IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」をめぐる最近の動向

税務&会計Review

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アーンスト・アンド・ヤング
ジャパン・ビジネス・サービス/監査 
清水規史

プロフィル◎公認会計士。IFRS、USGAAP及び日本基準に基づく監査を専門とし、豪州をはじめ世界各国へ展開するグローバル企業に対する監査業務経験が豊富。

IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」をめぐる最近の動向

収益認識基準が大きく変わろうとしています。国際会計基準審議会(IASB)及び米国財務会計基準審議会(FASB)は、包括的で首尾一貫した収益認識基準を策定すべく共同で基準開発を行いました。その成果は5ステップ・アプローチを基軸とするIFRS第15号として2014年に公表されました。収益認識は、業種を問わず全ての企業にとって最も重要な会計トピックの1つである一方、IFRS第15号の内容は広範かつ複雑であり、今なお審議や改訂提案が継続してなされています。今月号では、当該IFRS第15号をめぐる最近の動向について解説します。

概要

2014年5月、国際会計基準審議会(IASB)は、米国財務会計基準審議会(FASB)とともに、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」を公表しました。これは既存の収益認識基準(IAS第11号及びIAS第18号並びに関連する解釈指針)に代わるものであり、収益認識に関する包括的なフレームワークを提供するものです。当初公表後、IASBは、以下で説明するいくつかの審議及び改訂提案を実施しています。

IASBがIFRS第15号の適用を1年延期することを決定

当初公表時には、IFRS第15号は17年1月1日以後開始する事業年度から適用するとされていました(早期適用可)。しかしながら、IASBは利害関係者からのフィードバックなどを検討した結果、適用日を1年延期することを決定しました。これにより、IFRS第15号は18年1月1日以後開始する事業年度から適用されることになります(早期適用可)。

IASBがIFRS第15号の明確化を提案

15年7月30日、IASBはIFRS第15号に対する以下の明確化を提案する公開草案を公表しました。IASBは、受領したコメント・レターを検討し、15年末までに当該公開草案の再審議を完了させる見込みです。

どのような場合に、顧客が権利を有する知的財産に企業の活動が重要な影響を及ぼすのかを明確化(収益を一定期間にわたり認識するのか、または一時点で認識するのかを判断する際の検討要素)

当該明確化は、知的財産のライセンスに係る収益を一定期間にわたり認識するために満たす必要のある3つの要件のうちの1つに関するものです。知的財産に重大な影響を及ぼすことが明確化されたライセンサーの活動は以下のいずれかの場合となります。

(a) 顧客が権利を有する知的財産の形態または機能性を変化させる
(b) 知的財産から便益を享受する顧客の能力に影響を与える

知的財産が、重要な独立した機能を備えている(すなわち、ライセンサーの活動が知的財産の機能性に著しい影響を及ぼさない)場合、収益は一時点で認識されることになります。

関連するライセンスが独立した履行義務でない場合に、どのように知的財産のライセンスに係る売上高及び使用量に基づくロイヤルティに関する例外規定を適用し、収益を認識するのかを明確化

契約における主要な項目が知的財産のライセンスである場合、売上高または使用量に基づくロイヤルティに関する例外規定は、ロイヤルティ全体に適用されることが明確にされています。これは同時に、こうした種類の契約における売上高及び使用量に基づくロイヤルティーは、その一部が売上高または使用量に基づくロイヤルティーに関する例外規定の対象となり、残りは一般的な変動対価に係る制限規定の適用対象になることはないという点も明確にしています。

どのような場合に約定した財またはサービスが契約の観点から区別できるのかを明確化(関連する設例を改訂)

既存の設例の一部を改訂し、約定した財またはサービスが契約における他の約定から「区別して識別できる」(すなわち、契約の観点から区別できる)か否かをどのように判断すべきかを明確にしています。財またはサービスを移転する約定が、契約における他の約定と区別して識別できるかどうかを評価するにあたっては、財またはサービスを移転する複数の約定の一体性、相互関連性または相互依存性の程度を考慮します。単にある項目がその性質上、他の項目に依存しているか(すなわち、2つの項目が機能的に関連しているか)どうかを評価するのではなく、契約の履行過程で2つの項目の間に互いを変換することになるような関係(すなわち、それらの項目を個々の項目とは異なる他の何かに変換することになる関係)が存在するかどうかを評価する必要があります。

本人か代理人かの指標を見直すとともに、支配の原則をどのように他の当事者が提供するサービスに適用するのかを明確化(関連する設例を改訂、本人か代理人かに関する適用ガイダンスの適用方法を明らかにするために2つの設例を追加)

他の企業が顧客への財またはサービスの提供に関与している場合、企業は、その履行義務が財またはサービスを提供することなのか(この場合、企業は本人となります)、または他の企業が財またはサービスを提供することを手配することなのか(この場合、企業は代理人となります)を判断する必要があります。この判断は、顧客との約定の性質を評価することにより行います。現行IFRS第15号は、企業が代理人であることを示す非網羅的な指標を提示しており、これらの指標に対するいくつかの改訂、及び適用ガイダンスを明確にするための2つの新たな設例の追加が提案されています。

経過規定に2つの実務上の便法を追加:
(a) 完全遡及適用アプローチでの下での完了済みの契約
(b) 移行時における契約変更の取り扱い

移行時の会計処理の負担を軽減するために、新たに2つの実務上の便法を設けることが提案されています。完全遡及適用アプローチを採用する企業は、表示される最も古い期間の期首時点で完了していない契約に対してのみ、新たな収益認識基準を適用することが容認されています。

いずれの経過措置(すなわち完全遡及適用アプローチまたは修正遡及適用アプローチ)を採用している企業であっても、契約締結日と表示される最も古い期間の期首の間に生じた契約の変更について、各変更の影響をそれぞれ別個に会計処理することなく、両期間の間に生じたすべての変更の累積的な影響を算定することが容認されています。

「完了した契約」の定義についてIASBが審議

15年9月の審議にて、IASBは「識別された財及びサービスのすべてを企業が移転した契約」と定義されている「完了した契約」について、改訂を提案しないことを暫定的に決定しました。当該決定は、前述した移行アプローチに基づいて企業が評価しなければならない契約の数に影響を与えます。

今後の展望

IFRS第15号は、現行IFRSから大きく変更されています。本稿で解説した適用日の1年延期、経過規定に対する実務上の便法の追加提案などは、新たな収益認識基準への準備を進める企業にとっては朗報といえるでしょう。しかしながら、これは同時にIFRS第15号の適用に際しては、企業にとって多くの取り組みが必要となるであろうことも示唆しています。混乱なく新基準へ移行できるように、企業はITシステムを含む適用計画を着実に進め、また今後の進展を注視することが重要であると考えられます。

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※この記事は出版時の時点で適用される一般的な情報を掲載しており、アドバイスを目的としたものではありません。この情報を基に行動をされる際には、専門家のアドバイスを受けることをお勧めいたします。

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