「ボークルーズ・オート・リペア」オーナー 堀浩三郎さん

豪で輝く30'sキーパーソン
日豪プレスも今年で31歳 ! ということで、オーストラリアで活躍する30代に、“活き活きと輝く”ための秘訣を聞く。
第2回
「ボークルーズ・オート・リペア」オーナー
堀浩三郎さん

夢は実現させるもの!

豪で輝く30'sキーパーソン
「仕事を安心して任せられる」と絶対の信頼を置くスタッフと

 真っ白な満月の光が、ボタニー湾の穏やかな海面を美しく照らし出す。クロヌラ・ビーチからほど近いキャプテン・クック上陸公園の岬に立ち、その先に見えるシティの摩天楼が放つ夜景を眺めるのは、堀浩三郎さん(32歳)。自宅のあるエリザベス・ベイからこの岬までは1時間ほどの道のりだが、愛車のメルセデス・ベンツを飛ばして時々足を運ぶという。「ここからの眺めはシドニーで一番気に入っています」と堀さん。その夜景を眺めながら、今は日本に帰国中の奥様と、生まれたばかりの愛娘を想っているのかもしれない。
ハイエンドの顧客にハイエンドのサービスを
 堀さんは来豪12年にして、年間数ミリオン・ドルを売り上げる自動車整備会社「ボークルーズ・オート・リペア」を、サイレント・パートナーと共同で営むオーナーだ。従業員は14人。工場兼店舗はシドニー湾を臨む斜面に瀟洒な家々が並ぶシドニー切っての高級住宅地、イースタン・サバーブのボークルーズにあり、その土地柄を反映するように、店舗敷地にはベンツ、BMW、アウディー、ポルシェ、フェラーリなど、欧州の高級車ばかりがずらりと並ぶ。
「お客さんへのデリバリーは3時だから、こっちのベンツの最終確認を頼むよ」。堀さんの指示でオーストラリア人メカニックは敷地内の車を整備場に素早く移動させ、テキパキと作業に入る。同社を訪れてまず驚くのは、仕事の進め方や顧客に対する対応や礼儀などに、すべて日本式のやり方を取り入れている点だ。仕事中は無駄口を聞かず黙々と作業に集中する雰囲気は、まるで日本の職場を感じさせる。
 また、整備とは別に同社で人気なのが、車の洗車、室内清掃、ワックスがけ、ポリッシュ、コーティングなどを行う「ディテール」と呼ばれる40~1,000ドルのサービスだ。1日にこなす台数は20~30台で売り上げとしては全体の20%ほどだが、同社の看板サービスでもある。これらの作業は日本人スタッフが担当。日本製の薬品や技術を駆使し、ブレーキ・ダストがこびり付きやすいタイヤのホイール部分や、車の内装の汚れやすい部分などを丁寧に磨き上げる。
「この日本的なカスタマー・サービスに関してはほかのどの洗車サービスにも負けない自信があります。納車したての新車のようにピカピカに仕上げますから。清掃と磨きには歯ブラシまで使うんですよ」。堀さんは女性スタッフが歯ブラシでせっせと内装の汚れを落とす姿を眺めながら笑顔を見せる。
 このきめ細やかなサービスを求めて同社を訪れる顧客は数多く、同高級住宅地エリアで3,000人を超える固定客を持つ。取材中も初老の女性が、ピカピカに磨き上げられたベンツを満足げに受け取って帰って行った。
 驚くことにフェラーリやマセラッティを扱う高級車専門ディーラーも同社の顧客と言う。「中古車の買い主へ納車する前にディテール・サービスの注文が入るんです。最初は値段が高すぎると値切ってきたので断りましたが、今ではあちらの方からお願いに来るんですよ」。決して手を抜かない代わりに、値引き交渉にも一切応じない。それは自分たちの仕事に絶対的な自信がある証拠だ。それらディーラーに今では、「1日でもっと多くの車のサービスを」と頼まれることもしばしば。しかし堀さんは、仕事の質を落としたくないという理由から依頼を丁重にお断りするのだと言う。

