【特集】快適なシニア・ライフを求めて①

快適なシニア・ライフを求めて

退職を控えるプレ・シニアや、シニア世代が海外の地でより満足度の高い生活を送るためにはどのようなことを知っておくべきなのだろうか。また何をしておく必要があるのだろうか。オーストラリアも日本と同じく長寿大国として数えられる国の1つだ。プレ・シニアやシニア世代が今からできる準備について、遺言、介護、不動産投資、年金・スーパーアニュエーション、資産運用のテーマ別に必要な情報を専門家の意見を踏まえて紹介していく。

遺言 取材協力=エインズワース・オルブライト法律事務所/占部英高さん

遺言

遺言書とは

遺言書は、遺産の分配を始めとする故人の意思を反映させるための重要書類である。故人の財産をどのように相続するかはオーストラリア各州で異なるため、遺言書を残さないと州ごとの関連法令に従い相続人の範囲と法定相続分が判断される。そのため、故人が希望するチャリティー団体に相続財産を分配したり、特定の近親者に対し分配を多くするといったことができない。

更に相続財産が不動産なら、それが所在する州の法律で相続関係が判断される。銀行預金や投資信託などの動産の場合は、預金先の銀行や受託者の所在する州の法律により相続関係が判断される。そのためオーストラリアに資産を持っている人には、遺言書の作成が推奨される。

遺言書作成上の注意点

遺言書の作成と執行の要件はおおむね各州法で共通しており、特徴として「遺言書は記述であること」「遺言者は2人以上の立会証人の前で遺言書に署名すること」「その立会証人も遺言者の前で署名すること」が挙げられる。通常、「遺言書の認証」条項を冒頭に記述することで、その文書が遺言者の最終の意思内容だと明確に示すことになる。

遺言者は、遺言書で遺言執行者(Executor/以下、執行者)を指定・選任できるが、選任しなくても遺言書は有効だ。執行者は遺言執行の要を担い、遺産を調査・特定し、公正市場価格で評価する。遺言者が死亡した時点で返済すべき債務を遺産から支払い、更に債務返済後の遺産にかかる税の支払いも済ませる(ただし、オーストラリアに相続税、遺産税はない)。その後、遺言書で指定された受益者(Beneficiary)と呼ばれる被相続人に遺産を分配し、遺言書の有効性に異議申し立てを受けた際も、その対処を行う必要がある。

そのため執行者には、身近で信用の置ける人を指定・選定すべきで、被相続人の中から選任することが多く、年齢が若い人を複数人指定すると安心だ。他方で、執行者は選任を受諾も辞退(受託後の辞退を含む)もできるため、複数人指定する場合は順位を定められる。例えば、第1位の執行者が遺言執行時に職務ができない場合、第2位の執行者が職務を行う。また複数の執行者が共同で職務を行うよう、遺言書で定めることもできる。

執行者が遺言書に定められた職務を遂行するには、まず検認裁判所で遺言書の検認(Probate)申請をする(実際の申請は弁護士が手続きする)。検認証書(Probate Certificate)が発行されるまで遺産管理に着手できないことが注意点である。

遺言書を残さなかったら

遺言書を残さずに死亡した場合、無遺言相続(Intestate)となり、相続財産は故人の意思とは無関係に州の関連法令の規定する範囲の相続人に、規定の順番と法定相続分で相続される。無遺言相続であっても検認手続きが必要となり、遺産管理人(Administrator)が自身をその地位に指定する旨を記載した申請書を検認裁判所に提出し、それに基づき申請者に権限付与書(Letters of Administration)が発行され、相続執行手続きが可能となる。

遺産は最終的に法定相続人に分配されるが、州の検認裁判所での手続きに1年以上掛かる場合もある。そのため遺言書がないと相続分配を確実に、迅速に執行できないとも言える。

