今年もタックスリターンを万全に

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今年も万全な申告!タックス・リターン

タックス・リターンとスーパー返還の徹底解説

鳥居税務会計事務所 国家登録税理士・公認会計士 鳥居育雄

今年も7月からタックス・リターン(所得税申告)の季節を迎えます。この特集では「基礎知識編」「質疑応答編」「最新情報編」に分けて同制度について解説してありますので、これを読めば完全に理解でき、税の名人になれます。2012年10月31日までの申告に備えて、自分で計算してみてください。また、ますます重要になっているスーパーアニュエーション(国民退職年金)についてもご紹介します。

 

タックス・リターンを正しく理解しよう

20年以上の経験の中でよく「タックス・リターンできますか」というご質問を受けますが、その真意は「納めた税金を取り戻せますか」ということでしょう。しかし、タックス・リターンとは「税務申告」のことで、返金は「リファンド」と言います。そのため、この質問は「タックス・リターンを行うことで、リファンドがありますか」というのが適切です。 また上記以外にも、タックス・リターンにおいて次のような誤解がよくあります。

 

①タックス・リターンは、返金のある場合にのみ行えばよい。

…タックス・リターンを提出しなければならないケースは、法律で定められています。

②タックス・リターンをすれば、必ずお金が戻ってくる。

…タックス・リターンとは、税額計算を清算するもので、逆に支払う場合もあります。

③100ドルの必要経費があれば、100ドルが戻ってくる。

…実際の返還金額は、必要経費額に適用税率をかけたものです(適用される最高税率によって異なりますが、中堅所得層の場合には31ドル50セントの返金となります)。

④源泉徴収されている税額がなくても、タックス・リターンで返金される。

…タックス・リターンで返金される最高額は、源泉徴収されている金額です。源泉徴収金額がない場合、返金はありません(株式配当や教育費減税等を除く)。

ワーキング・ホリデー(WH)ビザ保持者は、基本的に税務上も「非居住者」となります。非居住者の場合、最低でも税率29%で払わなければならないので、申告時に返還される額はあまり多くはないだけでなく、逆に納税する場合もあります。しかしながら、税務上で居住者として扱われて多額の金額が戻る場合もありますので、必ず信用できる国家登録税理士に相談してから、タックス・リターンを行いましょう。

 

税務専門家に相談するのがベスト

近年、豪州国税庁( AT O ) がコンピュータ・システムの高度化で、税務関連情報の収集・分析・処理の能力を大幅に強化し、税務申告に対してとても厳しい姿勢に転換していますので、今まで以上に適正な申告が求められています。 また、インターネット上の怪しげなサイトでは、申告代行やタックス・リターンを代行すると言って返還金を全額だまし取ったり、多額の代行料を搾取したりするなどの事例も多数報告されています。

オーストラリア人でも7割以上の人が税務専門家に依頼し、タックス・リターンを行っていますので、自分で行おうとせずに、信用できる国家登録税理士にまず、相談してください。すると安全に申告できますし、実際に安くすみます。

 

基礎知識編

■ステップ1:タックス・リターン制度を完全理解

 

所得税の基本的な仕組みは、日本も含めて世界的にほぼ同じです。まず課税所得の計算方法など、タックス・リターンの仕組みを理解しましょう。

所得税の申告(タックス・リターン)

毎年7月から翌年6月(2012年度は、2011年7月1日〜2012年6月30日)までの収入や必要経費、そのほかの税務情報を記載した申告書(タックス・リターン)をATOに提出した後、ATOから課税所得額、税額などが通知されることにより、戻ってくる金額または納付すべき金額が決定されます。

納税者番号(タックス・ファイル・ナンバー)

オーストラリアで働く時、納税者番号(タックス・ファイル・ナンバー=TFN)を取得する必要があり、これを勤務先や金融機関に通知しないと、最高税率(46.5%)で源泉徴収されてしまいます。TFNを取得するには、ATO事務所またはインターネットなどで申請しますが、その時、有効ビザのあるパスポートをはじめ、運転免許証や銀行口座明細書など本人を確認する書類が必要です。最近、TFNが不正に使用される事例が増えているので、大切に保管しておきましょう。

居住者と非居住者

TFNの申請時に最も注意する必要があるのは、税務上の居住者(Resident)と非居住者(Non-resident)の区別です。この違いにより、納税額が大きく変わります。税務上の居住者・非居住者は、ビザ上の居住者・非居住者と必ずしも一致しません(以下の説明では、原則として税務上の居住者・非居住者を指します)。

