オーストラリアにおける駐在員の個人所得税申告について

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税務&会計 REVIEW

アーンスト・アンド・ヤング ディレクター
ジャパン・ビジネス・サービス
篠崎純也

著者プロフィル◎オーストラリア勅許会計士。2002年EYシドニー事務所入所。日系企業や現地の企業の豊富な監査・税務経験を経て、現在NSW州ジャパン・ビジネス・サービス代表として日系企業へのサービスを全般的にサポート。
オーストラリアにおける駐在員の個人所得税申告について

オーストラリアで就業する個人は特定の法律によりオーストラリア税制の対象外となる場合を除き、日本人駐在員を含め、個人所得税申告を行うことが義務付けられています。今月号では、駐在員の個人所得税申告について、概要を説明します。

オーストラリア税務コンプライアンス

オーストラリアに到着後、オーストラリアで納税義務のある個人はオーストラリア納税者番号(Tax File Number、TFN)を申請する必要があります。

TFNはオーストラリア税務当局(ATO)が発行する固有の納税識別番号です。雇用者が年間を通じて税金をATOに納付し、個人が年一度の所得税申告を行う際にTFNが必要になります。個人はオーストラリアの銀行に対してもこのTFNを提出する必要があります。TFNを提出しない場合、利子所得に対して最高税率で源泉税が徴収されます。

TFNの申請方法はオーストラリア入国の際のビザの種類によって異なります。サブクラス457などの就労する権利のあるビザを持つ個人がオーストラリアに入国する場合、オーストラリア国内に到着後、オンラインでTFNを申請することが可能です。 iar.ato.gov.auでのオンライン申請は年中行うことができます。

オーストラリアの課税年度は7月1日から6月30日まです。所得税申告は通常10月31日までに行う必要があります。ただし、タックス・エージェントが代理で個人所得税申告の準備および提出を行う場合は申告期限が延長されます。

オーストラリアの税制度は自己申告に基づいており、オーストラリアで課税対象となる所得がある場合、所得税申告を行う必要があります。ATOは基本的に、提出された申告に基づいて申告課税通知書(Notice of Assessment)を発行しますが、必要に応じて後日申告漏れなどに対する通知を行う場合があります。

申告書の共同提出は認められていないため、同伴する配偶者も所得税申告を行う必要がある場合は、TFNを申請し個別に所得税申告書を提出しなければなりません。

税務上の居住者区分および課税率

オーストラリアの税務上における個人の納税義務は、税務上の居住者区分および所得源泉によって異なります。

税務上の居住者区分には、居住者、非居住者、一時居住者があります。税務上のオーストラリア居住者は全世界中の所得が課税対象となります。非居住者はオーストラリアを源泉とする所得に限って課税対象となります。一定の条件を満たす一時居住者は、税務上の「一時居住者」とみなされ給与所得とオーストラリアを源泉とする投資所得の全額が課税対象となります。また海外を源泉とする投資所得や特定のキャピタル・ゲインなど、一定の所得についてはオーストラリアで課税対象外となります。

税務上の居住者および一時居住者の場合居住者税率(表参照)に基づき課税されます。また非居住者の場合、非居住者税率に基づき課税されます。

個人所得税 – 居住者

課税所得 累進課税 税額
 $0~$18,200 なし  なし
 $18,201~$37,000 19%  $18,200超の範囲につき$1当たり19セント
 $37,001~$80,000 32.5%  $3,572+$37,000超の範囲につき$1当たり32.5セント
 $80,001~$180,000 37%  $17,547+$80,000超の範囲につき$1当たり37セント
 $180,000~ 47%*  $54,547+$180,000超の範囲につき$1当たり47セント

*$180,000以上の課税所得については2%の予算均衡化税が含まれます。
上記の税率には2%のメディケア・レビーは含まれていません。民間保険に加入していない個人に対して発生するメディケア・レビー・サーチャージ(健康保険税課徴金)も含まれていません。

