Aリーグ・セミファイナル展望―勝者を決める日程のハンディ

文・植松久隆(ライター/本紙特約記者)

 佳境を迎えるAリーグ。セミファイナルに4強が出揃ったが、何とも興味深い組合せとなった。セミファイナルの2試合ともに、勝敗のカギは“日程”にある。

 まずは、レギュラーシーズンを圧倒的な強さで制したブリスベン・ロアがメルボルン・ビクトリーを迎える試合。この試合で注目すべきは、ロアのエースFWベサート・バリシャ。Aリーグ事情に詳しい読者であれば既に知っているであろうが、バリシャは、シーズン中に既に来季はビクトリーと契約して移籍することを公表している。3季に渡って所属し、72試合で46得点を挙げてきたロアでのキャリアのクライマックスで、バリシャは高額契約で移籍する来季所属先と顔を合わせることになった。来季のチームメート相手に容赦なくゴールを叩きこめるか、それとも微妙な心境が妙な気負いになって不発に終わるか、バリシャの出来はこの試合の大きな見どころとなる。 

 とはいえ、今年のロアの強さは、バリシャ個人の出来に左右されないところにある。ビクトリーとの対戦は、レギュラーシーズンでも3試合で2勝1敗と勝ち越しており、中盤の構成力に上回り、どこからも点が取れるロアに一日の長があるのは間違いない。

 さらに、ロア有利を強力に後押しするのが、日程だ。ビクトリーは、22日、アウェーで勝たねばグループリーグ敗退が決まるACL・全北現代戦を控え、主力のほとんどは韓国遠征に帯同、試合にも出場する。そして、中3日で大事なセミファイナル、しかもブリスベンへの遠征というスケジュールが待ち構えている。その間、一方のロアはずっと本拠地に腰を据えて準備ができるだけに、この日程の負担の差異は、ロアにとって大きなアドバンテージになる。

 ビクトリーは、レギュラーシーズン最後半6試合とファイナル初戦の計7試合を、ACLと併行の過密日程を消化しながら、4勝2分1敗と安定した戦いぶりでセミファイナルまで勝ち上がってきた。日程的なディスアドバンテージを最低限に抑え、ベストのメンバーで臨んだ試合で自慢の攻撃陣がうまく機能すれば、勝機も出てくるだろう。一発勝負で何が起こるか分からない試合だが、ホームの大観衆の後押しを受け、上記のような日程的なメリットも最大限享受できるロアの優位はそう簡単には動かないだろう。

 もう一試合は、お馴染みの小野伸二のウエスタンシドニー・ワンダラーズ(WSW)とセントラルコースト・マリナーズ(CCM)による、昨季のGFの“再戦”となった。今季のレギュラーシーズンの顔合わせでは、3試合1勝1分1敗と完全な五分の星。両チームは共にACLとの併行日程を戦っていて、日程的なハンディは同じかと言えば、決してそうではない。今回ばかりは日程の違いが大きな影響力を持ちそうだ。

 WSWは、22日にホームで貴州人和戦を控えるが、セミファイナル進出決定戦は試合がなく、15日の蔚山現代戦での遠征から戻って、じっくりとリカバリーに時間を費やすことができた。一方のCCMは、先週末、19日にもセミファイナル進出決定戦(アデレードU戦)を戦い、中3日で日本遠征をして、アウェーでサンフレッチェ広島と顔を合わせる。 

 今週に限って言えば、ともにACLの試合を消化しなければならないが、WSWはホーム、CCMはアウェーという大きな違いがある。さらに言えば、そのACLの試合日もWSWが22日なのに、CCMは23日と一日遅い。CCMにしてみれば、まさに“ダブル・ネガティブ”。

 そして、さらに追い打ちをかけるのがセミファイナルの日程。27日のロア対ビクトリーに対して、WSW対CCMは26日と1日早く組まれている。結果、CCMはACLの遠征から中2日で落とせないセミファイナルを戦うという、プロ・サッカーではあまり考えられないようなタイトな日程を強いられる。

 もう、ここまでネガティブな条件が重なれば、CCMの選手にしてみれば不公平とでも言いたくなるだろう。実際、先のアデレード戦の試合後にCCMのエディ・ボスナーは「この日程は、ただ一言、理解不能だ。何でこんな日程になるのか、(Aリーグには)よく考えてもらいたい」と吐き捨てた。

 実力差はないに等しい両クラブだが、これだけのハンディがあれば、今回ばかりは、WSWが僅差で勝ち抜けると考えるのが一番自然であろう。


 ということで、筆者の予想に従えば、グランド・ファイナルは、ブリスベン・ロア対WSWのレギュラーシーズンの1位、2位対決になる。そのグランド・ファイナルがどういう結果になるのかの予想は、セミファイナルが終わっていない今、語るには時機を得ていないであろうから、ここでは触れないでおく。

 まずは、明日、明後日のACL、そして週末のセミファイナルの熱戦を心待ちにしたい。

昨シーズンのファイナル・シリーズも多いに盛り上がりを見せた。写真はWSWのサポーター席(写真:Lichard Luan)

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