アシックス 第1回 ランニング・シューズ編

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アシックス
第1回 ランニング・シューズ編

トップ・アスリートの知見を商品にフィードバック
豪州で今一番売れているランニング・シューズは ?

10年連続200本安打の金字塔を狙う米大リーグ・シアトル・マリナーズのイチロー外野手、2000年シドニー五輪の女子マラソン金メダリスト・高橋尚子選手といったトップ・アスリートが履いているのが、アシックス(兵庫県神戸市)のシューズ。その高い技術は、スポーツ先進国オーストラリアの競技者にも強く支持されています。シリーズ1回目の今月は、スポーツ・シューズの中でも特に同社が強みを持つランニング・シューズについて、オーストラリア法人の池田新・取締役社長にお話をうかがいました。

「GEL-KAYANO 16」の女性用モデル

シドニー西郊イースタン・クリークに移転したばかりの真新しい新社屋。中に入ると、建物の一角に備え付けられた立派な和風の庭園に目が止まります。「オーストラリア人の社員は、日本のモノ作りや日本の企業で働いていることに、とても誇りを持っているんですよ」と池田社長。日本庭園も現地社員のアイデアから生まれたそうです。

そんな同社は近年、オーストラリアの国内市場で快進撃を続けています。2005年にはスポーツ・シューズ全体の売上ランキングで、米ナイキ、独アディダスといった強豪を抜きシェア1位に。特に、スポーツ・シューズの中でも最大のランニング・シューズ市場では、同社のシェアは4割に達しています。

お話を伺った池田新アシックス・オセアニア取締役社長。12月5日にWA州パース南のバッセルトンで開催される「バッセルトン・アイアンマン」出場に向け、目下トレーニング中

好調の背景には同社の「プロダクト・ドリブン(商品主導型)のマーケティング」(池田社長)があるといいます。これに対して、ナイキ、アディダスのライバル2社の広告戦略は、世界的スター選手を使った「イメージ・ドリブン(イメージ主導型)」。アシックスは競合相手と同じアプローチは採らず、競技に特化した商品でプレーヤーの真のニーズに応えたのでした。

消費者が他社のイメージ主導の販促に飽きる一方で、“履いて違いが分かる”競技に真剣な層がアシックスのシューズを支持したのだといいます。販売店の反応などから池田社長は、「(オーストラリアでアシックスのシューズを購入する顧客の)80%近くはリピーター」だと見ています。

ただ、競技者がアシックスのシューズを繰り返し購入してくれる一方で、それほどスポーツに関心がない一般層の認知度アップが課題と指摘します。「マーケティング調査で『アシックスというブランドを知っていますか』という問いには約70%が『知っている』と答えていますが、『知っているスポーツ用品のブランドを挙げてください』という設問では約25%とまだ低いのです」(池田社長)。

そこで一般層のてこ入れを図るため、コモンウェルス大会に合わせてテレビ広告を打つほか、フィットネスを楽しむ女性層にターゲットを絞り、10月にシドニーで開かれるウォーキングの大会に協賛するなどの対策も進めています。

ランニング・シューズの最高峰モデル「GEL-KAYANO 16」

アシックスならではの独自技術

では、豪州のシリアスなアスリートに支持されているアシックスの技術には、どのようなものがあるのでしょうか。ランニング・シューズの最高峰モデル「GEL-KAYANO 16」(標準小売価格270ドル)を例に、池田社長に解説してもらいました。

手に取ってみると、全長30センチに満たない1つのシューズの中に、履き心地の良さをサポートする非常に数多くの先端テクノロジーが凝縮されていることに驚かされました。「土踏まず」の部分には、膝や足首、関節など身体に負担を強いる「ねじれ」を抑制するため、プラスチックの構造材を組み込んでいます。

踵やソール(靴の裏)の真ん中からやや前の部分には、ジェル状の特殊なクッション材を注入。ミッド・ソール(ソールの積層の真ん中部分)にはやや硬い素材を配合することにより、走行中に膝や足首が内側に倒れすぎるのを、下から支えることで防いでいます。

また、「バイオモルフィック」と呼ばれる柔軟性に富んだ素材をシューズの表面の一部に組み込み、激しい使用条件下でも変形に対応できるように工夫しています。

インナー後部も足首を包み込むようにサポートするユニークな設計です。シュー・レース(靴ひも)の編み方1つ取ってみても、通常のシューズのように真っ直ぐではなく、実際の足の「峰」の部分に合わせて中央に向かって斜めに下りていくデザインとなっています。

これらの独自技術は「当社が支援しているトップ・アスリートの知見をトップモデルにフィードバックさせながら、普通のランナーの特徴や耐久性に合わせて開発しています」(池田社長)。

一方、女性に優しいのもアシックスの特徴です。女性モデルはただ男性用を小さくしたり色を変えたりするのではなく、女性専用に一から開発しているのです。男性と女性の身体の生理的な相違点を踏まえ、クッション材の構造や硬さを変えたり、女性が走る時の特徴からソールを男性モデル比で3ミリ高くしたりといった工夫が随所に散りばめられています。

高橋尚子さん(Photo: NSW州政府観光局)

豪スポーツ科学の知見を生かす

同社が商品開発の段階から、世界的に水準の高いオーストラリアのスポーツ医学の成果を採り入れていることも、特筆すべきことです。

同社はこれまで14年間にわたって「豪スポーツ医学協会(スポーツ・メディスン・オーストラリア=SMA)」と提携、スポーツ医学の見地から高い性能が認められた商品には、国内のスポーツ・シューズで唯一「SMA推奨」のロゴが掲載されています。また、メルボルン大やシドニー大、南オーストラリア大などの共同研究に出資するなど、スポーツ医学の発展にも寄与しています。「オーストラリアは国民の40%が週3回以上定期的にスポーツに参加しているというデータがあります。英連邦のスポーツ・キャピタル(中心地)と呼ばれる世界有数のスポーツ大国。そうしたオーストラリアのスポーツ医学の知見と日本のモノ作りの技術が相乗効果を発揮しているのです」と池田社長。

ビジネスだけではなく、スポーツの分野でもまさに日豪の架け橋となっているようです。

シドニー・マラソン

主要マラソンのシェアは圧倒的 !

ニューヨーク、東京、パリ、シドニー、ゴールドコースト、メルボルンの主要な世界的マラソン大会で、アシックスのランニング・シューズは使用率50%前後と圧倒的なシェアを誇っており、2位以下のメーカーを圧倒的に引き離しています。

例えば、2010年の東京マラソンのアシックス使用率53.7%、09年のニューヨーク・シティ・マラソンは56.6%、10年のパリ・マラソンは41.4%です。

09年の「シドニー・ランニング・フェスティバル」でも、出場選手1,200人中実に552人がアシックスを使用、シェアは46%でした。ちなみに2位はブルックス(15.6%)、3位はナイキ(11.4%)となっています。

3大会連続で五輪女子マラソン制覇 !

オリンピックのマラソン競技でもアシックスのシューズを履いた選手の活躍が際立っています。

女子マラソンでは、高橋尚子(2000年シドニー)、野口みずき(04年アテネ)、コンスタンティナ・トメスク(08年北京)とアシックスのランナーが3大会連続で金メダルを獲得しています。

メダル獲得選手のシェアも男女ともに1位です。

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