状況が変化した時

資産状況や財政状況が大幅に変わった時や、結婚、離婚、別離、子どもの誕生といった家族構成の変化など、人生の節目で遺言書を見直すと良いだろう。婚姻前に作成された遺言書は、その婚姻を前提として作成された場合を除き、婚姻(再婚を含む)によって自動的に無効となる。離婚すると、離婚前に作成した遺言書自体は効力を持つが、そこに定められた元配偶者に関わる条項全てが無効になる。

遺言者の意思で遺言書を破棄するには、「新規に遺言書を作成する」「書面で破棄を宣誓する」「破り捨てる」など遺言書原本を破棄する、または裁判所が遺言者本人が遺言を破棄する意思が明らかだと遺言書原本に記載するなどの方法がある。

共有財産の扱い

オーストラリアでは、夫婦で所有している不動産は「Joint Tenancy」として共有形態が多く、例えば夫が亡くなった時は「Right of Survivorship」により、その不動産は死亡と同時に自動的に妻に帰属し、相続財産には含まれず、相続の対象にはならない。

遺族遺産分与

遺言書は原則として遺言人の意思を反映する法的文書である一方、制限が全くないわけではない。オーストラリアでは、遺族遺産分与(Family Provision)の制度があり、配偶者、子ども(継子を含む)などの被相続人の近親者で、被相続人に経済的依存がある人たちは裁判所に対し相続財産の一部を自身に分配するよう請求できる。その分配額は裁判所が具体的な事情を考慮した上で判断する。

介護 取材協力=ジャパン・トータル・ケア・サービス(JTCS)/沼田貴史さん、小島直美さん

介護保険

介護を始めるには

要介護度(軽度または中度・重度)の認定を受けるには、オーストラリアではまず介護を受ける本人または家族が自治体ではなく連邦政府の運営する「マイ・エイジド・ケア」(Web: www.myagedcare.gov.au、Tel: 1800-200-422)に連絡し登録を済ませ、要介護度の認定に向けた手続きを進める仕組みとなっている。また、英語でのコミュニケーションに不安がある場合は、無料通訳サービス(TIS、Tel: 131-450)を利用しマイ・エイジド・ケアへの登録、手続きを進めることも可能だ。

サービス利用までの具体的な流れ

マイ・エイジド・ケアへ登録を行う時、初回の電話で質問される項目は主に以下の通りとなっている。

初回登録の質問内容(5~10分で登録完了)

  • 氏名
  • 現住所
  • メディケア番号
  • 生年月日
  • 居住形態(一人暮らし、または家族などと同居しているか。居住に経済的援助を受けているか)
  • アボリジニーまたはトレス海峡しょ島出身かどうか
  • 出生国
  • 母国語
  • 電話番号、など

その後にそのまま電話で介護度認定のための簡易アセスメントを受ける。簡易アセスメントを受ける際の主な質問は以下に挙げられる。

簡易アセスメントでの主な質問項目

  • 今後どのようなサポートを受けたいか
  • 他にエイジド・ケア・サービスを受けているか
  • 政府から他に何か援助を受けているか
  • 買い物は1人で行くことができるか
  • 歩く際に補助器具を使用しているか
  • 薬局に1人で薬を取りに行くことができるか
  • 家事をする際に体のどこかに不自由は感じるか
  • 生活をする上で何か困る動作はあるか

電話アセスメント後、3~6週間以内にマイ・エイジド・ケアから電話で自宅への訪問アセスメント日時が伝えられる。指定の日時に政府から委託されている地域の団体より、軽度の介護度を認定する認定者(Regional Assessment Service/RAS)または中度・重度の介護度を認定する認定者(Aged Care Assessment Team/ACAT)が自宅へと派遣される。認定者が自宅へ派遣され訪問アセスメントを行う際も、上記電話アセスメントと同様の質問がされるケースが多い。