通常、申告の対象となる年度に半年以上居住する人が「居住者」と認定され、永住権所有者、ビジネス・ビザで働く人、6カ月以上の学生ビザの保持者などが該当します。WHビザ保持者の場合は例外で、税務上では原則として非居住者となりますが、居住者と判断される場合もあります。

一般的には居住者の方が税務上有利で、TFNの申請時に誤って非居住者と申請した方や、WHビザから年度途中に学生ビザやビジネス・ビザなどに切り替えた方、WHビザを保持し、半年以上同一の場所に住んでいる方は、年度の途中から「居住者」と見なされ、多額の返金が期待できます(タックス・リターンで、居住者と申告します)。 また居住者は、オーストラリア国外の収入を含め、すべての所得を申告しなければならないのに対し、非居住者はオーストラリア国内で発生した所得のみを申告することになっています。

 

タックス・リターンの提出義務者

次に該当する方は、原則として2012年10月31日までに所得税の申告書を提出しなければなりません(前年度に国家登録税理士を利用した場合には、自動的に期日が延長されます)。

 

●居住者で、年間の課税対象となる所得金額が6,000ドルを超える人

●非居住者で、年間の課税対象となる所得金額が1ドル以上の人

●事業を行っている人や前年度に損失(赤字)の申告をした人

●居住者で、賃金や銀行利子などに対して源泉徴収された人(返金が期待できます)

所得税額の計算方法

所得税額の計算方法は、日本もオーストラリアもほとんど同じです。課税対象となる収入(給料、事業売り上げ、銀行利子、株式配当など)から必要経費を引いて、課税所得金額を算出します。

収入( A s s e s s a b l e I n c o m e ) − 経費(Allowable Deductions)=課税所得(Taxable Income)

この課税所得金額に表1の税率をかけて、所得税額を算出します。所得税の税率は累進課税(Progressive Tax)なので、税率は段階的に順次適用されます。適用される一番高い税率を最高適用税率(Marginal Tax Rate)と言います。課税所得金額に対する税額は、表中の速算式を用いて計算してください。 例えば、課税所得金額が4万ドルの場合「40,000×0.30−6,450で、税額は5,550ドル」となります(そのほかの控除を考慮しない場合)。

表1 ■所得税率(居住者の場合)

*メディケア課税(1.5%)を除く(前年度と同じ)

課税所得金額 税率(%) 税額速算式
〜6,000ドル 0 0
〜37,000ドル 15 ×0.15−900
〜80,000ドル 30 ×0.30−6,450
〜180,000ドル 37 ×0.37−12,050
180,001ドル〜 45 ×0.45−26,450

WHビザ保持者などの非居住者に対する所得税率は表2の通りです。6,000ドルまでの非課税分がなく、税率が始めから29%であることや、メディケア課税(通常は所得金額の1.5%)がないことが異なっています。 例えば、課税所得金額が4万ドルの場合、非居住者の税額は「40,000×0.30−370で、11,630ドル」となり、居住者と比べると、メディケア課税を計算に入れても、支払うべき税額が5,480ドル多くなることが分かります。

表2 ■所得税率(非居住者の場合)

*メディケア課税(1.5%)を除く

課税所得金額 税率(%) 税額速算式
〜37,000ドル 29 ×0.29
〜80,000ドル 30 ×0.30−370
〜180,000ドル 37 ×0.37−5,970
180,001ドル〜 45 ×0.45−20,370

次に、上記の計算で割り出した税額から、税額控除(Tax OffsetsやTax Credits)を引き、居住者の場合はメディケア課税額を加えて、支払税額(Tax Payable)を計算します。そして、この支払税額から源泉徴収された税額(PAYG Withholding)など、既に支払ってある額を引き、答えがプラスになればその金額を支払い、答えがマイナスになれば、その金額が返ってくるということになります。

 

源泉徴収票(PAYG Payment SummaryまたはGroup Certificate)

7月14日までに雇用主から被雇用者に渡される源泉徴収票には、氏名、納税者番号、雇用主の名称、源泉徴収額、支払給料額、各種手当の金額などが記載されています。タックス・リターンでは一番重要な資料なので、内容や金額を確認してください。間違いがある場合は、雇用主に申し出て、訂正してもらいましょう。なお、虚偽の源泉徴収票が不正に使われていることもあるので、管理には注意してください。

