世界的にヘリウム不足で風船も危機

極低温を必要とする科学研究に不可欠

 かつては飛行船も風船も水素ガスを使っていたが、水素ガスは可燃性ガスで、かつてドイツのヒンデンブルク号がアメリカの飛行船基地で炎上、乗客乗員ら多数が死亡した事故で水素ガスを使った飛行船は急速に衰えた。その後は水素に次いで軽い気体元素ヘリウムが使われるようになった。

 地球に水の形でふんだんにある水素に比べて不活性なヘリウムは気体分子として放出されるとそのまま大気圏外に出て行ってしまい、地球からは少しずつ失われている。ところが、宇宙全体では太陽のような恒星で水素が核融合してヘリウムになっており、太陽も最後には巨大なヘリウムの塊になって地球を呑み込むと考えられている。そういうことから宇宙全体の質量の24%がヘリウムで占められていると推算されているが、地球の大気には0.0005%程度しか含まれていない。現在のヘリウム・ガスは天然ガス生産の副産物として回収されるもので、その工場は世界に15箇所しかない。

 ヘリウムは風船を膨らませるのに使われる他、博物館などでの人間の声をヘリウムを通して伝えるとうわずって聞こえる実演でおなじみな程度だが、現実には窒素ガスなどと同じように極低温冷却材として医療や物理学研究などで用いられている。

 カーティン大学のブレント・マキネス地質学教授は、「ヘリウム産業では需要が供給を上回っているため、割り当て制度が実施されている。最大の需要は医療産業で、磁気共鳴映像法(MRI)装置の冷却やMIG(金属不活性ガス)溶接に用いられる。そのため、ヘリウム産業は、MRI、ハイテク溶接、研究所などに優先して納入しており、風船産業は優先順位が低い」と説明している。

 アメリカは飛行船時代の1920年代以来備蓄してきたヘリウムを放出しているが、マキネス教授は、「備蓄が底をつけば、ヘリウムの国際価格が暴騰する可能性がある。オーストラリアは天然ガス生産国であり、ヘリウム需要を最大限に活用できる立場にある」と語っている。(NP)

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