進出日本企業インタビュー 特別編 「アサヒビール」

進出日本企業
アサヒ・スーパードライ・エクストラコールド・バー」のオープニング・セレモニーでインタビューに応える小路明善・取締役社長

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アサヒビール

小路 明善 代表取締役社長

(アサヒグループホールディングス取締役)

日本の酒造大手アサヒビールが、オーストラリアのプレミアム・ビール市場で存在感を高めている。このほど、主力商品「スーパードライ」の大がかりなCMキャンペーンを始めたほか、マイナス2度に冷やした生ビールを提供する「アサヒ・スーパードライ・エクストラコールド・バー」もシドニー市内に出店した。同店のオープニング式典に合わせて来豪した小路明善・取締役社長兼アサヒグループホールディングス取締役に話を聞いた。(インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

 

外国プレミアムビール・トップ3目指す
オーストラリアをブランド発信の拠点に

 


オーストラリア国内で販売されている「アサヒスーパードライ」

——まずアサヒビールの概略について教えてください。

日本のビール産業が黎明期を迎えた1889年に設立された「大阪麦酒会社」(後の「朝日麦酒」)が源流です。1892年に現在まで続く「アサヒビール」を発売して以来、日本のビールの代表的なブランドとして広く親しまれてきました。1987年には日本初の辛口生ビールとして発売した「アサヒスーパードライ」が大ヒット商品となりました。

2011年に持ち株会社「アサヒグループホールディングス」に移行しました。これにより、中核のアサヒビールはビールや発泡酒、焼酎、酎ハイ、洋酒、ワインなどの製造・販売を手がける事業会社となりました。グループ全体では、①アサヒビールをはじめとする酒類事業、②「アサヒ飲料」(十六茶、三ツ矢サイダーなど)や「カルピス」などの飲料事業、③「アサヒフードアンドヘルスケア」などの食品事業、④国際事業の4つをビジネスの大きな柱としています。

 

——グループ全体で近年、オセアニアの飲料事業に力を入れています。発表によると、オーストラリア法人の売上高はグループ全体の連結売上高の約1割を占めているそうですね。

国際事業は中国とオセアニアで特に存在感が強いのが特徴です。ただ、以前はオーストラリアの酒類大手「フォスターズ」(現在は英SABミラーの小会社)を通して「スーパードライ」を扱う程度でした。2009年に「シュウェップス」や「ペプシ」などを製造・販売する飲料大手「シュウェップス・オーストラリア」の全株式を取得したのを皮切りに、本格的な進出を果たしました。続いて、11年にはオーストラリアの飲料大手「P&Nビバレッジ」からミネラルウォーターと果汁飲料の事業を買収したほか、ニュージーランドでも酒類と飲料の大手2社を相次いで傘下に収めました。さらに、12年にはオーストラリアの飲料水メーカー「マウンテンH2O」も取得しました。

これらの事業を統括しているのが、メルボルンにある「アサヒホールディングスオーストラリア」(勝木敦志・取締役社長)です。昨年10月には事業基盤である、飲料の「シュウェップス・オーストラリア」とアルコールの「アサヒプレミアムビバレジズ」の2つを統合しました。現在、全体で約2,500人の従業員を雇用し、15カ所の工場を操業しています(ニュージーランド2カ所含む)。2014年の目標売上高は17億ドルです。

新しい味わいを体験してほしい

——今年8月に「スーパードライ」のテレビCMキャンペーンを開始したのに続き、10月末には期間限定(2015年1月23日まで)の「アサヒ・スーパードライ・エクストラコールド・バー」も開店しました。なぜオーストラリアのプレミアム・ビール市場に、とりわけ力を入れているのですか?


シドニー市内中心部に開店した「アサヒ・スーパードライ・エクストラコールド・バー」の店内

CMやバーの出店は、オーストラリアの消費者にまず「スーパードライ」を飲んでもらい、価値を知ってもらうための取り組みの一環です。私たちにとって、オーストラリアを含むオセアニアは非常に魅力的で、これからも有望な市場だと考えているからです。

オーストラリアのビール消費量は世界の中で20位から30位程度に位置付けられますが、国民1人当たりのビール消費量は日本の約2倍あります。しかも、地場の低・中価格帯ビールが落ち込む一方で、海外のプレミアム・ビールは毎年2ケタ増と高い伸びを記録しています。オーストラリアを含むオセアニア地域全体のアサヒビールの販売量も、2013年には前年比146%増と急拡大しました。

人口も長期的に増加していくことが予想されますし、経済成長を背景に所得は世界最高水準にあります。消費者の購買力は高く、付加価値の高い新しいタイプの商品に相応の対価を支払うことを惜しみません。そうした先進性はアサヒビールの企業文化にも合っていると思います。

海外で「アサヒ・スーパードライ・エクストラコールド・バー」を出店したのは、韓国に続いてオーストラリアが2カ国目です。エクストラコールドはビールが凍る寸前のマイナス2度に冷やすことで、クリーミーでマイルドな独特の味わいを実現していて、若者や女性にも好評です。「スーパードライ・エクストラコールド」と黒ビールの「スーパードライ・ドライブラック・エクストラコールド」の2種類のほか、爽やかな柑橘系の果物を添えたビアカクテルも提案していますので、オーストラリアでも新しいおいしさを実感してもらえるのではないでしょうか。来客数の目標は5,000人ですが、その2倍は来てもらえると期待しています。

 

——オーストラリア事業の課題と展望をお聞かせください。

当面の目標は、毎年2ケタ増を継続し、外国プレミアムビールカテゴリー内で上位3ブランド入りを目指すことです。物価と所得の水準が高いオーストラリアの消費者は、それぞれの商品が自分に合うかどうか、メリハリを付けて選択するでしょう。価格は高くても好みに合えば、「スーパードライ」だけが持つ「オンリーワン」の価値は認められると考えています。

世界のビール市場を見渡すと、大手の「ビッグ3」(ベルギーのABインベブ、英SABミラー、オランダのハイネケン)がグローバルなM&Aを繰り返していて、競争は激しさを増しています。そうした中で、私たちにとってオセアニアは市場として魅力があるだけでなく、世界のプレミアム・ビール市場で、「スーパードライ」を中核的なブランドとして伸ばしていくための重要な拠点と位置付けています。

私たちの連結売上高に占める海外比率は近年、急拡大しています。しかし、どの市場でも総花的にマーケティングを展開するではなく、重点的に攻略していく戦略です。オーストラリアという「点」から、アジアと世界市場全体の「面」へと「スーパードライ」のブランド認知度を高めていきたいですね。

●PROFILE
こうじ・あきよし
<略歴>1951年生まれ。75年青山学院大学法学部卒。同年アサヒビール入社。2000年人事戦略部長。01年執行役員(経営戦略・人事戦略・事業計画推進担当)。03年アサヒ飲料常務取締役企画本部長。07年アサヒビール常務取締役兼常務執行役員。11年より現職

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