所得税の申告期限

2012年度タックス・リターンは、原則として今年の10月31日までに申告しなければなりません。国家登録税理士を利用する場合は、最長2013年5月半ばまで延長が認められます。申告により税金を追加して支払わなければならない場合、これらの期限を過ぎると、罰金や利子が加算されます。 一方、申告により税金が戻ってくる場合には、いつでも申告できますが、ATOが罰金を課すかもしれないと警告していますので、早く申告するに越したことはありません。

 

所得税の申告の方法

 

タックス・リターンを行う場合、次の3つの方法があります。

 

●国家登録税理士に依頼して行う

● ニュース・エージェンシーなどで「TAXPACK」を入手し、添付の申告書により行う

●ATOから納税ソフトウエア「e-tax」を入手し、インターネット上で行う

しかし最初に述べたように、オーストラリアでは多くの人が国家登録税理士を利用しています。専門的アドバイスで最大限に節税できること、無駄な時間が節約できること、2週間以内に還付されること、依頼時の料金が翌年度の必要経費となることなどの利点があり、英語に強くて所得税制度を十分に理解している方を除けば、信用のある国家登録税理士に依頼するのが無難なのです。

 

ステップ2:自分の税額と戻ってくる金額を概算

この1年間の源泉徴収票に記載された支給総額(Gross Payment)の額を合計し、そのほかの収入(銀行利息など)を加え、総収入額を出します。この額から収入のために自ら負担した必要経費(明細が不明な場合には300ドルと仮定)を控除します。そして、その控除後の金額(課税総所得金額)に、前述の表を用いて計算した税額を算出します(ビザ上の居住者の場合、メディケア課税1.5%を加えます)。

これにより得た税額と源泉徴収票に記載された源泉徴収額(Tax Withheld)を比較し、払い過ぎている場合は、その差額が返還されます(足りない場合には、差額を支払います)。

*これはあくまで概算です。正式な計算には、そのほかの要素が必要です。

 

質疑応答編

ここではタックス・リターンのさまざまな疑問についてお答えします。

<税金が戻ってくる理由>

Q なぜタックス・リターンをすると税金が戻ってくるのですか?

給料をもらっている人は、給料の支払いの度に税金が源泉徴収されています。この源泉徴収額は実際の額より多めに計算されていますので、タックス・リターンをすることで税金が戻ってくる場合が多いのです。

源泉徴収額は通常150ドルほど多めに徴収されているので、タックス・リターンを出すだけで約150ドルが戻ってくることになります。また実際には、控除できる必要経費や、まだ税金を払っていない銀行利子などもあるので、戻ってくる金額の目安は、次のようになります。

 

【簡易計算】150ドル+[(必要経費−銀行の利子など)×最高適用税率]*これは1年間継続して勤務した場合の概算で、途中で就職・退職した場合は、返還される金額がさらに多くなります。

<必要経費により戻ってくる金額>

Q 私の給料は3万8,000ドルです。仕事に必要な本や文房具に3 6 0ドル、昨年のタックス・リターンで110ドルを使いました。計470ドルは戻ってきますか?

よくある誤解なのですが、必要経費などで戻ってくる金額は、その必要経費の金額に最高適用税率(この場合30%)をかけた額です。したがって、この方の場合、(360+110)×0.3=141ドルになります。ただし、通常150ドル程度多めに源泉徴収されているため、実際には、150+141=約291ドルがタックス・リターンにより戻ってくると見込まれます(メディケア課税は除く)。

 

<学生ビザ保持者のタックス・リターン>

Q 私は学生ビザで1年間、レストランで働いており、給料は2万ドルで、源泉徴収額は2,200ドルでした。必要経費などは特にありません。私がタックス・リターンすれば、いくら戻ってくるのですか。

6カ月を超える学生ビザの保持者は、税務上は居住者扱いとなります。基礎知識編の表1にある税額速算式を用いた支払い税額は、「20,000×0.15−900=2,100ドル」です。そして、この方の場合はメディケア課税が免除されますので、「2,100−2,200=−100」となり、100ドル戻ってくることになります(実際には、このほかに低所得者税額控除があり、戻ってくる金額はさらに1,500ドル増加し、1,600ドルとなります)。

 

<WHビザ保持者のタックス・リターン>

Q 私はワーキング・ホリデーで住所を転々と変えながら複数の職場で働き、年間給料総額は2万ドル、源泉徴収額は2,200ドルでした。必要経費などはありません。タックス・リターンで、1,600ドルが戻ってきますか?

