取引先の倒産や未払いによる損害をカバーする「取引信用保険」とは

何でも相談

Q 以前も取引信用保険についての記事がありましたが、その内容を参考に数年前から同保険の手配をしています。しかしながら各取引先の与信枠の減額や取り消しを保険会社から通達されるようなケースで困ることもあるのですが、その背景について教えてもらえますか。
(53歳会社員=男性)

A ご質問に対してまずは簡単に取引信用保険(Credit Insurance)のご説明をします。同保険は簡単に言うと売掛金の焦げ付きによる損害をカバーする保険で、文化的・制度的に企業倒産が日本より頻繁に起こるオーストラリアでは非常に一般的な保険です。

保険対象となるのは取引先の倒産や規定の期間を超えて支払いを受けられない売掛金の損害となりますが、填補率はこの保険の特色として一部のビジネス・リスクは契約者側で持たなければいけないという観点から、通常カバーの範囲は8割、最大で9割となります。

保険手配に際しては、上記の他に補填率や保険料レート、リスク保有分(免責額)の割合などを保険会社と合意すると同時に、取引先毎に売り掛け期間やボリューム、金額をベースに保険上の与信枠の設定がなされます。一定金額より小さい取引ついては自動的に補償対象として扱えるように枠を作ることも可能ですが、通常は取引先毎に保険会社に与信枠の引受け承認を求めることになり、更にこの枠の金額は一度確定したら保険契約期間中ずっと継続するかというと必ずしもそうではなく、その時々の状況によって常に変動します。

変動の理由は保険契約者側が、その取引先との商売が拡大し今まで通りの与信枠では足りなくなったことを受けて保険会社に依頼申請するケースも多いのですが、逆に保険会社側からの通達で減額もしくは取り消されることもあります。

その場合、保険会社側が独自につかんだ情報により、該当取引先の財務状況が悪化していたりすることなどが理由ですが、一方で単純に保険会社側が把握している該当取引先の情報がアップデートされていないことに由来しているケースも多くあります。よって一定期日までに該当取引先から新たに直近の財務諸表を提示してもらうなどで継続して与信枠を維持できることがほとんどです。

上記は一見、保険会社からの一方的な通達が契約者側になされるようなイメージですが、取引先の債務状況悪化などのケースにおいては自身がアクセスできない情報を基にした保険会社からの通達を受けることでいち早く売掛金の回収作業に入れるなど、広い意味でのリスク管理を可能にするとも言えます。更には新規開拓の取引先に対しては、与信枠の承認を得る過程において、どれくらいの売掛金取引が可能か、保険会社の信用調査を基に判断し、極端には取引自体をしない方が良いという決断などを可能にします。

また付随的なメリットとしては同保険を導入することで経営が安定すれば銀行からの融資を受けやすくなるので、ある程度の規模でご商売をされているような場合にはご一考の価値のある保険ではないかと思います。

取引信用保険は非常に特殊な保険です。保険手配をした以降においてもいかに保険会社との交渉をうまく運ぶかでその有用性が大きく左右されますので、信用のおける専門家に相談されるのが良いでしょう。


日豪プレス何でも相談

斉藤 大(さいとう だい)
エーオン・リスク・サービス・オーストラリア
ジャパン保険サービス部

世界最大手のリスク・コンサルタント会社豪州法人の日系専門部署で日々日系企業顧客の法人・個人保険アレンジ、事故処理などを担当

*オーストラリアで生活していて、不思議に思ったこと、日本と勝手が違って分からないこと、困っていることなどがありましたら、当コーナーで専門家に相談してみましょう。質問は、相談者の性別・年齢・職業を明記した上で、Eメール(npeditor@nichigo.com.au)、ファクス(02-9211-1722)、または郵送で「日豪プレス編集部・何でも相談係」までお送りください。お寄せいただいたご相談は、紙面に掲載させていただく場合があります。個別にご返答はいたしませんので、ご了承ください。

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る