守秘義務は守られていますか?


労働・雇用法弁護士 勝田順子の
職場にまつわる法律の話

第14回 守秘義務は守られていますか?

今日のビジネスにとって、機密情報と位置付けられる情報は、最重要とも言えるビジネスの資産です。その中でも顧客情報は価値がある故に、元従業員が離職後にそれらの情報を使って新たな競業ビジネスを始めることも少なくありません。外部に漏えいしたり、元従業員が利用したりしないように雇用契約書の中に守秘義務規定を盛り込んでいる人も多いですが、守秘義務規定をどうやって順守させるのか、損害賠償請求ができるのかは守秘義務規定の記載ぶりを含めさまざまな要素が関連してきます。

顧客リストの扱いに関連する判例をご紹介します。

● 顧客リストは機密情報だが、顧客の連絡先などのメモ書きを含む勤務日誌は社員の一般知識、スキル、経験の性格が強く、機密情報とは言えず返却義務はない。ただし、日誌が会社から支給されていたものであれば、ノートが会社の所有物なので返却しなくてはならない。

● クライアントの名前を元社員が覚えていて、離職後に連絡先を独自に入手して連絡を取っていた場合、守秘義務違反にならない。ただし、競業禁止規定に違反するので競業によって発生した損害を請求できる。

● 社員が就任前から持っていた人脈は、勤務を経ても会社の機密情報とはならない。

● レシピや物作りの工程は、覚えていることであってもこれを漏えいさせたり利用してはならない。これは、レシピや工程はビジネス独自のものであり公になっていないことから、機密性が高いため。

裁判で損害賠償を得るには、機密情報の使用によって実害が発生したことの証明が求められます。それが難しい場合には、顧客リストの返却や、使用を禁止する裁判所命令が救済措置として取られます。

守秘義務規定の中に盛り込むべき事項

● 何が機密情報であるか明確にすること。(社員が受け取った名刺は?社員が作成したプレゼン資料は?写真は?)

● 機密情報の持ち出し・漏えいと本人や第三者の利益のための使用の両方を禁止すること

その他、雇用契約書や社内規定への採用を検討すべき事項

● 会社が提供するツールを使って仕事をすること。会社のメール・アドレス、携帯電話、ノート・パソコン、USB、スケジュール帳、ノート・パッドなど。私物を使って仕事をしないこと。

● それらのツールで作成された記録やデータは、会社の所有物とすること。

● それらのツールや記録、データは、離職する時に返却すること。

● 機密情報のコピーは業務で必要な時以外取らないこと。必要がなくなれば都度速やかに破棄すること。また、離職する時に返却すること。

● 離職直後の競業を禁止すること。

機密情報は多重構造で保護することが効果的です。守秘義務だけでなく多様な角度から社内規定や雇用契約書の見直しをされるのも良いでしょう。



PROFILE

2004年に来豪。シドニー法科大学院卒(Graduate Diploma in International Law)。09年にNSW州弁護士登録。専門分野は労働・雇用法。Katsuda Synergy Lawyers(カツダ・シナジー・ロイヤーズ/www.katsuda.com.au)の代表弁護士。 複数の弁護士事務所と協業体制をとり、企業法務全般、訴訟、家族法や移民法(ビザ)をはじめとする幅広い分野において専門性の高いリーガル・アドバイスを提供している。連絡先: contact@katsuda.com.au

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