WHビザ所有者は税務上、原則として非居住者扱いなので、この方の支払うべき税額は、表2の税額速算式によると「20,000×0.29=5,800ドル」です。まだ2,200ドルしか払っていませんので、タックス・リターンをすれば、3,600ドルを追加して支払うことになります。これらの雇用主は手取り収入を多く見せるために、本来29%で源泉徴収すべきところを、居住者の徴収率である11%ですませたのだと思われます。 前例と比べると、学生ビザ保持者とWHビザ保持者とでは、結果が大きく異なります。WHビザで働く場合、税金の扱いでは通常「非居住者」と見なされ、税率が高くなることに十分注意してください(非居住者には、前問の低所得者税額控除(1,500ドル)は適用されず、この点でも非居住者は不利となります)。 ただしWHビザ保持者でも、半年以上同じ所に住んでいる場合は居住者と見なされることもあるので、国家登録税理士に相談してください(この場合には、前問の方と同じような扱いとなります)。

 

<申告料金を返還金から差し引く場合の注意事項>

Q 私はWHビザで働いていて、給料は1万ドルです。あるタックス・リターン代行事務所では、手数料を引いても数百ドルはすぐに戻ってくると言われました。本当でしょうか。

報酬を得てタックス・リターンを取り扱うには、国家ライセンスが必要です。ライセンスのない者がタックス・リターンを処理するのは、違法行為です。また、他人のためにタックス・リターンなどを行うことを「税務代理」と言います。代行という用語自体が税務の専門家でないことを示しています。 さらに、タックス・リターンのための料金を返還金から引くこと(Fee FromRefund=FFR)は手軽なようですが、料金が高く、結局、本人には損となります。悪質な代行屋は、多額の金額を抜いて、本人に返金します。FFRを利用する場合は、ATOが送付する課税通知書(Notice ofAssessment)を必ず入手してください。そこに記載されている還付金額と実際に手にした返還金額を確認しましょう。その差額が料金です。 またWHビザ保持者は、税務上の居住者とならない限り、多くの金額が戻ってくることはありません。同ビザ保持者で居住者となれるのは、6カ月以上同じ場所に住んでいるなど、長期間定住した事実が客観的にあることが原則となります(ATOから居住決定書(Determination of Residency)を入手する必要があります)。

<銀行利子に対する課税>

Q 普通預金口座を持っていますが、年間の利子5ドルに対して、手数料や口座維持料が30ドルでした。収入額に5ドルを加え、経費として30ドルを引けるのですか?

銀行利子などはすべて課税対象となります。その銀行口座が投資目的の場合(定期預金、投資信託など)、口座に対する費用はすべて必要経費になりますが、普通預金は日常生活のための口座であり、口座維持料などは必要経費にはなりません。 なお、銀行口座を2人で共有する場合は、それぞれ半分ずつ申告します。銀行口座の利子情報は、納税者番号を通してATOによりすべて把握されています。うっかり申告に含めるのを忘れると、後でペナルティーがかかりますので、十分注意してください。 また、銀行に納税者番号を届けていないために、付いた銀行利息から税金が源泉徴収されている場合があります。この場合、タックス・リターンで取り戻すことができるので、銀行から送られてくる口座明細書で確認しましょう。

<株式配当の課税>

Q 私は豪州企業の株式1,000株を持っており、1年間の配当額は150ドルでした。この数字だけを収入額として申告すればよいのでしょうか。

 

オーストラリアでは、株式配当に対してはインピュテーション(法人税株主帰属)方式が採用されており、受け取った配当額に加えて、会社が支払った法人税相当額(Franked Amount)も株主が受け取ったものとして計算され、最後にその法人税相当額が税額控除されます。 また、法人税が支払われていない株式配当(Unfranked Amount)では税額控除がなく、実際に受け取った150ドルに、法人税相当額64ドル(配当額に法人税率を考慮した7分の3をかける)を加えた214ドルがみなし株式配当所得となり、計算した所得税額から64ドルが税額控除されます。会社から送付される株式配当通知書を申告時まで大切に保管してください。

 

<年度の途中に日本へ永久帰国>
Q 私は6月1日に日本に帰国することになり、再びオーストラリアに戻ることはありません。この場合、タックス・リターンはどうするのですか。

