強制適用までもうすぐ! IFRS第16号「リース」の概要

税務&会計 REVIEW

EYジャパン・ビジネス・サービス
監査シニア・マネージャー
三井洋介

プロフィル◎EYメルボルン事務所の駐在員。日本公認会計士。IFRS、USGAAP及び日本基準に基づく監査を専門とし、豪州を始め世界各国へ展開するグローバル企業に対する監査業務経験が豊富。日豪通算で約15年にわたる実務経験を有する。

強制適用までもうすぐ! IFRS第16号「リース」の概要

倉庫や店舗に関するリース契約をオペレーティング·リースとして識別し、会計上支払リース料を単に毎期定額で費用計上している企業は多いと思います。しかし、今回リース基準の改訂によって会計処理が大きく変わります。会計実務に従事する方のみならず、この変更が財務諸表にどのような影響を与えるのか、マネジメントの方にも当記事をご一読してもらえればと思います。

現在の国際会計基準におけるリース会計基準は、IAS第17号「リース」ですが、新たにIFRS第16号「リース」が公開されており、2019年1月1日以降開始する事業年度から適用されることが決まっています。新IFRS第16号が、現行IAS第17号または日本のリース会計基準とどのように違うのか理解し、導入に備えましょう。

IFRS第16号の概要とIAS第17号からの変更点

現行基準であるIAS第17号「リース」では、リース取引を原資産から得られる経済価値とリスクとの関連で捉えています(「リスク・経済価値モデル」)。日本の現行リース会計基準は、IAS第17号を踏まえて改訂されたものですので、両者の差異は大きくはありません。

一方で、IFRS第16号「リース」では、リース対象物を使用する権利を支配しているかどうかで捉えており(「支配モデル」)、リースの基本的な考え方に転換が見られます。これにより、リースの定義が変更され、貸し手の会計処理に実質的な変更がない一方、借り手の会計処理においてはファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区別がなくなり、貸借対照表上に「使用権資産」及び「リース負債」を認識する単一のオンバランス・モデルを採用するという大きな変更がなされています。

これは、現行のIAS第17号におけるオペレーティング・リースの借り手はリース料を費用として処理するのみであり、リースに関する資産や負債を認識しないため、貸借対照表が取引の実態を表していないという批判に応えるものです。IAS第17号及びIFRS第16号の主要ポイントは以下の表の通りです。

現行IAS第17号 新IFRS第16号
基本的な考え方 リスク・経済価値モデル 支配モデル
リースの定義 貸し手が一括払いまたは数次の支払いを得て、契約期間において、資産の使用権を借手に移転する契約 資産を使用する権利を一定期間にわたり、対価と交換に移転する契約
借手の会計処理 ファイナンス・リースまたはオペレーティング・リース 単一のオン・バランス・モデル(「使用権資産」及び「リース負債」を認識)
貸手の会計処理 同上 ファイナンス・リースまたはオペレーティング・リース(実質的な変更なし)

いつから適用か

IFRS第16号は、19年1月1日以降開始する事業年度から適用されます。

導入に向けてやるべきこと

これまでの説明の中で、会計基準の変更に伴う最も重要な変更点は、今までオペレーティング・リースとして会計処理されていた契約をファイナンス・リースと同様に財務諸表にオン・バランスする必要があるという点です。この重要な会計基準差に着目して以下の通り構成されています。

① 契約におけるリース構成部分と非リース構成部分の識別と区別

例えば、小売業者への店舗のリースには、共有部分のメンテナンス(建物共有部分の清掃など)やその他のサービス(電気·ガスなどの供給やごみの撤去など)に対する支払いが含まれていることが多いですが、このような活動に対する支払いは借り手にサービスを提供するものであるため、非リース構成要素とみなされます。非リース構成要素は、それぞれのサービスの独立価格の比率に基づいて、配分することが求められます。

一方で、実務上の簡便法として、非リース構成要素がリース構成部分と比べて重要性がない場合には、単一のリース構成要素として(区分せずに)会計処理をすることができます。

② リース期間の評価

リース期間は、リースの開始日から始まり、リースの解約不能期間に以下の2点を加味することにより決定されます。

  • (1)リースを延長するオプションの対象期間(借り手が当該オプションを行使することが合理的に確実である場合)
  • (2)リースを解約するオプションの対象期間(借り手が当該オプションを行使しないことが合理的に確実である場合)

この契約期間の決定には、オプションの有無とそのオプション価格設定を踏まえた上、経済合理性が保たれる期間であると共に、リース資産の借り手にとっての営業上の重要性(使用しないことによるビジネス上の重要性)を考慮する必要があります。

③ リース資産を資産計上

リース構成要素に対するリース料とリース期間が確定すると、リース料総額及びリース負債が確定します。このリース負債の金額と通常の固定資産の取得原価を構成する直接コストを加味した金額が固定資産の取得原価となります。

借り手は、全てのリース契約について、リース期間にわたり原資産を使用する権利である「使用権資産」、リース料の支払義務である「リース負債」をそれぞれ貸借対照表上で認識することが要求されます。リース契約開始後は、リース負債は時の経過に伴う利息費用により増加し、リース料の支払いに伴い減少します。

④ 開示への影響

使用権資産及びリース負債は、貸借対照表上、他の資産または負債と区分して表示するか、注記において個別に開示します。

リース負債から発生した利息費用、使用権資産から発生した減価償却費は、損益計算書上でまとめることはできず、別個に表示します。キャッシュ・フロー計算書においては、リース負債の元本返済は財務活動に表示し、支払利息はIAS第7号「キャッシュ・フロー計算書」に従い企業が選択した会計方針に基づき、営業活動または財務活動に含めます。

会計処理の重要性基準

リース期間が12カ月以内の短期リース契約、原資産が小額な小額リース契約(OA機器など)に限り、現行のオペレーティング・リースに準じた処理が許容されます。

移行時の開示またはアプローチ

①IAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」を適用し、表示する過去の報告期間全てに遡及適用する(完全遡及適用アプローチ)、②適用開始に伴う累積的影響を、適用開始日の利益剰余金の期首残高を修正して認識する(修正遡及適用アプローチ)のいずれかの移行アプローチを適用する必要があります。

主要業績指標への影響

借り手が定額法によりリース資産の減価償却費を行う場合、オペレーティング·リースとして会計処理をしていた時と比較して、リース期間の初期において、より多い費用が発生することになります。これは、毎期の支払利息が、リース負債の金額によって計算されるためであり、時の経過と共にリース料の支払いによってリース負債額が減少するためです。一方で、KPIにEBITを利用している企業では、支払利息はEBITに含まれないため、リース会計の変更によりEBITが増加します。そのため、導入を踏まえた予算策定や今後の事業プランの検討が必要になります。

最後に

今回の掲載で、今後のリース会計の変更に少しでもイメージを持ってもらえたらと思います。当該影響分析は、IFRS第16号の導入による影響がいかに重要であるかを示しており、各企業は自社への影響を精査し、新基準導入への準備を早急に開始することが必要です。リース会計は、複雑なトピックの1つであることから、不明な点は些細な事と思われる場合でも一度専門家に相談することをお勧めします。

※この記事は出版時の時点で適用される一般的な情報を掲載しており、アドバイスを目的としたものではありません。


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