オーストラリアで覚醒剤蔓延の危機

自家製造が跡絶たず、増え続ける傾向

 覚醒剤メタンフェタミンが世界的に蔓延する勢いを示しているとの報道が繰り返されているが、オーストラリアでも押収量が増えており、取り締まり強化の結果だけでなく、流通量の増加を示すのではないかといわれている。

 1893年に長井長義がエフェドリンから初めて分離に成功した化学物質メタンフェタミンは、日本国内では戦前戦後を通じて「ヒロポン」「シャブ」などの名前で知られ、戦後の暗い世相を象徴する薬物にもなった。オーストラリアでは「アイス」、「メス」、「クリスタル」などの隠語で呼ばれている。エフェドリンそのものも漢方薬の麻黄の有効成分で、これに似たシュードエフェドリンがかつては鼻づまりの薬として風邪薬にも含まれていたことがあるが、今は完全に放逐されている。

 国内では毎年何百という民家や納屋、モーテル、自動車やトラックなど人目を避ける空間があればどこにでもこの薬物のラボ(合成設備)が作られ、摘発されている。しかも、当局発表によると、合成設備から吐き出された有毒な化学物質が家屋建材の表面に沈着し、長年にわたって住人を害する問題や、犯罪者が合成過程の残留物を国立公園や水路に捨てる行為で自然も汚染されている。

 昨年のドラッグ・ラボ家宅捜索数は750件にのぼり、2015年にはさらに増えると予想されている。NSW州警察薬物取締班のマイケル・クック警部は、「過去6年で州内の秘密ラボは倍増しており、ラボの規模もはるかに大きくなっている。どこでも何十キロもの量を作ることが当たり前になっている。薬物製造コストと比べると製品のアイス販売の利益は莫大な率になるため、この犯罪は大きくなる一方だ。しかもこの薬物の害は使用者の身体に留まらない。アイス製造に伴い大気に吐き出されたり、建材にしみつき、再び吐き出される有害な化学物質のために製造者だけでなく、警察官にも被害が出ている。化学物質にさらされて体を壊し、退職を余儀なくされた警察官もいる。アイス1kgの製造で10kgの有害化学物質の廃棄物が出る。これが夜間に川や国立公園の中に捨てられている。一度、ラボとして利用された民家は専門家が完全に中和作業しなければならず、場合によっては解体するしかない。ラボとして利用された民家は自治体に届け出なければならず、毎年6戸から10戸程度を解体している」と語っている。
■ソース
Australia in the grip of an ice epidemic with makeshift labs leaving a toxic legacy

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