進出日本企業インタビュー第21回「三菱電機・オーストラリア」

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第21回 三菱電機・オーストラリア

ジェレミー・ニーダム 取締役社長

(Photo: Naoto Ijichi)
(Photo: Naoto Ijichi)

明治時代を代表する実業家、岩崎弥太郎氏が創業した三菱グループの電機部門から1921年に独立した三菱電機。近年は成長分野に注力することで、グローバルな競争を勝ち抜いてきた。オーストラリア事業の戦略について、昨年現地スタッフからトップに登用されたジェレミー・ニーダム取締役社長に話を聞いた。 (インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

エアコンや鉄道システムに強み
変化に対応して成長分野に注力

――三菱電機とは、どんな会社ですか?

三菱電機は日本の近代化と共に歩んできました。三菱グループの中核企業の1つだった三菱造船(現在の三菱重工業)から分離し、1921年、神戸市に設立しました。出発点は、外洋船向け電気モーターの製造でした。この年に発売した電気扇風機はヒット商品になり、一般消費者向け市場でも存在感を高めました。電車の変電所などの大型受注を獲得し、30年代にはエレベーターやエスカレーターの製造・設置・メンテナンス、発電所の設備と、事業の幅を広げていきました。

戦後の財閥解体を経て、60年頃までには日本でも有数の独創的な総合電機メーカーとして再び存在感を強めました。環境問題が注目されるよりもずっと以前の60年代前半から、環境負荷の低い製造技術の開発に取り組みました。その後も、コンピューター、先進的な空調システム、自動車の電装システム、太陽光発電で動く人工衛星など、先端技術の開発をリードしてきました。

今日まで、ブレイクスルー(飛躍的な技術革新)となるようなテクノロジーや商品を提供し、社会や産業に貢献してきました。そうした画期的な商品の例としては、スポーツ競技場向けの大型LEDスクリーン、一般消費者向けで当時世界最大のブラウン管テレビ、世界初のらせん階段式エスカレーター、世界最速のエレベーター、世界初の機内インターネット・サービスなどがあります。

現在の三菱電機は、40カ国で12万人以上を雇用し、連結売上高390億米ドルを誇るグローバル企業です。

――オーストラリアではどのようなビジネスを展開しているのですか?

豪市場でのビジネス展開に関し「長期的な成長が見込める」と話すニーダム取締役社長
豪市場でのビジネス展開に関し「長期的な成長が見込める」と話すニーダム取締役社長

三菱電機オーストラリアは、日本の三菱電機が100%出資する現地法人です。49年前の1967年に駐在員事務所を立ち上げ、74年に現地法人「MELCOオーストラリア」を設立。82年に現在の社名に変更し、2014年に40周年を迎えました。

現在、一般消費者向けの商品の主力はエアコンと冷蔵庫です。オーストラリアのエアコン市場は夏季の高温・猛暑や建設需要の拡大を背景に伸びており、当社は市場デマンドに適した、かつ厳格な豪州省エネ規制をクリアした製品を投入して大手グループの一角を占めています。冷蔵庫は「フレンチ・ドア」と呼ばれる観音開きのプレミアム商品で高いシェアを誇り、日本製とタイ工場製の高級品を販売しています。

法人向けでは、鉄道システムの供給で長い歴史があります。シドニーの鉄道車両には、長期契約で電装部品の供給とメンテナンスを行っています。シドニーの本社にある工場で日本や米国から輸入した部品を組み立てたり、安全試験を行ったりしています。その他、発電システムや、フォードとGMホールデン向けの自動車用電装部品、映像情報システム、工場自動化システムなどを手がけています。

需要の変化や競争の激化に合わせて、オーストラリア事業も常に姿を変えてきました。70〜0年代にはオーストラリアでカラー・テレビの製造も行っていましたし、80年代には初期の携帯電話を販売したこともあります。しかし、80年代から90年代にかけての時代の変革に合わせて、オーストラリアでのテレビ製造や携帯電話の販売などからは撤退し、エアコンや冷蔵庫、鉄道システムといった当社が強い成長分野に焦点をシフトしてきました。

建設ブームやインフラ需要で追い風


――オーストラリア事業の業績はいかがですか?また、現在直面している課題は何ですか?

2015/16年度の売上高が過去最高の3億1,200万ドルを記録するなど、業績は順調に推移しています。都市部での住宅や商業ビルの建設需要拡大が追い風となり、エアコンや冷蔵庫の販売が伸びています。また、オーストラリアの連邦政府と州政府が鉄道をはじめインフラ整備に力を入れていることから、今後も引き続き事業の拡大が見込めるでしょう。

一方、資源価格の下落、不動産市場の変調、為替レートの変動といった要因は、私たちの商品の需要にマイナスの影響を与える可能性があります。高い事業コストも課題で、特に広い国土で消費地が離れているため物流コストの高さも悩みの種です。ただ、オーストラリアの市場は過去40年間にわたって、回復力の強い安定成長を続けてきたことから、私たちのビジネスも今後、長期的に成長が見込めると考えています。

――将来のオーストラリア事業のビジョンについて語ってください。

販売とサービス、エンジニアリング、製造(鉄道システムと発電システムの組み立て)、メンテナンスの各部門がオーストラリアに力強い土台を構築し、パートナー企業と長年、良好な関係を築いてきました。今後も質の高い商品をオーストラリアの皆様にお届けすることで、私たちのブランドの商品を選んでいただけるよう務めていきます。

市場の競争は激しさを増し、環境基準など当局の規制も厳しくなっています。そうした中で、私たちが市場シェアを高めて事業を拡大していくには、今後も時代の変化に即応していく必要があります。三菱電機のコーポレート・ステートメントは「チェンジズ・フォー・ザ・ベター」(Changes for the better)です。この言葉は、特にオーストラリア市場で私たちが進むべき道を示していると言えるでしょう。

●PROFILE ジェレミー・ニーダム
<略歴>1964年ニュージーランド(NZ)生まれ。83〜88年NZフォード勤務(プロダクト・エンジニア)。88年来豪。同年三菱電機オーストラリア入社(クオリティー・コントロール・エンジニア)。以来、勤続28年。鉄道事業部長・取締役専務を経て、2015年より現職。

<会社概要>
英文社名: Mitsubishi Electric Australia Pty . Ltd.
主要事業: エアコン、冷蔵庫、鉄道システム、発電システム、自動車用電装部品、映像情報システム、工場自動化システム
代表者: ジェレミー・ニーダム
拠点: シドニー本社、ブリスベン、メルボルン、アデレード、パース、キャンベラ、ニューキャッスル、タウンズビル
従業員数: 233人

<沿革>
1967年  駐在員事務所をシドニーに開設
1974年  現地法人をシドニーに設立
1982年  「三菱電機オーストラリア」に社名変更

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