オーストラリアで就労する日本人

サブクラス457などの長期滞在者ビザによってオーストラリアで就労している(その他すべての基準を満たす)日本人は、オーストラリアの税務上、一時居住者とみなされる可能性が高くなります。

一時居住者であるほとんどの日本人駐在員は、オーストラリアでの雇用に関連する給与、手当て、ボーナスがオーストラリアで課税対象となります。個人の給与やボーナスの一部が海外で支給されたり個人の海外の口座に入金される場合でも、所得が個人のオーストラリア国内での雇用に関連するものであればその所得はオーストラリアで課税対象となります。

住居、自動車、一時帰国休暇、子どもの学費、従業員に提供される転勤のサポートなどの現金を伴わないベネフィットは一般的に所得税の課税対象とはなりませんが、雇用主に支払義務があるフリンジ・ベネフィット税(FBT)の課税対象となります(ただし免除や優遇税制の適用あり)。

一部の個人は報酬の一部として従業員持株制度により自社株を受け取る場合があります。オーストラリアの税制上、報酬の一部として受け取る株式は雇用に対する所得とみなされ、一定の時期にオーストラリアの課税対象となります。例えば、従業員に株式の所有権が付与された時点で、オーストラリアの課税事象が発生することになり、これらの株式に関連する金額は当該年度のオーストラリアの取得税申告に含める必要があります。

 

■投資所得

一時居住者の場合、オーストラリアを源泉とする投資所得のみがオーストラリアにおける課税対象となります。例えば、オーストラリアの銀行口座から得られる利子所得がそれにあたります。日本にある銀行口座から得られる利子所得のような海外の投資所得は、オーストラリアの課税対象にはなりません。
 一方、一時居住者のキャピタル・ゲインについては、キャピタル・ゲインがオーストラリアの不動産のような「課税対象オーストラリア資産(Taxable Australian Property、TAP)」から得られる場合を除き、一般的にオーストラリアにおける課税対象とはなりません。

 

■控除

経費がその性質上、資本またはプライベート目的のものではなく、かつ所得の獲得に必要な場合には、当該経費を個人で控除することができます。一般的に、所得を生み出すために発生した必要経費は控除することができます。控除経費が合計300ドルを超える場合には、その控除額を証明するための書類が必要です。
 また、登録されているオーストラリアの慈善団体への寄付、個人の税務申告に関連して発生する経費も控除することができます。

その他の留意点

■退職年金(スーパーアニュエーション)

オーストラリアには、雇用主が従業員に代わって給与の一定割合以上の退職年金額を拠出する義務を課す強制退職年金加入制度があります。
 ただし、日本とオーストラリアは2国間社会保障協定を締結しているため、雇用者はオーストラリアで就業する日本人駐在員の日本での年金拠出を継続して行い、社会保険庁発行の社会保険加入証明書(Certificate of coverage)を入手することによって、オーストラリアでのスーパーアニュエーション制度への拠出義務の免除を受けることができます。

 

■メディケア・レビー(健康保険税)

税務上居住者とみなされる個人は一般的にメディケア・レビー(2%)が課税されます。メディケア・レビーは個人の課税所得に応じて算出され、納税者にメディケア・サービス受給資格がある場合の医療サービスの費用を補てんすることを目的とします。
 一時居住者ビザでオーストラリアで就業している日本人の場合、通常メディケア・サービスの受給資格がないため、メディケア・レビーの免除を受けることができます。免除を受けるためには毎年年度末後にメディケア・レビー免除証明書を申請する必要があります。
 メディケア・レビー免除証明書とは、メディケアの受給資格がないためにオーストラリアの税務申告においてメディケア・レビーの免除を受けられるということを確認するための書類です。

 

※この記事は出版時の時点で適用される一般的な情報を掲載しており、アドバイスを目的としたものではありません。この情報を基に行動をされる際には、専門家のアドバイスを受けることをお勧めいたします。

コンタクト:

篠崎純也(シドニー)
(02)9248-5739
Email: junya.shinozaki@au.ey.com

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