介護に向けた事前準備

「介護」と言っても、将来サービスの受け手となる本人の健康状態によりその内容はさまざまだ。一方で、「もしも」の時を考え事前に介護サービスを受けるための準備をするのであれば、大きく以下の4点の事前準備が挙げられる。

  1. セミナーや勉強会などに行き、大まかな介護の仕組みや掛かるコストを理解する。
  2. マイ・エイジド・ケアのウェブサイトに、資産と年収を基に介護コストを試算するページがあるため、そこに自分の現在の資産と年収を入れてコストをある程度把握しておく。
  3. 自身がどのような場所で最期を過ごしたいかを考え、機会があれば老人ホームなどを見学し、どのような所か、また行きたい老人ホームがあるのかなどを把握しておく。
  4. 家で介護を受けたい場合は、家に人が来てもらうこと(そして介護をしてもらうこと)に慣れておく。

施設ケア(老人ホーム)

施設での介護

もし在宅での介護が難しいと感じれば、考えなければならないのが施設での介護だ。一般的に「老人ホーム」と呼ばれる介護施設だが、オーストラリアの公的な介護施設は、要介護度の低い人を対象とした「ホステル」と要介護度の高い人の「ナーシング・ホーム」の2種類に分かれる。ただし、近年では同じ施設内で要介護度を上記の区分で分けることが多くなってきているため、これらの違いはほとんどなくなってきている。

サービスを受けるまでの流れ

実際に公的な介護施設でのサービスを受けることを希望する場合、介護保険の認定の場合と同様マイ・エイジド・ケアに連絡をすることから始まるが、施設入居までの流れは以下の通りとなっている。

  1. マイ・エイジド・ケアに連絡する。
  2. マイ・エイジド・ケアにより介護度のアセスメントを受け、介護度を認定してもらう。
  3. センターリンクで施設への入居を希望する本人の年収と資産の認定を受ける。
  4. 希望する介護施設に連絡し、部屋の空き状況を確認する。
  5. 希望する介護施設に空きがあれば、介護施設に行き入居日や必要な費用について調整する。
  6. 調整して双方が合意すれば入居。

想定される費用

介護施設への入居を考えた際に気になるのが、費用についてではないだろうか。介護施設入居に当たり掛かる入居金や住居費などの費用は施設により異なるため、一概に年間に要する費用などを知ることは難しいが、日々に掛かる費用の試算は入居者本人の年収と資産に基づきマイ・エイジド・ケアで行うことが可能だ。そして、入居者本人の年収と資産の状況により、求められる費用は以下のように大きく2通りに分かれる。

年収と資産が十分にない場合

年間に必要な費用などは年金の支給額以上に掛かることはなく、入居金なども保有資産以上に求められることはない。

年収と資産が十分にある場合

入居金は、施設のあるエリアの平均的住宅価格の80%程度とされている。その他、1日150ドル程度の生活費用が掛かるとされているが、収入、資産、健康状況などにより正確な費用は変動する。

施設を探す際の注意点

入居する施設を探す時、必要とされる費用以外にどのような点を気にして探すのが良いのだろうか。介護施設を探すに当たり、特に注意したいポイントは以下の通り。

  • 入居金はもちろん、日々のケアには幾ら掛かるのか、また追加でケアが必要となった場合に掛かる費用を確認する。
  • 食事とお風呂(シャワー)を始め、日々のアクティビティーにどのようなサービスが提供されているのかを確認する。
  • 面会時間がどのように設定されているかなど、家族や友人が訪問しやすいかを確認する。
  • 施設内の設備の充実具合や豪華さなどではなく、スタッフの対応やスタッフ1人当たりが受け持つ入居者の人数などを確認する(一般的に、スタッフへの負荷が少ない方が良いサービスが提供される傾向にある)。

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日本人スタッフが安心の介護を提供

ジャパン・トータル・ケア・サービス(JTCS)