オーストラリアの所得税は、7月から翌年6月までが計算期間ですから、7月前に出国する場合には、特別な申告が必要となります。

 

①出国前の申告 オーストラリアを出国する前に、源泉徴収票と必要経費などの資料がそろえば、出国前の申告が可能です。この場合は郵送で申告しますので、時間がかかります。還付される金額の小切手は、ATOにより日本の指定する住所に送付されます。豪ドル建ての小切手は、外国為替取扱銀行で日本円に交換できます。銀行口座を残しておく場合には、豪州国内の銀行口座への振り込みも可能で、ATOがそこに振り込みます。

②出国後の申告 出国前に、源泉徴収票と必要経費などの資料がそろわない場合、通常のタックス・リターンと同じ取り扱いとなります。出国前に関係資料を国家登録税理士に預け、提出された源泉徴収票により、7月以降に申告します。還付される小切手等の取り扱いは、事例①と同じです。

*帰国時のスーパー引き出しについては、後掲の質問と回答を参照してください。

<必要経費の請求限度額>

Q 昨年依頼した代行事務所は根拠のない業務関連費を申告し、多額の税金が返ってきましたが、不安になりました。必要経費はいくらまで請求できるのですか?

給与所得者に関する必要経費(Workrelated expenses)には、次のものがあります。

●業務のための自動車経費や交通費(通勤に関するものは認められません)●制服の購入費や洗濯代(通常のスーツや靴など認められません)

●自己研修費(仕事と密接に関連した授業料などで、英語やコンピュータ関連は通常不可)

●仕事に必要な書籍、文房具、携帯電話、コンピュータ、セミナーなどの費用

また、慈善団体への2ドル以上の寄付や、前年度に国家登録税理士に支払った費用など、税務申告にかかかった費用も必要経費の対象となります。業務に直接関連した費用を実際に支払い、領収書などで証明できるのであれば、限度額はありません。

しかし、ATOは、職業と収入額に応じた業務関連費の標準モデルを作っており、この基準を著しく超える場合には、説明を求め、詳細な資料の提出を請求することがあります。それでも同庁が納得しない場合には、税務調査が行われます。請求の根拠をきちんと説明できない場合、立証責任は納税者側にあり、最終的には罰金などを支払わなければならないことになります。

オーストラリアでは自主申告制度(SelfassessmentSystem)が採用されており、申告された内容は正しいものとして扱われ、課税通知書(Notice of Assessment)が送付されます。その後に、必要に応じて詳細な机上調査が行われ、疑わしい場合には、実際に税務調査を行います。納税通知書を受け取ったからといって、安心はできません。数年後の税務調査もあるからです。

ATOは職務関連経費の増加に年々神経をとがらせており、態度は非常に厳しくなっています。十分な根拠のない請求には大きなリスクが伴うことに注意してください。

<メディケア課税と洪水税>

Q ビジネス・ビザで課税所得金額は6万ドルですが、税額1万2,000ドルのほかにメディケア課税900ドルが徴収されています。これは何ですか。

オーストラリアでは、メディケア(国民医療保険)の費用をまかなうために所得金額の1.5%でメディケア課税が行われています。また、独身者で所得などの金額が8万ドル、家族持ちで16万ドルを超える方で、適格な民間医療保険(入院給付のあるもの)に加入していない場合は、1%の超過課税(Surcharge)が行われます。 しかし、オーストラリアの市民・永住権を持たない方は、この国民医療保険を利用できないので、1度課税されたこの1.5%相当分をタックス・リターンにより取り戻すことができます。そのためには、健康保険委員会(Health InsuranceCommission)の発行する課税免除証明書が必要となります。後日、ATOはこの証明書の提示を求めてきますので、保管が必要です。

<税理士に依頼する場合の留意事項>

Q 税理士にタックス・リターンを依頼しますが、どんな点に注意すべきですか?

