「アボット大学・医療予算は犯罪行為」

ノーベル賞経済学者が痛烈な批判

 ノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者ジョセフ・スティグリッツ氏がオーストラリアを訪れているが、トニーアボット保守連合政府の予算案について、「大学自由化は犯罪的だし、患者一部負担の医療制度は馬鹿げている」と語っている。

 フェアファクス・メディアが、スティグリッツ教授に対して、「オーストラリア社会をアメリカのような不平等が広がり、経済が停滞する社会にしかねない、政府の2つの失策をあげる」よう質問したのに答えたもので、「大学学費自由化とメディケアへの変更はオーストラリア社会をアメリカ社会のようにしてしまうおそれがある。アメリカを手本にして社会を変えようとするなら自分自身をたぶらかしているとしか考えられない。アメリカ社会が理想だと思う人もいるのだろうが、その理屈が私には理解できない」と手厳しく批判している。

 予算案発表前、クリストファー・パイン教育相は、「大学のあり方について海外特にアメリカの友人に学ばなければならない」と発言している。パイン発言に対しては「現実よりもネオコン・イデオロギー先行」との批判が出ており、また、ジュリア・ギラード元労働党連邦首相も学校制度を英米にならって改革すると語り、「なぜ、成功しているフィンランドなどの学校制度に学ばず、失敗して子供をダメにしている英米両国の学校制度を?」と批判されるなど、オーストラリア政治家はとかく英語圏中心に偏っている。

 スティグリッツ教授は、「オーストラリアの学校制度は世界の手本にできるほど優れているのに、学費自由化は大学制度そのものを間違った方向に持っていくことになる。大学を民間市場と考えようとすること自体が馬鹿げている。アメリカの教育市場で最悪なのは高等教育を民間営利事業にしていることだ。アメリカの高等教育制度は悲惨な状態だ。一面では優れているが、金持ちの子弟に道を開き、貧しい家庭の子弟には門戸を閉ざしている。アメリカでは大学を再統制化することを考えているが、オーストラリアでは自由化しようとしている。これは犯罪的だ」と語っている。

 また、「オーストラリアの医療制度も世界的に優れている。医療費あたりの効果は世界有数だし、医療の平等という面でも世界的に優れている。なぜ、医療制度をアメリカのようにしたがるのか理解に苦しむ。アメリカの医療制度は世界最低なのに。そもそも、インフレを勘定に入れた場合の米国民平均所得は25年前より下がっており、男性のフルタイム雇用所得は40年来で最低の水準だ。アメリカの市場モデルは破綻しているといわなければならない」と語っている。

 また、「アメリカにないオーストラリアの強みは?」との質問に対して、「労組だ。アメリカには労働者を保護する機能、経営者と交渉する力がなく、それがアメリカ社会をダメにしている」などと語り、アメリカの経済、社会を手本にしたがる傾向に警鐘を鳴らしている。(NP)

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