豪で輝く30'sキーパーソン
“家族の次に大切な”愛車たち

自分に達成すべき目標を課す
 来豪12年で年商数ミリオンの会社オーナーに。成功の秘訣はやはり、日本人ならではの仕事への徹底したこだわりに尽きるのだろうか。「もちろんそうです。だけど、まずは夢を持つこと。そして夢を実現するためにどう行動するかが大事。あとはそれをやり遂げる根性と闘争心を持つこと(笑)」
 そもそも、堀さんが20歳の時に来豪を決めたのは、職場と家の往復だけという日本での希望のない日々の暮らしから抜け出したかったから。高校時代、学校にほとんど行かず、大好きだったバイクや車での遊びに熱中していたという彼。当時から「大金持ちになりたい」と夢は大きかったが、そのために何をしたらいいかという答えは見つからずじまいだった。そんな彼が“すべきこと”を見つけたのがこのシドニーだった。自分の車の修理を持ち込んだのが、この会社だったのだ。
「土地柄、ハイエンドのカー・オーナーがたくさんいる。なのに修理や整備に入っている車は国産車ばかり。欧州の高級車は皆、ディーラーに出されていたんです。サービス改善の余地はまだまだある。それを変えればこの工場に高級車を呼び込めると感じたんです」。誰にも負けないほどの車への情熱が、初めて生きる時が来た。これだ、というビジネス・チャンスを感じたと言う。
 最初はカジュアルのアルバイトで、その後、社長に仕事ぶりを買われ、週300ドルという低賃金だったが工場に職を得たのが1996年。何しろ、高校時代から好きでいじっているので、車の整備やチューンはお手の物だった。
「給料が安くても決して文句を言いませんでした。その代わり社長には、“3年で売り上げを今の3倍に伸ばすから、その時は儲けの一部を欲しい”と要求したんです。理にかなっているでしょう?」と堀さん。明確な数字目標を自らに課すことで、自分を奮い立たせたのだ。店構えをお客が店に入りやすいように工夫し、店頭に並べる車も人目を引くように高級車ばかりを色とりどりに並べる。利用客に何か無料のサービスをつけてお得感を与える日本的なマーケティング手法も取り入れた。徐々に利用客は増え、目標の売り上げ3倍増は2年半で達成した。
 98年には社長に進言して、洗車サービスを立ち上げた。まずは洗車だけでも利用してもらえれば、ほかにはない丁寧できめ細かいサービスを納得し、そして、高級車オーナーは整備や修理も任せてくれるに違いないという公算だ。思惑通り、売り上げも利幅も桁違いに大きい整備や修理に車を持ち込む利用客は倍増した。次第に社長はビジネスのブレーンとして堀さんに信頼を寄せるようになり、今から3年前に会社の共同経営者として迎え入れた。
次なる夢は…
 堀さんがここで働き初めた時に決めた目標が、30歳までにベンツのSクラスを持つこと。入社当時、顧客に「ベンツを乗ってない君にベンツの整備ができるのか」と言われ、“負けてたまるか。絶対に一番いいベンツに乗ってやる”と心に誓ったのだそうだ。その目標を達成するためにあらゆる努力をした結果、28歳でベンツを手に入れ、さらに30歳を前にして、事業の共同経営者という地位まで自分のものにした。
 金持ちになりたい。いい車に乗りたい。社長になりたい。多くの人が思い描く夢を実際に成し遂げるためには、自分を奮い立たせる具体的な短期目標を持ち、それを1つずつクリアしてくことだと断言する堀さん。では次なる目標は。
「オーストラリアの自動車ビジネスにはまだまだ可能性がある。日本にしかない高性能の自動車パーツを輸入して全豪に卸す新たなビジネスを始めたところです。ビジネス名はHori International Tradaingの頭文字をとってHIT。これが軌道に乗れば今の工場の何倍もの商売になります。夢? どうせだったら全豪の車業界で通用する日本人になることかな(笑)」
 その笑顔にも“口にしたことは必ず実行する”という強い信念が感じられた。

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