自分の状況をできるだけ細かく説明し、分からない点はすべて質問して完全に理解・納得した上で、タックス・リターンを行うことが非常に重要です。そのためには、税理士との十分なコミュニケーションが何よりも大切です。また代行と称して、国家資格がないのにタックス・リターンを取り扱うのは違法なので、くれぐれも注意してください。

 

最新情報編

このほどタックス・リターンにおいて、以下のような変更が行われました。

●教育費減税

…2012年度連邦予算案でスクールキッズ・ボーナスの導入が決まり、これが従来の教育費減税(Education Tax Refund=ETR)に取って代わる。詳しくは以下のサイトを参照。

Web: www.educationtaxrefund.gov.au/index.html

●医療費税額控除

…ネット医療費(医師などに対する支払額から、メディケア返還金や保険受取金を引いたもの)が2,000ドルを超える場合、超えた金額の20%が税額控除となる。

●洪水税

…近年多発している洪水で被害を受けたインフラ施設を補修するための費用として充てられる、2011/12年度限りの賦課金「洪水税(Flood Levy)」が適用される。課税総所得金額の1.5%で課税されるが、課税総所得金額が5万ドル以下の人や、洪水の被害を受けたと認定された地域の人などには適用されない。

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今年も万全な申告!タックス・リターン

タックス・リターンとスーパー返還の徹底解説
ミニ・コラム:増税時代を迎える日豪両国 経済低迷に悩み続けた日本は、景気を刺激するために所得税を中心に減税をしばしば行ってきましたが、税収が落ち込み、今では税収よりも国債収入の方が多いという、異常な財政状況になっています。遅まきながらこれではまずいと気が付いた野田内閣は、消費税の引き上げを提案しています。今後も相続税の増税が予定されおり、所得税の見直しも避けられないでしょう。 堅調な経済成長を背景に、毎年のように大幅な所得税の減税が行われてきたオースラリアも、財政的に転換期を迎えています。炭素税(Carbon Tax)や鉱物資源利用税(MRRT)の導入に伴い、税体系そのものが大きく変わる可能性もあります。しかし今回のタックス・リターンに関しては、これらの税が実際に機能するのが2012年7月以降となり、直接は関係ありません。
スーパーアニュエーションのすべて

スーパーアニュエーションの課税

スーパーアニュエーション(Superannuation)とは国民退職年金のことで、雇用主は支払い給与額の9%(現行。2013/14年度から引き上げられ、2019/20年度には12%の予定)の金額を、被雇用者のためにスーパー運用基金(Super Fund)に支払う義務があります。雇用主は、どこの運用基金にいくら支払ったのかを3カ月ごとに被雇用者に文書で知らせる義務があります。つまりスーパーとは、被雇用者が自分で預金しているのと同じことなのです。

運用基金に預けられた時点で15%の税金が取られますが、その後は運用により、毎年少しずつ増えます。原則として60歳になると引き出すことができ、法律の改正で優遇が大幅に拡大され、60歳以降の退職に伴う引き出しは全額無税です。

一時滞在ビザ(学生、WH、駐在員など)の所有者が永久的に出国する場合には、60歳を待たずに例外的に全額を引き出すことができます。最終的に手にする金額は、少なくてもオーストラリアでの給与総額の5.5%程度と考えてください。例えば、合計10万ドルの給与を得た場合、最低でも約5,500ドル(税引後)と見込まれます。

 

スーパーアニュエーションに関連するポイント

①スーパー・ファンドの選択

就職時、スーパーを運用するファンドを自分で選ぶことができ、何も言わないと会社指定のファンドにされます。勤務先が1カ所だけならあまり問題ありませんが、2カ所以上のファンドがあると運用費用も割高で、後で請求する時にも手間となります。現在2つ以上ある場合は、残高が一番大きいファンドに統合しましょう。

②スーパー残高の確認

ファンドからは毎年1回以上、残高などについての資料が送られてきます。転居した場合などには必ず届け出て、直近の残高を確認しましょう。

③帰国に伴うスーパーアニュエーションの引き出し手続き

一時滞在ビザ保持者が永久的に出国する場合、その時点でのスーパー残高を引き出すことができ、一律35%の税率で課税されます。申請は日本から行い、小切手が日本に郵送されます。必要な手続きなどは、スーパー・ファンドにお問い合わせください。

帰国時のスーパーの引き出しには、一時滞在ビザであること(永住者ビザの方は、そのままではできません)、ビザが失効または期限切れであること、オーストラリアを出国したことが条件となっています。

法改正により、出国後5年以内に請求しないと、連邦政府が没収することになっています。いずれにしても、スーパーは自分で貯金するのと同じで重要なものなので、帰国後は速やかに返還請求してください。

本記事に関する質問やお問い合わせは以下まで。

【記事提供】鳥居税務会計事務所 国家登録税理士(登録番号77597001)公認会計士 鳥居育雄Tel: (02)9241-3216

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