら、当コーナーで専門家に相談してみましょう。質問は、相談者の性別・年齢・職業を明記した上で、Eメール(npeditor@nichigo.com.au)、ファクス(02-9211-1722)、または郵送で「日豪プレス編集部・何でも相談係」までお送りください。お寄せいただいたご相談は、紙面に掲載させていただく場合があります。個別にご返答はいたしませんので、ご了承ください。

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