シドニーで介護や高齢者向けのサービスを中心に事業を展開するジャパン・トータル・ケア・サービス(JTCS)。オーストラリアではなかなか受けることができない、日本ならではのおもてなし精神のあるサービスが顧客から高い評価を得ている。同社の特徴や今後の展望を代表の沼田貴史氏に伺った。

JTCS代表・沼田貴史氏
JTCS代表・沼田貴史氏

――シドニーを拠点に同社のサービスを始めたきっかけをお聞かせください。

家族と共に来豪し30年近く経ちますが、オーストラリアで老後を考えた時、身の回りをケアしてくれる日本人として安心して利用できるサービスがないことに気が付きました。また、オーストラリア在住の日本人には家族と離れて暮らす方々が多いため、将来的に介護などの福祉サービスに対して不安があるという声が多くあり、実際、自分の家族や友人が同じような不安を持っているのを長年見てきました。そこで、日本人が今後も安心してオーストラリアで暮らせるように、皆が安心して利用できる高齢者向けのサービスを立ち上げようと思ったことがきっかけです。

――高齢者向けサービスについてお聞かせください。

弊社には日本で看護士や介護士として働いてきた優秀な人材が多く在籍しているので、日本で仕事をした経験のあるスタッフにしかできない配慮が行き届いた、きめ細かいサービスを提供させて頂いております。

サービスは1回当たり2時間で、頻度は必要なだけ、お客様のご希望に応じて対応致します。サービスの提供可能エリアは、北はホンズビー、南はサザーランド、西はパラマタまでのエリアを目安に、シドニーの主なエリアをカバーしています。それらのエリア以外でもご相談頂ければと思います。

日本的なサービスの一例として、寝たきりの状況になっているオーストラリア人のお客様の髪の毛をスタッフのちょっとした気遣いで簡単に洗って整えて差し上げたということがありました。日本では何でもないようなことなのですが、ご本人やご家族の方々にこちらが驚くほど感謝して頂きました。ちょっとした例ですが、日本人の心のこもったケアは世界に誇れるものだと実感しています。

――日系の会社にしかできない日本品質のサービスとして、どのような点を大切に事業を行っていますか。

「安心」「安全」「信頼」をモットーに、皆様の快適なオーストラリア・ライフをサポートさせて頂けることができればと思っています。例えばトイレやキッチンでふきんを使い分けるなど、多くの日本人にとっては「当たり前」のことがオーストラリアでは通用しないことが多々あります。「当たり前」のことを当たり前に行うことで、お客様に日本にいるのと同じように安心して業務を任せて頂けるように心掛けています。

――サービスを提供する体制については、これまでに何か変化はありましたか。

介護事業を始め2年程経ち、複数の大きな団体との協力体制もできたので、総合的なケア・マネジメントなどを含めた介護に関する全てのことができる体制になりました。他団体の協力により、弊社では経済的に厳しい方でも政府から介護制度の認定をされた方であれば、実際に政府からお金が下りる前でもほぼ無料で介護を受けて頂けます。また、一般開業医(GP)とも連携し、介護が必要な皆様により介護にアクセスしやすい体制にもなっています。介護についてのワンストップとして気軽に相談して欲しいと思います。

――今後のビジョンを伺えますか。

2017年10月から新事業として、高齢者だけではなく、障がい者の方々を対象としたサービスも開始しました。障がい者の子どもを持つ日本人の方々がいることを日本人のソーシャル・ワーカーの方を通じて知る機会があり、こちらも日本人コミュニティーにとって必要なサービスであると思い、サービスを開始した次第です。

今後もオーストラリア在住の日本人の方々が安心して暮らしていけるサービスを提供していくのはもちろんですが、日本人の気配りあるサービスのすばらしさをオーストラリアのローカルの方々にも知って頂けるように、事業を展開していきたいと思っています。

ジャパン・トータル・ケア・サービス
■Tel: (02)8607-8333 ■Web: www.jtcare.com.au ■Email: info@jtcare.com.au ■備考:カード支払い可


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